株式市場の3つの市場について

株式市場は、その名のとおり、株式を取引する市場です。株式市場には2つの市場があります。

1つ目は取引所取引の証券取引所とジャスダック市場、未公開株式を扱うグリーンシート市場があります。

かつてジャスダック市場は店頭取引でした。というのも、もともとジャスダックの前身は日本証券業協会が創設した店頭登録制度が元になっているからです。

その後、店頭売買有価証券市場として、証券取引所を補完していましたが、2004年に証券取引所に関する免許の交付を受けたことにより、商号を「株式会社ジャスダック」から「株式会社ジャスダック証券取引所」へと変更し、証券取引法上の店頭売買有価証券市場から取引所有価証券市場へと業態転換しています。

そのため、現在の日本には店頭取引市場は無い、ということになります。

日本にある証券取引所と取引所取引について

証券取引所は、会員である証券会社で構成する法人組織で、証券取引法によって設立されています。

証券取引所は以前は8ヶ所ありましたが、2000(平成12)年3月1日に広島証券取引所と新潟証券取引所が東京証券取引所に吸収合併され、2001(平成13)年3月1日に京都証券取引所が大阪証券取引所に吸収合併されました。

したがって、現在、証券取引所は全国に4ヶ所(東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所)となっています。

かつては大阪証券取引所、京都証券取引所、神戸証券取引所、広島証券取引所、新潟証券取引所もありましたが、京都証券取引所と神戸証券取引所は大阪証券取引所に併合、そして広島証券取引所と新潟証券取引所は東京証券取引所に吸収合併されました。

そして大阪証券取引所も、2013年に現物取引を終了し、東京証券取引所と経営統合しています。そして、現在は大阪取引所に名を改め、デリバティブに特化しています。

マザーズ等取引所取引の新興市場について

東京証券取引所ではマザーズ、大阪証券取引所ではナスダック・ジャパン(現 ヘラクレス)、名古屋証券取引所ではセントレックス、札幌証券取引所ではアンビシャス、福岡証券取引所ではQ-boardという新興市場が開設されました。

これら新興市場は、ベンチャー企業など、新興企業の中でも将来性のある企業の資金調達の場を提供することを目的としています。そのような背景から、上場基準は東証1部や2部などに比べて緩いのが特徴です。

とはいえ、四半期決算の報告が義務付けられており、IRは積極的に行われています。

まずはマザーズから説明します。

マザーズは、東京証券取引所が1999年に開設した市場です。このマザーズという名前は、『Market of the high-growth and emerging stocks』という言葉を略した名前です。それに母親の『Mother』をかけ、『ベンチャー企業を育てる母親のような存在となる』という、新興市場の役割を表した名前になっています。

マザーズの場合、株主数200人以上、上場時の見込みで時価総額10億円以上などといった基準が設けられていますが、本来の有価証券上場規定は、東証二部であっても、株主数800人以上、時価総額20億円以上ですので、それに比べるとかなり基準が緩くなっていることが分かります。

上場基準は確かに緩めているものの、マザーズ上場企業には高い経営の透明性と情報公開が要求されます。マザーズ上場企業は、法定開示やタイムリーディスクロージャーに加え、第一、第三四半期業績の開示と投資に関する会社説明会を年2回以上開催することが義務づけられているのです。

なお、現在のマザーズは、大阪証券取引所との経営統合により、大阪証券市場の新興市場であったヘラクレスの銘柄も統合されています。

このヘラクレスは、2000年にナスダック・ジャパンとして開設、2002年にヘラクレスとなりました。

ヘラクレスは、大阪証券取引所が2000(平成12)年5月にナスダック・ジャパンとして開設し、2002(平成14)年12月16日に名称変更した市場です。

ヘラクレスには、収益性・資産性・市場性などにより分類されるスタンダード基準(第1号、第2号、第3号)と、ベンチャー企業向けのグロース基準がありました。

なお、グロース基準では、「上場時株主資本の額4億円以上、又は時価総額50億円以上、又は利益の額7500万円以上」のいずれか1つを満たすことが条件となっていました。

また、取引所の新興市場については、セントレックス、アンビシャス、Q-Boardがありますが、いずれもマザーズに比べて規模は小さいものになっています。

例えばセントレックスですが、現在35社が上場しています。

中部地方の企業が多いのが特徴ですが、特に地域を限定しているわけではなく、全国から広く迎え入れています。

セントレックスは、上場時の時価総額が3億円以上、成長事業を有する売上高があれば上場申請が可能です。成長事業については事業計画を中心に経営者等にヒヤリングを行うことによって確認していくスタイルを取っています。その他、上場にかかる書類手続きもかなり軽減しています。

セントレックスの場合はこのように上場基準が緩いため、ネット系証券会社が事業継続性や信用力に乏しい企業を上場させる例が散見されるようです。

セントレックスの場合、IPOでも初値を割り込むことが多いようです。名証を含め地方市場を取り扱う証券会社が少ないために投資家の買いが入りにくい傾向があるのがその理由とのことです。

店頭取引が前身のJASDAQ市場について

ジャスダックは、中小企業・中堅企業・ベンチャー企業を主に取り扱っている店頭株式市場です。日本証券業協会が運営管理しています。

最初に触れたとおり、ジャスダックは、もともとは日本店頭証券株式会社として設立され、1998年に株式会社ジャスダック・サービスに社名変更、2001年に株式会社ジャスダックに社名変更、市場名もJASDAQ市場に変更しています。

新興企業を主に取り扱っている市場ではありますが、前身の店頭登録制度の頃から50年という歴史があるため、中には老舗企業や上場から50年以上経つ企業もあります。

未公開株を扱うグリーンシート市場

グリーンシート市場は、未公開企業の株式(未公開株)を売買する場として、日本証券業協会が1997年に開設しました。

グリーンシート市場では、一定の条件を満たした株式未公開企業が、株式発行や流通を行うことができます。アメリカのピンクシート市場をモデルにしており、グリーンシート市場では、取引情報をグリーンの用紙に記載しています。会社内容説明書の発行と、公認会計士による監査が義務付けられています。

グリーンシート市場では、エマージング銘柄、オーディナリー銘柄、投信・SPC銘柄の3つに銘柄を区分しています。

グリーンシート市場はこれまで紹介した市場とは異なる特徴があります。グリーンシートの場合、顧客や取引先など、その企業の関係者を優先して募集することが多いのです。

というのも、グリーンシートはこれから成長しようという企業を取り扱っているため、企業理念や経営方針に賛同してくれ、長期的な投資をしてくれる投資家を求めているからです。

そのため、証券取引所や、ジャスダック等とは違い、デイトレードなど短期取引でのキャピタルゲインを重視する投資家には不向きな市場であるとも言えます。

また、グリーンシート市場は登録時に成長性やリスク等が審査されます。そしてその後も監査法人の監査が付いたディスクロージャーが継続的に行われるのです。そのため、第三者割当増資のような縁故増資に比べて客観性に優れているとも言えます。さらに、売却も比較的容易なのが特徴です。

とはいえ、グリーンシート市場にはデメリットもあります。

取引参加者が少ないこともあり、証券取引所やジャスダック等とは異なり、流通性が低い、価格の変動が大きい、企業の公開情報を迅速に入手しにくい、不測の損害を受ける危険性が高い、などのリスクがあります。

未公開株についての補足

未公開株とは、未公開企業、つまり未上場の会社の株のことを言います。

グリーンシート銘柄は未公開株を取り扱っている市場ですが、グリーンシート銘柄以外にも、未公開株はあります。そして、このような未公開株は、ベンチャーキャピタル(VC)で扱っていることも多いのです。

VCは投資会社の一種で、未公開株に主に投資し、上場を目指してコンサルティングを行います。時には企業買収も行うなど、アグレッシブな投資が特徴です。

VCによる未公開株投資は、自己資金で行う場合もありますが、多くが一般投資家から資金を集め、投資事業組合(ファンド)を組成して投資します。ベンチャーキャピタルはそのファンドマネージャーとして、集めた資金を管理・運用するのです。

VCを通じて未公開株を保有した場合、株式の売買は市場取引ほど簡単にはできない場合が多く、ファンドを組成している場合、途中解約は基本的にできない場合が多いようです。

ファンドの運用期間が終わり、継続して運用しない場合、持ち株の売却については、ベンチャーキャピタルや投資家自身が売却先を探す、あるいはベンチャーキャピタル自身が売却先となることもありますし、投資先企業が売却先となることもあります。

いずれにせよ、売却先への株式譲渡は、未公開株の発行元である投資先企業の承認を得ないとできません。

未公開株はまさに一攫千金で、ハイリスク・ハイリターンの投資になります。また、無登録の会社が勝手に未公開株を販売しているケースもあるなどの問題点もあります。

株の取引時間について

株式市場が開いている営業時間のことを前場、後場といい、立会時間とも言います。海外の取引所の場合、昼休みがなく、そのまま終了まで動き続ける取引所が多いのですが、日本の場合はお昼休みを挟みます。午前の部を前場(ぜんば)、午後の部を後場(ごば)と言います。

  • 東京証券取引所・ジャスダック…前場9:00~11:30、後場12:30~15:00
  • 名古屋証券取引所・セントレックス…前場9:00~11:30 、後場12:30~15:30
  • 札幌証券取引所・アンビシャス…前場9:00~11:30 、後場12:30~15:30
  • 福岡証券取引所・Q-Board…前場9:00~11:30 、後場12:30~15:30