トータルリターンを見よう
従来、投資信託の運用報告書は、どれくらいの利益が出たのかがわかりづらいという問題がありました。せっかく運用報告書が送られてきても、何をチェックして良いか分からないという人が多く、問題視されていました。
そのため、2014年12月より、「投資信託のトータルリターン通知制度」が開始されました。トータルリターン通知制度は、これまでの分かりづらさを解消し、どれくらい利益が出たのかが一目で分かるようにしています。
これにより、損益額が定期的に投資家に通知され、投資家にとってこれまでわかりにくかった、自分の所有する銘柄の投資成果を知ることが簡単になりました。
従来の運用報告書は分配金がネックになっており、投資信託の損益計算を複雑なものにしていました。
投資信託の運用状況がどんなものなのかを知るためには、基準価額が現在どのような状況なのかを知る必要があります。
元本を取り崩した分配があったために基準価額が低くなっていないか、利益はきちんと出ているか等を一目でわかるようにしたのがトータルリターン通知制度です。
トータルリターン制度では、総合的な収益を把握できるよう、現在の評価額のみならず、分配金、追加購入・部分解約があった場合も加味して、購入時から算出基準日までの全期間を通じた損益金額を算出しています。
トータルリターンは、
現在の評価金額+累計売付(解約)金額+累計受取分配金額-累計買付金額
で算出されます。
現在の評価金額は、計算基準日の基準価額により算出した計算基準日時点の保有残高の評価金額のことです。
累計売付(解約)金額は、新たに取得したときから計算基準日までの、一部売却した場合における累計売却金額のことです。
累計受取分配金額は、新たに取得したときから計算基準日までに受け取った分配金額(普通分配金および特別分配金、税引後)の合計(再投資分を含む)のことです。
累計買付金額は、新たに取得したときから計算基準日までの累計買付金額のことで、再投資による買付金額も含みます。
つまり、投資額=累計買付金額となり、投資結果=現在の評価金額+累計売付(解約)金額+累計受取分配金額となります。
ですので、投資結果から投資額を引いたものがトータルリターンということになります。
トータルリターンがプラスであれば、運用の結果、利益が出ているということになり、反対にマイナスであれば、損失が出た、ということになります。
販売会社の手数料に注目しよう
投資信託には手数料がかかります。
銀行や証券会社で投資信託を購入する際、まずは販売手数料を支払うことになります。販売手数料が3%で500万円分の投資信託を購入する場合、15万が購入の際にかかる販売手数料となります。ですので、実際は485万円しか運用できないということになります。
また、投資信託は信託報酬がかかります。信託報酬は、投資信託の保有額に一定の比率を掛け、その金額を日割り計算し、毎日支払う手数料です。
信託報酬は大体1.5%弱のことが多いようです。投資信託を保有している投資家は、信託報酬が毎日基準価額から引かれています。引かれる額については前もって決められており、投資信託説明書に記載されています。
信託報酬はわずか1.5%程度だから、あまり気にしなくても良いのではないか、と思う方もいるかもしれません。しかし、割合が少なかったとしても、その分基準価額が減りますので、影響はあります。
例えばある投資信託を1000万円分購入したとします。この投資信託の信託報酬が1.5%で、平均運用利回りが5%であるとします。
なお、販売手数料や分配金等は考慮に入れていません。
もしも信託報酬がなければ、10年後の手取り額は、1600万を超えます。しかし、ここで信託報酬の1.5%が毎回引かれているとしたら、10年後の手取り額は約1400万円になります。
これが20年後になると、差がもっと広がり、信託報酬がない場合は約2600万円に、信託報酬の1.5%が毎回引かれえている場合は、約1990万円になり、10年後の場合よりもさらに差が広がることが分かります。
このように、投資信託を購入する際には実質的なコストを考える必要があります。