投資信託はベンチマークする指標がある
投資信託は、ただ運用されるものではありません。必ずベンチマークをした上で運用をします。ベンチマークとは、その投資信託が運用する上で目安としている指数のことを言います。
なお、指数というと、TOPIXや日経平均株価をイメージするかもしれませんが、インデックスの日本語訳は「指数」、ベンチマークの日本語訳は「判断や判定のための基準・尺度」です。
通常、投資信託は、TOPIXや日経平均株価などといった、いわゆる「指数」をベンチマークします。ですので、つまり、TOPIXなどの指数、つまりインデックスが、その投資信託の「ベンチマーク」になる、ということです。
インデックス運用、アクティブ運用とベンチマークの考え方
インデックス運用は、ベンチマークする指標と同じ運用成績を目指す運用手法で、アクティブ運用は、ベンチマークする指標を上回る運用成績を目指す運用手法です。
このインデックス運用とアクティブ運用は、それぞれベンチマークする指標に対するとらえ方が違いますが、それはそれぞれ異なる思考に基づいているためです。
この二つの運用手法は、市場に対するとらえ方が異なります。インデックス運用は「市場は効率的である」という考えの元に投資する手法であり、アクティブ運用は「市場は非効率的である」という考えの元に投資する手法です。
インデックス運用の「市場は効率的である」という考え方では、市場では、あらゆる情報が投資家を通じて即座に株価等に反映される、と考えます。
その結果、特定の投資家がその他の投資家より優れたリターンを継続的に獲得することはない、という結論になるのです。このような考え方の元では、インデックス運用が最も有効と考えられるのです。
一方のアクティブ運用は、「市場は非効率的である」という考え方をします。そのため、特定の情報を入手した投資家は、その情報を分析して市場平均を上回るリターンを獲得できると考え、アクティブ運用が有効であると考えられるのです。
この二つの考え方は、どちらが正解、というものではありませんが、このような考え方の違いがあることを覚えておくと良いでしょう。
また、インデックス運用に基づいて運用されるインデックスファンドと、アクティブ運用に基づいて運用されるアクティブファンドでは、信託報酬などにも違いがあります。一般的にアクティブファンドの方が高く、インデックスファンドの方が低く設定されることが多いようです。
なぜなら、アクティブファンドの場合、ベンチマークする指標以上のパフォーマンスを上げる必要があります。そのため、必然的に市場平均以上の値上がりが期待される銘柄を選ばなければならず、ファンドマネージャーによる綿密な調査・分析に基づく投資判断が必要になるために、コストがかかるのです。
一方、インデックスファンドでは、ベンチマークする指標と同程度のパフォーマンスを上げるため、ベンチマークとの連動性を高める必要があります。
そのため、運用上の工夫やノウハウが必要になりますが、アクティブファンドのように銘柄選択のための綿密な調査・分析などは特に必要ありません。そのため、信託報酬等の手数料が安く抑えられるのです。
コストを抑えて長期投資を行いたいと考えるのであれば、インデックス運用の投資信託がおすすめです。
また、値動きの理由がわかりやすい方が良いという場合や投資先の市場全体の値上がりを期待したいという場合にもインデックス運用がおすすめです。
反対に、積極的にリターンを狙っていきたい方は、アクティブ運用の方が良いでしょう。
投資信託の代表的なベンチマーク
投資信託がベンチマークする指標の代表的なものを見てみたいと思います。
日本株式で運用する投資信託の場合は、TOPIX (東証株価指数)や日経平均株価が代表的な指標になります。その中でもTOPIXをベンチマークしている投資信託は多いと言えます。
外国株式で運用する投資信託の場合はMSCIコクサイインデックスやMSCIワールドインデックスが代表的な指標になります。どちらも、Morgan Stanley Capital International社が開発し、発表している株価指数です。
MSCIコクサイインデックスは、日本を除く主要国を対象とする株価指数です。世界中の株式に分散投資するタイプの投資信託の多くが、この指数をベンチマークしています。一方、MSCIワールドインデックスは、新興国21カ国を対象とする株価指数です。
日本債券で運用する投資信託の場合は、ノムラBPI総合指数が代表的なベンチマーク指標となります。
ノムラBPI総合指数とは、日本の公募債券流通市場全体の動向を表すために開発された投資収益指数で、野村證券金融経済研究所が算出・公表しています。日本の公社債を投資対象としている投資信託の多くが、このインデックスをベンチマークして運用しています。
外国債券で運用する投資信託の場合は、シティグループ世界国債インデックスやJPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックスが代表的なベンチマーク指標です。
シティグループ世界国債インデックスとは、世界主要国の国債の総合投資利回りを各市場の時価総額で加重平均し、指数化したインデックスで、1984年12月末を100としています。
高格付の海外の国債に投資するタイプの投資信託の多くが、この指数をベンチマークして運用しています。
一方、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックスは、新興国債券市場の時価総額で加重平均し、指数化したインデックスです。新興国の債券に投資するタイプの投資信託の多くが、この指数をベンチマークして運用しています。