株の値幅制限とは

株には値幅制限があります。

これは何かというと、投資者保護の観点から、大幅な株価の変動によって投資家に不測の損害を与えないために設けられたもので、証券取引所では1日に動く株価の幅を、前日の終値を基準に一定の値幅に制限しています。

前営業日の終値(特別気配のまま引けた場合は最終気配値)を基準株価とし、この基準株価から1日に変動できる上下の幅を定めているのです。

値幅の上限まで株価が上昇することをストップ高、下限まで下落することをストップ安といいます。

ストップ高、ストップ安に達したとしても取引自体は行われますが、ストップ高の時は買い注文が極端に多い状態です。

そのため、このような時は、株式を売って利食いたい投資家は株式を売ろうとしません。なぜなら、もっと値上がると考えるからです。そのため、ストップ高の株価で取引が成立しないまま終了することが多い傾向にあります。

一方、ストップ安の場合は反対に売り注文が多く、もっと下がると考えて買うのを待とうとする投資家が多くなります。そのため、ストップ安の値段でも買い注文がなかなか出ないため、取引が成立しないまま終了することが多くなります。

なお、日本国外の証券取引所では、値幅制限を採用していないところもあります。

例えば、ニューヨーク証券取引所がその代表として挙げられます。値幅制限が無ければ、株式の流動性が高まる、IR等の情報が短時間で株価に反映されるなどのメリットがあります。

しかしその反面、極端な暴落や暴騰を引き起こす恐れがあります。例えば、2015年5月20日と6月3日に香港証券取引所(値幅制限なし)で、一部の銘柄が短時間で60%超の暴落を引き起こしました。

このように、値幅制限が無い場合は、短時間で極端な値動きを見せるため、大きな利益・大きな損失ともに受ける可能性があります。

<値幅制限表>
価格 制限値幅 更新値幅
~100円未満 30円 5円
100円以上~200円未満 50円 5円
200円以上~500円未満 80円 8円
500円以上~700円未満 100円 10円
700円以上~1,000円未満 150円 15円
1,000円以上~1,500円未満 300円 30円
1,500円以上~2,000円未満 400円 40円
2,000円以上~3,000円未満 500円 50円
3,000円以上~5,000円未満 700円 70円
5,000円以上~7,000円未満 1,000円 100円
7,000円以上~10,000円未満 1,500円 150円
10,000円以上~15,000円未満 3,000円 300円
15,000円以上~20,000円未満 4,000円 400円
20,000円以上~30,000円未満 5,000円 500円
30,000円以上~50,000円未満 7,000円 700円
50,000円以上~70,000円未満 10,000円 1,000円
70,000円以上~100,000円未満 15,000円 1,500円
100,000円以上~150,000円未満 30,000円 3,000円
150,000円以上~200,000円未満 40,000円 4,000円
200,000円以上~300,000円未満 50,000円 5,000円
300,000円以上~500,000円未満 70,000円 7,000円
500,000円以上~700,000円未満 100,000円 10,000円
700,000円以上~1,000,000円未満 150,000円 15,000円
1,000,000円以上~1,500,000円未満 300,000円 30,000円
1,500,000円以上~2,000,000円未満 400,000円 40,000円
2,000,000円以上~3,000,000円未満 500,000円 50,000円
3,000,000円以上~5,000,000円未満 700,000円 70,000円
5,000,000円以上~7,000,000円未満 1,000,000円 100,000円
7,000,000円以上~10,000,000円未満 1,500,000円 150,000円
10,000,000円以上~15,000,000円未満 3,000,000円 300,000円
15,000,000円以上~20,000,000円未満 4,000,000円 400,000円
20,000,000円以上~30,000,000円未満 5,000,000円 500,000円
30,000,000円以上~50,000,000円未満 7,000,000円 700,000円
50,000,000円以上~ 10,000,000円 1,000,000円

値幅制限の特例措置について

値幅制限には特例措置があります。まずは値幅制限の拡大について見てみましょう。

値幅制限の拡大は、3日連続ストップ高/ストップ安、 3日間ザラバ中に出来高がない場合に、値幅制限を2倍にする拡大措置が取られます。ストップ高の場合は上限値幅のみが2倍、ストップ安の場合は下限値幅のみ2倍に拡大されます。

なお、この拡大措置は、ザラ場中に出来高があれば、その翌営業日から解除されて通常の値幅制限が適用されます。

次に、整理銘柄について見てみましょう。整理銘柄とは、上場廃止が決定した銘柄です。上場廃止になると、流動性が著しく低下します。そのため、原則として1カ月間整理銘柄に指定された後に上場廃止になります。

整理銘柄は、指定された日の翌々営業日から、下限値幅のみ撤廃する措置がとられます。なお、撤廃措置は、最初に約定した日の翌営業日に解除されて、通常の値幅制限に戻されます。

次に、新規上場(IPO)銘柄について見てみます。

IPO銘柄は、上場初日は公募価格を基準価格とし、その基準価格の4倍を上限、基準価格の1/4倍を下限として値幅制限をします。上場初日に初値がつかなければ、その日の最終気配値を基準価格として、翌営業日も同じ値幅制限が適用されます。初値が付いた時点で、値幅制限は終了し、通常の値幅制限が適用されます。

これまで紹介してきた値幅制限については、翌営業日から通常の値幅制限が適用されるのですが、IPO銘柄に関しては、初値が付いた時点というルールなのを覚えておきましょう。

なお、値幅制限が縮小されることがあります。例えば戦争などで市場が混乱し、大暴落が予想される時がそれに当たります。実際、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロの時は、翌営業日の9月12日からの3日間、東京証券取引所の値幅制限が、その時の通常の値幅制限の2分の1になりました。