投資信託にはリスクがある
投資信託は他の元本の補償されない投資商品。例えば株式や債券に比較すると大きな資本を専門家が分散投資として運用している分、その変動幅については安定的であると予想できますが、それでも、場合によってはそれなりの減少を覚悟した上での投資を考えなければいけません。
また、安定的だからといって確実に増えるという保証はどこにもないのですから、考えられる可能性の中での損失についてしっかりと対策、対応を考えておく必要があります。
極端な話かもしれませんが、投機的な側面の強い発展途上国の海外株式を中心に置いたファンドでは下手な国内株式よりもそのリスク、そして運用成功時のリターンは大きくなる場合さえあるのです。
したがって、投資信託への投資を考える際もそのファンドの目論見書をしっかり確認して、自分の目的に従ったポートフォリオを考え、投資することを考えなければなりません。
ポートフォリオとは複数の金融銘柄を組み合わせ、リスクヘッジの目的で用いられる考え方になります。
大まかなポートフォリオバランスについてはファンドごとに目論見書に書かれていますが、その内容をしっかり理解して、さらに自分の中で投資先を分散する形でポートフォリオを構築することで自分の目的に従った投資計画を立てることができるようになります。
景気や今後の経済動向を考える
ではポートフォリオを判断したり、組む際にどのような部分について投資家は判断基準とするべきでしょうか。
まずはファンドごとの投資方針についての内容になりますが、そのファンドの投資対象としている有価証券について、中心となる銘柄が国内か海外か。債券か株券かの判断が重要になります。
この時、各々の分野がどのような相関関係になっているのかに注目すると良いでしょう。
例えば日本国内に限って考えた時、株式と債券は中程度の負の相関関係を持つことが知られています。
投資家は自分の資本を貨幣市場に投入することを考える場合、自分の資本について利益の上がる見込みの強い片方どちらに投資するのかをその時々の状況に応じてまず判断して投資するという投資家の心理が数字に表れています。
したがって、その分量が近ければ近いほど変動幅は小さくなりリスクは軽減されますが、逆にお互いの利益部分を打ち消しあうことともなりますので見返りの利益は小さくなってしまいます。
しかし、日本国内自体の景気状況が好転すれば、お互いが打ち消しあったとしても国内景気の押上によるそもそもの基準値の伸びに従って利益は増加することになります。
逆に片方のみに重きをおいた商品の場合には、うまく好景気の波にさえ乗ってしまえば、より大きなリターンを期待できるだけではなく、平均値の上昇から、損失分を景気の上乗せでカバーすることができますのでリスクを小さくする効果も期待できるのです。
また、特定地域についてのファンドの場合、特に途上国であればその地域自体の景気や地政学的要因のからむ変動要因を予測する必要が出てくるでしょう。当然為替の影響だって考えられます。
もちろん分散投資としてそのリスクの軽減はあるのですが、投資先銘柄、地域についての元々持っている変動幅が大きな投資対象の場合にはそれに見合うだけのリスクヘッジとなる対象の選択が難しくなる場合も少なくないのです。
さらに、地域ごとの相関関係もある場合も考えられますので、景気についての情報と合わせて、1つの判断の要素であるということができます。
自分のリスク許容度やどんな運用をしたいかを考える
そのような投資信託商品の中から自分のリスクを管理する方法についてどんな方法が考えられるでしょうか。リスクマネージメントの基本はその損失をどこまで耐えることができるかにかかってきます。
自分が投資を行う元手について、どこまでの損失を許容できるかを自ら定め、その定めたルールに従う形に従った管理を行うよう心掛けましょう。
また、投資は「期間」「収益性」「リスク」のバランスが大切になります。この3つについてすべて満たされる状態は考えられないのです。
「すぐに(期間を短く)大きく儲けが出て(収益性が大きく)損する可能性がないもの(リスクが小さい)」という運用は投資に限らず存在しないのです。
逆に、自分にとってどこを最も重要と考えるかが決まればその運用の方向性は定まってきます。
また、リスクについて、どこまでの損失を許容し、どの時点で諦めるかをあらかじめ定めておけば、予定外の資産状況に陥って身動きが取れないという状況は回避しやすいでしょう。
例えば、100万円の投資について、最大損失を30万円と考えれば、その投資信託に回した資産の価値が70万になった時点で売却し、損失を受け入れることになります。
30万円分目減りはしますが、見切りをつけて確保した資金で新たに投資を行うことも可能でしょうし、それ以上の冒険を避けて手元に置いておく選択もできます。
このような損切りを行えず持っているだけで使えない塩漬け資産を減らすように心がけることも運用方針としては忘れてはいけないことの1つになります。
年間の最大損失額を考える
では、その損失についてどのような情報から判断すれば良いのか。ということになります。
目論見書などのファンド情報について、過去の運用実績がありますので、その数値を参考にするのが最も適当でしょう。
特に知っておくべきなのは標準偏差についての考え方になります。
リターンの割合について、平均値が書かれているはずですが、平均値と言われてしまうとつい、常にその割合で順調に増えていくイメージを持ちますが、実際にはそうはいかないことの方が多いのが投資です。
注意してみたいの標準偏差という値で、これも合わせて書かれているはずです。
統計学の分野のお話になりますが、この標準偏差とは平均値からのズレがどの程度の確率(可能性)で起こりうるのかを示している値です。
この標準偏差についてはこのように考えておけばわかりやすいと思います。
- (平均)±(標準偏差)の範囲が起こりうる可能性=約70%
- (平均)±(標準偏差×2)の範囲が起こりうる可能性=約95%
となるように計算された値になります。
例えば平均リターン8%で標準偏差が15%のファンドであれば、95%の割合で
(8+15×2=)38%から(8-15×2=)-22%の幅での変動になることがわかります。
したがってこのファンドに100万円投資する場合、年間では最大22万円までの損失は考えておく必要があるということになります。