市場全体の要因と個別要因
株価は高くなったり安くなったりと、様々な要因で動きます。この要因を材料といいますが、その材料にも大きくわけてタイプが2つあります。
1つは市場全体の要因である外部要因、そしてもう1つはその会社自体の要因である、内部要因です。
これらはどちらも株価に大きな影響を与え、それぞれも密接にリンクしています。
金利、政局、需給動向などの市場全体の要因(外部要因)について
金利や為替の動きは、株価に大きな影響を与えます。というのも、金利の変化が、マネーサプライに影響を与えるからです。
一般的には、金利が上昇すると株価は下がるといわれます。というのも、金利が上昇すると、会社の借入金の支払利息も上昇することになり、会社の財政を圧迫します。
また、利息が高くなったことが原因で、借入を渋るようになり、そのために設備投資等を見送ることもあります。その結果、生産活動が停滞し、業績が伸びなくなります。
また、投資家も金利が上昇することで、ローン等の支払の負担が増え、消費が落ち、株価を売却して預貯金にお金を回すようになります。
また、投資家サイドでは、住宅ローン等の金利上昇で支払利息が増え、消費が手控えられる一方、預貯金金利が上昇し、消費や株式投資より貯蓄の魅力が相対的に高まるため、株式を売却して預貯金にお金を移す動きが出てきて株価が下がることになります。
逆に金利が下がると、株価は上昇します。なぜなら、預貯金の金利が低下するために運用先としての魅力が薄くなるからです。
そうなると、預貯金よりも高い運用が望める株式市場に資金が流れてきます。また、金利が下がることで、企業は設備投資をしやすくなり、業績が伸びやすくなります。
また、為替も株式市場に大きな影響を与えると言われていますが、どういう影響を与えるかは、その国の経済構造により異なります。その国の経済が、輸出主導型なのか、それとも内需主導型なのかで変わってきます。
日本の場合、円安になれば株高になります。なぜなら、特に日経平均に組み込まれている企業は輸出産業が多いため、輸出関連企業にとって円安が有利になるからです。
なお、円安は輸入関連企業には不利になります。ただし、東日本大震災をきっかけに、日本の輸出産業の多くが生産拠点を海外に移しているため、この傾向も弱まりつつあります。
また、現在の日本の株式市場は外国人投資家が多いのが特徴です。そのため、円高、円安は彼らの動向にも影響を与えます。
というのも、外国人投資家の大部分は日本国外で生活をしており、外貨を保有しています。彼らが日本株を買う場合、外貨のままでは購入することができません。日本株の購入には円が必要になるため、彼らは自国通貨を売り、円を買います。
これだけであれば、株価の上昇が円高をもたらすことになるのですが、実はここにポイントがあります。
実はこの状態のままでは、外国人投資家は、株価の変動以外に為替変動の影響を受けてしまいます。
株価の変動は株を取引する以上当然ですが、為替変動は排除する必要があります。そのため、外国人投資家は円を買うと同時に円売りを仕掛け、為替変動をヘッジします。株売却時には、ヘッジした通貨の円売りポジションが必要無いために、円売りポジションを手仕舞うために、反対売買で円買いをします。
そのため、株価が上昇時には円売りで円安が進み、反対に下降時には円買いで円高が進む事になります。
それに加え外国人投資家はレバレッジをかけて日本株を買っていることが多々あります。証拠金を使った取引になるため、株価の下落時には彼らはロスカットされないよう、証拠金を積み増します。
その際に大量に円が買いこまれるために、円高が進むのです。
反対に、株価の上昇時には、証拠金はまったく問題ないものの、円の金利が低すぎるために運用する通貨としては不適切であると外国人投資家は考え、証拠金の一部を崩して円を売ります。そのため、円安が進みます。
また、この他に、政局なども株価に影響をもたらします。例えば、アベノミクスはその好例と言えます。
現在アベノミクスの効果は不安視されているものの、開始当初は、アベノミクスが掲げた2%のインフレ目標や無制限の量的緩和という政策がインフレ期待を生みました。
長らくデフレに悩んでいた我が国では、反対のインフレにする必要があったのです。「これから株価や物価が上がるかもしれない」という期待感から、今後の景気も好感され、円安予測が起こりました。それにより、株を買ったり円を売る人が増え、実際に円安・株高となったのです。
企業業績、M&A、増資等、個別要因について
では、個別要因はどんなものがあるのでしょうか。
個別に関係するものとしては「業績の変化」「新商品の人気」「資本の変化」など、各企業に関係する部分になります。
一番分かりやすいのは企業業績です。
会社は年一回の決算期の他に、四半期ごとにも決算を発表します。この結果の良しあしが、株価に影響します。
市場予想よりも業績が良い場合、株価が急騰することもありますし、市場予想よりも業績が悪ければ、株価が急落することもあります。
また、業績の結果だけでなく業績予想も株価に影響を及ぼします。会社はあらかじめ会社の業績予想を公表しているのですが、公表した時よりも売上が好調になったり、振るわなかったりした場合、業績予想を修正します。業績予想が上方修正されれば、株価は上昇しますし、下方修正されれば、株価は下落します。
また、会社の業績に影響を与える材料が出た場合も株価に影響を与えます。
例えば、会社が新工場を新設する、画期的な新商品を開発した等は、今後の業績に好影響を与えると考えられ、株価は上昇します。
反対に、不祥事や粉飾決算などの悪材料が出た場合は、株価が下落します。最近あった東芝や旭化成建材の例でも分かるように、企業の信頼を損なうスキャンダルの発覚が、株価を暴落させることもあるのです。
配当や株主優待も株価に影響を与えます。増配や復配は好材料として捉えられ、株価が上昇します。
反対に、減配・無配は悪材料として捉えられ、株価は下落します。また、株主優待についても、短期的に株価を押し上げることがあります。
反対に、人気のあった株主優待がなくなった場合、優待目当てで保有していた層が売却し、短期的に株価が下落することもあります。
M&Aも株価に影響を与えます。企業の合併や買収により、企業価値が上がると判断された場合は、株価が上がります。
例えば、赤字企業が黒字企業に買収されることで救済される場合は、救済される赤字企業の株価は上がりやすい傾向にあります。
一方、独自性が強く、それがその会社の持ち味となり期待されていた場合、他の企業に買収されてしまうと株価が下がるケースもあります。
買収する側の株価については、買収することでその会社の事業にメリットがあると判断されれば株価は上がりますし、買収した会社の負債が足を引っ張るのではないかと懸念されれば、株価が下がります。
また、増資も株価に影響を与えます。
増資には大きく3つのケースがあります。1つめは、積極的な事業展開をするために資金調達をするケース、2つめは、有利子負債の返済など、財務改善のために調達をするケース、3つめは、資金調達はせず、財務改善のみのために増資するケースです。
これは特殊なケースで、銀行など会社に対して多額の貸付をしている債権者が、貸付金を株式に振り替えるのです。そのため、負債が減り、資本金が増えます。これにより、会社の信用不安が解消できる、というわけです。
これら3つの増資はどれもネガティブなものではありませんが、基本的に好感される増資は積極的な事業展開のための資金調達による増資であると言えます。
これら3つの増資が株価を上げるか下げるかは、その会社の財務状況や増資に至るまでの背景など、ケースバイケースですが、株価に影響を与えることだけは覚えておきましょう。