株とは何か

「本日の株式市場では、日経平均株価が一時○円の高値を付けました」

ニュースでこんなことを言っているのを聞いたことはありませんか?株という言葉を聞くことはあっても、それがそもそも何なのかについては、漠然としていたり、いまいちピンとこない人も多いでしょう。

株とは、正式には株式と言います。そして株式とは簡単に言うと、企業の資金調達手段の一つです。

企業からすると、株式とは株式会社がその資本を集める主な手段で、必要とする資本を細かく少額に分けて、投資したいと思っている多くの投資家に株式を買ってもらうことによって、大きな資本を集めるものになります。

このようにして株式で資本集める時の最少投資単位が1株です。そして、その株式の証明書、有価証券が株券になります。最少投資単位は1株ですが、実際の購入に際しては、最低購入株式数が決まっています。

最初に書いたとおり、株式は企業が資本を集める方法です。それと同時に、自分が株主としてどれだけの金額を投資したかの証明でもあるのです。

また、株式には「株主有限責任の原則」があります。これにより、リスクが最小限に抑えられています。

というのも、「株主有限責任の原則」とは、株主は自分が投資した金額以上の責任は負う必要が無いということで、例えば、投資した企業が大きな負債を抱えたまま倒産したとしても、投資金額以上に金額を請求されることは無いのです。

もちろん、投資した株式は価値がなくなるかもしれませんが、それ以上の負債を株主が抱えることはないのです。そのため、自分が出資した金額以上のリスクはありません。

なお、FXや商品先物取引等、投機性の高い分野については、レバレッジがかけられる関係で、投資額以上の損失が生じることもありますし、その場合は追加の資金を求められる場合があります。

しかし、株式投資の場合は基本的に、投資額以上の責任は負う必要はありません。「買った株の価値がなくなるかもしれない」というリスクだけを認識すれば、必要以上に恐れる必要はないのです。

一方、企業にとっての株主は、資金提供者ということになります。

株式を購入することは、企業へ資本を投資することになります。企業が利益をあげる為には「労働力」「土地設備」「資本」の三つが大切だと言われていますが、その中の「資本」に株主は参加することになります。

そういう意味では、株主も会社の一員であると言えます。そのため、株主は企業がどこにどれだけ投資するのかをチェックする必要があります。

業績が良い企業は、利益を出した分、人気が出ます。配当への期待もふくらみ、欲しい人が増えて活発に取引されるようになります。

その企業の株式の需要が増えるため、株価は上がります。反対に業績が悪化すると、倒産のリスクが増え、人気が落ちて株価が下がります。

企業の業績は株価に大きな影響を与えるものですので、株主は投資先企業の動向をチェックする必要がありますし、その企業の事業内容、今後の展開をを予測して投資先を選択することが重要になります。株式を持つ、ということは、責任あることなのです。

さらに、多くの株式を保有し、大株主になった場合は、会社の運営方針についても影響を及ぼし、決定権を持てるようになることもあります。

株式会社は「株主総会」でその企業の方向性を決定しますが、その時の多数決では、1株1票の原則で投票することが出来ます。株式の保有量はその企業の保有にもつながり、その責任も大きくなるのです。

株式とは企業の資金調達手段ではあり、株主にとっては投資手段になるわけですが、その意味は大きなものになるのです。

株式会社の歴史

株式を発行しているのは株式会社ですが、その始まりはいつ頃なのでしょうか。実は17世紀の大航海時代にまでさかのぼります。

世界初の株式会社はオランダの東インド会社です。東インド会社は、インドや東南アジアまで航海し、特産品をヨーロッパに運んでいました。それにあたり、造船が必要だったのと、船員の給料などが必要になりました。

その前に、当時の航海について説明します。

当時の航海は王族や貴族が企画していました。造船費用、人件費等、必要な資金は当然大きなものになる上、当時の航海の成功率は20%程度だったそうです。

成功すれば莫大な富を得ることが出来ますが、そうでない場合、資金は全て水の泡となります。当時の航海はまさにギャンブルと言えるものだったのです。

やがて、富裕層の中で没落するものが出始め、資本が集まりにくくなります。その一方で商業は発達し、中産階級が出現して増え始めました。中産階級は富裕層ほどの資金提供はできませんが、もっと小さな額であれば出資できます。

富裕層よりもはるかに大人数となった中産階級から小口でお金を集め、一つの大きな資本にすることで、航海の資金にしたのが東インド会社なのです。

このようにしてお金を集めたわけですが、誰がいくらの額を出資したかを明確に記録したものが必要になります。そこで株券が登場したのです。

現在では株券は電子化されてしまったため、当時のように紙などで株券を発行する義務はなくなってしまいましたが、かつての株券は、証書としての意味合いも大きかったのです。

その後、19世紀に産業革命が起きると、いわゆる現在のような株式会社が作られるようになりました。

その始まりはフランスで、1807年に商法で、三つの事業形態のうちの一つとして、株式譲渡性を持ったソシエテ・アノニム (société anonyme) が認められるようになりました。これにより、株式譲渡が可能な株式会社が作られるようになったのです。

なお、フランスでは当初、株式会社は王様の勅許が無いと設立できませんでしたが、1867年に登録制に移行し、比較的自由に設立できるようになりました。

これで、配当金と譲渡益という株式投資による利益を得る二つの要素が揃ったことになります。

では、その当時の株価の値上がりとはどのようなものだったのでしょうか。

現在の株価は需要と供給が主な変動要因となっています。しかし元々は、いわゆるファンダメンタルズを株式で割った形での評価、そのタイミングで会社を売却した場合の価値を株券の枚数で割ったものが株価であると考えられていました。

つまり、現在で言うところの、解散価値に対する株券の枚数が当時の株価だったということです。

例を挙げると、ある会社が、1000万円の資金を10枚の株券を発行して集めた場合、1枚100万円の価値となります。その後その会社の事業がうまくいき、業績が上がり資産が2倍になったとします。

この段階で発行済の株券は当初どおり10枚のままであれば、1枚200万円の価値に上がったことになります。反対にその会社の業績が悪化して資金が500万円に目減りした場合、発行済の株券が10枚のままであれば、1枚50万円に下がったことになってしまいます。

このようにして、より大きな挑戦を行い、そこから価値を生み出すために資本を集め、そこからさらに大きな価値を生み出していくのが株式会社の目的と言うことになるわけです。

株の種類…普通株

企業は資金集めのために株式を発行しますが、その株式にも種類があります。

まずは普通株について説明します。

普通株とは、通常の株主権が与えられた、株主の権利内容が限定されていない株式です。普通株の配当は会社の業績によって決まります。多くのトレーダーが株式市場で取引しているのが、この普通株式です。

株の種類…優先株

優先株は、普通株よりも配当の支払や残余財産の分配が優先的に扱われます。

また、優先株には、会社の業績が悪化した場合でも、普通株に優先して配当が受けられるという特徴があります。そのため、普通株が無配や減配になっても、利益さえあれば優先株には配当されます。

そのため、配当収入を重視する投資家にとっては、大変メリットのある株式であると言えます。

また、優先株には、一定条件のもとで普通株へ転換できる転換権のあるものがあります。これを「転換株式」と呼んでいます。

なお、優先株は、普通株よりも安定的かつ優先的に配当を得られる権利がありますが、通常、経営参加権が与えられていません。

そのため、株主総会において議決権を行使することのできない無議決権株式であることがほとんどです。この部分が、普通株との大きな違いであると言えます。

株の種類…劣後株

劣後株とは、配当や残余財産の分配が制限されており、普通株より遅れて配当や残余財産の分配を受けられます。後配株とも言います。投資家にとってなんのメリットもない株式であるため、一般的には経営者や発起人などに対して発行されるケースが多いようです。

なお、日本で劣後株が発行されるケースは非常に少なく、個人投資家に対して発行されることはほとんどありません。

この劣後株は、会社が普通株式を追加発行できないときに利用します。会社に十分な利益があがっていないのに普通株式を発行すると、既存の株主の配当額が減ってしまう可能性があります。それを避けながら資金調達するために考え出された方法が劣後株なのです。

経営参加権

経営参加権とは株主の権利の一つで、株主総会で、所有株数に応じて議決権を行使する権利のことを言います。

株主は、株主総会に出席し、様々な議案に対し決議する権利を持っています。

原則、1株あるいは1単元1票の議決権があり、株主は会社に関する重要事項、例えば利益処分案の承認や、会社の役員を選任することができるのです。このような形で、株主は間接的に経営に参加できるのです。

発行済株式総数の過半数を特定の株主に取得されてしまうと、経営の実権を握られてしまいます。そのため、会社側も株主構成に注意を払っています。

なお、上場企業にはすべて単元株制が義務づけられています。証券取引所でも1単元の株数で取引されています。

1単元とは取引単位株数のことで、株式を発行している会社の定款で定められた一定数の株式のことを言います。

そのため、1単元は1株であったり10株であったり、100株であったりと、各会社によって異なります。1単元にまとめて扱うことで、発行会社の事務負担の軽減や、1株株主による株主総会の議事妨害行為等を除外することができるのです。

配当請求権

配当請求権とは株主の権利の一つで、利益の分配を受ける権利のことを言います。

会社の業績で配当は決まります。配当は会社の利益から配分されますので、業績が上がれば配当は増えますし、業績が悪化すれば配当は減る、あるいは無配となります。投資家は業績に注目しているため、業績が良くなれば、株価は上昇します。

残余財産分配請求権

残余財産分配請求権とは株主の権利の一つで、会社解散時に残った財産の分配を受ける権利のことを言います。

会社解散の際、会社が負債を返済した後、財産が残っていれば、株主は持ち株数に応じて残余財産の分配が受けられます。

新株引受権

新株引受権とは新株を引き受ける権利のことです。

新株引受権には3つの方法があります。

  • 株主割当方式…新株引受権を株主に与える。
  • 第三者割当方式…新株引受権を特定の第三者に割り当てる。
  • 公募方式…新株引受権を与えず、時価発行して広く取得者を募る。

新株引受権を誰に与えるかを決定するのは取締役会です。実は、新株割当権は法律上、株主に割り当てることは義務づけられていません。しかし、慣習的に株主に与えることになっています。