投資信託、1つの価格と3つのコスト

投資信託には、投資を始める前に少なくとも押さえておくべき1つの価格と3つのコストがあります。1つの価格とは「基準価格」であり、3つのコストとは「売買手数料」「信託報酬」「税金です」。

費目 内容
基準価格 投資信託の値段のことで、ほとんどの場合、1万口当たりの値段のこと
売買手数料 売買する際にかかる手数料。買付手数料、売却手数料など
信託報酬 運用期間中、ずっとかかる費用。長期間でみると大きな影響がある
税金 分配金やキャピタルゲイン(売却時に確定するリターン)に対し、税金がかかる

投資信託の価格はどのように決まるのか

投資信託には、株式などと比べて違う形で費用がかかります。しかしその項目は多岐に渡るためなかなかわかりにくくなっています。実際はどのような費用がかかるのでしょうか。

まず投資信託には基準価額というものがあります。基準価額は株式における株価のようなもので、まず投資信託に投資するためにはこの基準価額と買付金額を元に買付口数を算出します。

基準価額にかかわらずおおよそ買付は1万円からの受付となりますが、基準価額を基本的に1万口あたりの価額として算出されており、例えば基準価額が1万口あたり2万円の投資信託を1万円分買い付ける場合は、5,000口の買付となります。

基準価額と買付金額の違いがわかりにくいですが、買付金額を基準価額で割って基準となる口数をかけると買付口数となる、と理解したらわかりやすいかもしれません。

また、口数を基準に買い付けることもできますが、その際は基準価額の変動により必要な資金が変わってきます。

基準価額の算出は、まず投資信託が投資しているすべての資産を時価で算出し、合計額に利息と配当収入を加えます。

そこから後述する信託報酬や分配金などの必要な費用を差し引き、算出された純資産額を投資信託全体の口数で割ったものになります。そのため基準価額は時価となりますが、株式とは違い1日に1回の計算となります。

基準価額は夕方6時ころに決定されます。基準価額を確認するには、運用会社や証券会社、銀行などその投資信託の取り扱いがあるところのホームページで情報を探すか、電話で直接問い合わせるか、もしくは新聞で確認する必要があります。

投資信託の売買手数料

買い付け手数料

 
投資信託を買い付けるには投資する金額のほかに、取り扱う証券会社などに買付手数料を支払う必要があります

これは株式の取引手数料のようなものですが、株式の取引手数料は1取引もしくは1日の取引額が一定金額以下であればいくら、と段階的な価格であるのに対し、投資信託の場合は買付金額の数パーセントと手数料の算出方法が違い、最大で4%までとなっています。

例えばある投資信託を10万円分買った際に手数料が2.7%必要となった場合は、実際の買付金額は9万7,300円となり2,700円は手数料として差し引かれます。

買付手数料は各販売会社が上限の範囲内で商品ごとに定めることができ、同じ投資信託でも販売会社によって買付手数料が異なることもありますが、中にはノーロードという買付手数料がかからない投資信託もあります。

また、投資信託の運用期間中は信託報酬がかかります。それに加えて、投資信託は原則として決算ごとに監査法人などから監査を受けます。その監査にかかる公認会計士や監査法人に支払う報酬も監査報酬として必要になります。

これは投資信託の計理に不正はないかを第三者によって監査することで投資信託の公正性を保つことにつながっています。

これらの費用も信託財産から差し引かれますので、追加で請求されることはありませんがその分基準価額がさがることになりますので間接的に支払う形になっています。

また、投資信託が株式などを売買する際の手数料は売買委託手数料として計上され、これも信託財産から差し引かれます。

売買委託手数料は投資信託が株式の売買など資産を運用する際にかかる手数料であり、都度発生するため事前にいくらかかるかは確定できません。

株式による運用であれば売買を繰り返して利益をあげることが多いため手数料も多めにかかるでしょうし、国債など長期にわたって保有する商品を扱っている場合は一度売買した後は保有し続けることが多いためさほどかからないでしょう。

投資信託にはそれぞれ運用期間が定められており、その期間で利益を出せるように運用計画を立てて資産を運用しています。

解約に際しての手数料

 
投資家の都合で信託期間の途中で解約する際は、信託財産留保額が必要となります。

信託財産留保額は、換金する際に必要な事務手数料を補うために必要となり、徴収しなければその分を他の投資家が負担しなくてはならなくなるためその不公平を生じないための費用となります。

また、一部の投資信託ではそれ以外にも解約手数料が必要な場合もあります。これは運用期間が満了した償還時には必要ありません。

運用期間は投資信託によっては設定されていない場合もあり、また予定償還日より早く運用目標を達成した、もしくは投資信託の規模が既定の水準を下回ったことにより投資信託の継続が難しくなり投資信託自体を解約することによる償還日の繰り上げや、さらに利益を得る見込みがある場合の償還日の延長など変更となる場合もあります。

それ以外には、収益分配時・投資信託売却時・償還時にはそれぞれ住民税・所得税がかかります。

収益分配時は分配金に対して合計で約20%が源泉徴収され、投資信託売却時は解約および売却で得た利益に対してやはり合計で約20%、償還時も償還差益に対して合計で約20%の税金がかかります。

ただし分配金がなかった時、および売却・償還時に利益が生じなかった場合税金はかかりません

投資信託には様々な費用がかかりますが、税金を除きこうした費用は必ずかかるわけではなく投資信託によっては不要と定めている項目もあります。

そうした詳細は投資信託の目論見書に記載されているため、投資信託を買い付ける際は価格だけではなく目論見書にも目を通し、どういった費用が掛かるのかの確認も必要となります。

特に長期的に運用しようとした場合は費用もそれだけ多くかかるため、基準価額が上がった場合や分配金がもらえた場合でも赤字となってしまうかもしれません。しっかりとチェックしてみましょう。

信託報酬とは何か

信託報酬とは、投資信託の運用期間中にかかる費用のことです。

信託報酬は、人件費など投資信託の運用にかかる費用や資産の保管にかかる費用、運用報告書の作成・発送にかかる費用などに使われ、運用会社・販売会社・信託銀行の3社にそれぞれ分配されます。

投資信託の保有額に応じて年率でいくら支払うのかが各投資信託によって決まっていますので、どの証券会社や銀行で購入しても、信託報酬は同じになります。

また、信託報酬は目論見書に記載されていますので、その額が日割りで信託財産から差し引かれることになります。

一般的にはインデックスファンドに比べてアクティブファンドのほうが信託報酬は高い傾向にあり、投資対象が国内よりは海外、先進国よりも新興国のほうが高くなる傾向にあります。

信託報酬は投資信託を保有している間はずっとかかります。投資信託は長期投資が前提となるため、信託報酬は大きなコストになります。

そのため、信託報酬の大小は、保有期間が長ければ長いほど、大きな差となることに留意しましょう。

税金もお忘れなく

投資信託の譲渡(解約・償還を含む)によって確定された利益に対しての、税率は合計20%(所得税15%、住民税5%)です。さらに、確定申告の際に所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税(0.315%)が付加されます。

 

今回取り扱った4つのお金は、細かいようですが、投資成績を左右する重要なものです。短期的に見ると少額に思えるかもしれませんが、長期間での影響は決してバカにはできないモノとなりえます。

投資信託は基本的に長期間ホールドすることで利益を得られる投資スタイルと言われていまから、スタート時点においてはこれらを確認し、比較するとよいでしょう。