投資信託のキャピタルゲインとインカムゲイン

毎月分配型の投資信託の多くが、元本の取り崩しが行われており、また、そのこと自体に違法性はないのですが、元本が減ってしまった分、運用益が少なくなるデメリットがあります。

そして、運用益年数が長ければ長い程、元々の元本で運用した場合の運用益と、取り崩してしまったために少なくなってしまった元本で運用した場合の運用益とでは、差が広がります。

これを避けるためには、元本を取り崩していないかどうかを見分ける必要があります。

その前に、分配金はどのようにして出ているのかをご説明します。

投資の収益には二種類あります。一つはキャピタルゲイン、もう一つはインカムゲインです。

キャピタルゲインとは、保有資産の値上がりによって生じる利益のことで、インカムゲインとは、保有資産によって継続的に得られる利益のことです。

キャピタルゲインについては、例えば株の値上がり益や為替差益が該当しますし、インカムゲインの場合は株の配当や債券の利息、不動産の家賃などが該当します。

もともと日本の株式市場ではキャピタルゲインの獲得を目的とした投資が主流で、インカムゲインはさほど注目されていませんでした。

ただし、キャピタルゲインは安定した収入になるかどうかは未知数で、発生する時もあれば、逆にキャピタルロスになってしまうこともあります。

一方のインカムゲインはキャピタルゲインほど大きな利益にはならないかもしれませんが、継続的に入ってくることが特徴です。

そのため、最近では、インカムゲインにも注目が集まっています。また、ゼロ金利が長引いていることから、預貯金よりも利回りが高いインカムゲインが注目されている、という側面もあります。

このようなことから、日本株に投資する分配型の投資信託でも、安定的にインカムゲインが得られる株式に投資するものが増えてきています。

ここで大切になるのは、「この投資信託の場合、どれくらいのインカムゲインが妥当なのか」という基準を知っておくことです。元本に対し、あまりに大きなインカムゲインが発生するのは不自然と言えます。

投資信託のインカムゲインの妥当額は、投資信託の運用報告書、または月次運用報告書を見ることで知ることができます。

投資信託を購入すると、運用会社から決算期ごとに運用報告書が送られてきます。また、運用会社のHPなどでも公表しています。

この運用報告書で注目すべきなのは、「配当等収益金」という項目です。「損益の状況」という項目の中にあります。この、配当等収益金に書かれている金額が、その投資信託のインカムゲインの妥当額となり、安定して分配できる金額となります。

ですので、配当等収益金よりも実際の分配金額の方が大きい場合…例えば、配当等収益金が5万円で、実際の分配金が10万円だった場合は元本に取り崩しが行われていることになります。

なお、配当等収益金よりも分配額の方が大きかった場合は、インカムゲインレシオを出してみましょう。

インカムゲインレシオとは、配当等収益金を実際の分配金額で割って出した数字のことで、投資信託の健全性を計る指標です。

先ほどの例で言えば、配当等収益金は5万、実際の分配金額は10万ですので、5÷10=0.5になります。これに100を掛けると50になり、つまりインカムゲインレシオは50%ということになります。

これがいったいどういうことかというと、投資家に支払われた分配金の50%が、配当等収益金、つまりインカムゲインから支払われたものである、ということを示しています。

従って、この例の場合は残りの50%がインカムゲイン以外を原資としている、ということになります。

このインカムゲインレシオが小さければ小さい程、分配金をインカムゲイン以外の原資で賄っており、健全性に欠けるということになります。

元本取り崩しを見つけるポイントは運用報告書

次に、月次運用報告書にスポットを当ててみましょう。

月次運用報告書は毎月開示され、運用会社のホームページに掲載されることが多いです。これを見ることでも、分配金の健全性を知ることができます。

例えば下図は日本株に投資する投資信託の月次運用報告書です。ここでは分かりやすくシンプルにまとめて必要事項を掲載していますが、実際の月次運用報告書は、会社によってこれら項目が記載されている箇所にばらつきがあったりしますので、注意して探してみる必要があります。

純資産額 50,123百万円
基準価額 12500円
平均配当利回り 2.8%
決算期 日付 分配金
第22期 2014/8/10 80円
第23期 2014/9/10 80円
第24期 2014/10/10 80円
第25期 2014/11/10 80円
第26期 2014/12/10 80円
第27期 2015/1/10 80円

この投資信託で得られるインカムゲインがどれくらいかを試算してみましょう。

この投資信託の直近の基準価額は12,500円です。この投資信託は日本株のみに投資しており、平均配当利回りをチェックすると、2.8%になっています。

これらのことから、インカムゲインによって得られる分配金の資産額は

12,500(直近の基準価額)×2.8%(平均配当利回り)÷12≒29円

となります。

しかし、実際には毎月80円を分配していますので、80-29=51円分については、キャピタルゲインあるいは、元本を取り崩して出している可能性があります。

組み込まれている銘柄の株価動向を調べ、値上がりしているようであれば、差額の51円については、キャピタルゲインによって得られたものである可能性が高いですが、もし下がっているようであれば、元本を取り崩して差額分に充当している可能性が高いです。

このように、毎月分配型の場合は、元本を取り崩して分配金に充てている可能性があるものもありますので、月次運用書を運用会社のホームページで確認し、毎月の分配額とインカムゲイン相当額との差がないものを選ぶことがポイントになります。