PERとは何か

株を分析する上で書かせな指標の一つがPERです。PERとは株価収益率のことで、株式時価総額÷純利益という式で表すことができ、株式時価総額が純利益の何倍になるかを表しています。

なお、余談ですが、純利益の出し方は、営業利益-支払利息-税金で、営業利益-支払利息=経常利益です。

PERを算出する上記の式に具体的な数字を当てはめてみましょう。

例えば株式時価総額が10億円で純利益が1億円の場合、10億÷1億で、10、つまりPERは10倍ということになります。

この式から分かるのは、純利益の10倍分の金額の株が買われている、ということです。見方を変えると、今の利益水準が続いた場合、投資した資金の回収に10年かかると言えます。

PERは、株価の割安性を測ることができる指標なのです。一般的に、PERが低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安であると言えます。

PERは、会社の過去のPERや将来の予想PERと比較することもあれば、同業他社とPERを比較することもあります。なお、日本株の場合、PERが10倍程度であれば、割安という判断がされます。

というのも、日本の平均PERは、大体17、18倍~20倍あたりで推移しているからです。なお、米国株のPERは18倍強、英国株は約13倍、ドイツ株は約16倍です。

PERではよく、現在の株価から計るの割安度を見る時に使うのですが、では、割安株というのはどんなもののことを言うのでしょうか。

平均PERは大体17倍~20倍ですから、それより低いとPERが低いと考えて良いでしょう。
おおまかな目安として、

PER15倍~20倍⇒比較的割安
PER10倍~15倍⇒かなり割安
PER15倍以下 ⇒非常に割安

となります。

PERから見る割安株と注意点

株式市場では、PERが5倍などといった超低PERの銘柄もよく見られます。確かにPERだけを見ると、驚く程割安であるように見えます。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

例えば、特別利益で一時的にPERが低くなっているものは、注意すべき銘柄であると言えます。

特別利益とは、土地売却益、年金の代行返上益など、一時的に発生する利益のことです。

決算書を見てみた時に、経常利益より純利益の方が金額的に多い会社があるのですが、その場合、特別利益が発生している可能性が高いため、要注意です。極端な低PERの会社については、このパターンがよくあるのです。

また、経常利益率が1%以下の会社も要注意です。低PERであったとしても、利益が少なすぎるので、何かあった時に、すぐに赤字転落する可能性があります。

また、銀行等の金融業以外で、自己資本比率が10%以下の会社についても、PERが低くても要注意と言えます。

では、高PERの会社はどうでしょうか?PERが高いと割高と判断されますが、だからと言って、全てダメだとは言えません。なぜなら、高PERであっても、投資すべき銘柄があるからなのです。

例えば高成長が見込める銘柄については、PERが高くても買いであると言えます。また、特別損失などの一時的な損失で売られてPERが高くなった銘柄についても買いであると言えます。

特別利益の反対の特別損失は、一時的な損失のことを指します。そのため、今のPERが高くなったとしても、来期はその損失はないわけです。

PERは割安度を計る目安ではありますが、PERだけを見て判断できないこともあるので、その他の指標や財務内容もチェックすることが必要です。

PBRとは何か

PBRとは株価純資産倍率のことです。PBR=株式時価総額÷純資産総額(自己資本)という式で算出されます。

このPBRもPER同様、株価が割安かどうかを計る指標の一つで、会社が解散した際の企業価値を示す重要な指標です。

また、PBRはスクリーニングで使われることが多い指標です。また、過去のPBRと比較し、底値圏を探す時にも使われます。

PBRは一般的に1倍に近付く程底値と考えられており、PBRが1倍に近付く程、会社が解散した時の企業価値と同等になります。

というのも、会社が事業をやめて解散した場合、残余財産が出ることがあるのですが、これを分ける権利が株主に基本的にはあるのです。

PBR=株式時価総額÷純資産総額(自己資本)という式であるため、株式時価総額と純資産総額(自己資本)が同じ…つまり、株主達が投資した金額と、会社が解散した際にもらえる金額が同じ場合、PBRが1倍になる、ということになります。

つまり、純資産よりも株価が高い…PBRは1倍より高くなり、会社が解散した場合にもらえる金額は、投資した金額より少ない

純資産よりも株価が安い…PBRは1倍未満と低くなり、会社が解散した場合にもらえる金額は、投資した金額より多い。

ということになります。

PBRの注意点

PBRは割安度を計る銘柄である、ということを書きましたが、割安だからといって飛びつくと、大やけどをすることもあります。

というのも、PBR1倍未満は「割安」か「倒産危機」のどちらかとなるからなのです。

そのため、PBRが低いということが、割安を意味しているのか、倒産の危機にあるのか、その企業がどのような状態にあるかをきちんと調べる必要があります。

その方法として、まずは、同業他社のPBRと比較してみましょう。新興産業なのか、それとも成熟産業なのかでPBRの水準が異なることもあります。

新興産業であれば、PBRは全体的に高い傾向で、成熟産業の場合はPBRは低めに出たりするからなのです。そのため、同業他社を比べてみることで、その会社のPBRがどのような位置づけなのかを測ることが必要です。財務諸表についてもチェックが必要です。

ずっと赤字のためにPBRが低くなっている会社もあるからです。今後業績改善される見込みがないようであれば、そのような会社は避けましょう。

また、この後に説明するROEとの関係を見ることも大切です。後で詳しく説明しますが、ROEは純利益を純資産(自己資本)で割ったもので算出される指標です。この指標が高いほど良いとされていますが、純資産が小さければROEも高くなります。

この場合PBRは高くなりますので、ROEが高いということは、PBRから見た場合は割高となってしまうのです。しかし、高ROEは資本効率が良いとも言えるため、PBRが割高だからと言って、投資すべきではないとは一概に言えません。

ROEとは何か

先ほどPBRのところでも出てきたROEですが、株主資本利益率のことを言います。近年注目されている指標で、高ROEの企業を評価する動きが見られます。

このROEは、企業の収益性を測る指標です。企業が株主から資本を預かっているわけですが、その資本に対し、年間どれ位の利回りに相当する利益を稼いだかを表しています。

そのため、株主は、自分が出資した金額に対し、企業がどれだけ報いているかをこのROEで測ることができるのです。

ROEは純利益÷純資産(自己資本)で算出されます。ROEが高いほど株主資本を効率よく使っていると判断され、日本の場合、このROEの目安として、8%以上は高ROEという評価になっているようです。

反対に5%以下は、低ROEとして、社長をはじめとした役員の退任を株主が要求できるという認識がされています。低ROEの場合、資金を非効率に使っており、下手な経営をしている、とみなされてしまうのです。

また、ROE×PER=PBRになります。この式から、PBRが低い企業はROEやPERも低い可能性が高いことが分かります。このことから、低PBRは低ROEの可能性があり、もしそうであった場合は、株主資本による企業の収益性(ROE)も低くなっているということになります。

もともと欧米ではROEを重視していました。そのため、日本企業と欧米の企業とでは、ROEには大きな隔たりがあります。日本企業のROEは8~9%前後ですが、欧米の企業は15~20%で、日本のROEは他の先進国に比べれば最低レベルにあります。

日本のROEは欧米だと、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、スペイン等のPIIGS諸国の企業と同程度なのですが、これらの国々はEUでも財務状況が厳しく経済状況が良くありません。

そのような国の企業と日本企業のROEが同レベルということは、外国人投資家にとって日本企業は魅力的でない、ということになってしまいます。

このように日本と欧米とではROEに差があることから、ROEを重視する海外投資家からは改善を求められています。外国人投資家の日本市場におけるシェアが6割になっている現状を考えると、彼らの声を無視するわけにはいかない、というところでしょう。

低ROEが原因で日本企業の国際競争力が損なわれ、長期的な経済成長が難しくなることが懸念されたことから、ROE改善が叫ばれているのです。

とはいえ、企業が株主に報いていると評価する基準は、ROEがすべてではないという意見も根強くあります。株主に企業と経営者がどれだけ報いているかは、配当と値上がり益や純利益に現れる、というものです。経営効率云々の部分についても、企業のビジネスの将来性や内容で経営を見るべきである、という意見もあるのです。

PER、PBR、ROEの関係

PER・PBR・ROEについて見てきましたが、これらは互いに密接に関係しています。
先ほどROEの項目でも触れたとおり、ROE×PER=PBRになります。この式から分かるとおり、PRE・PBR・ROEのうち、2つが判明していれば、最後の1つを計算して出すことが出来ます。

また、PERとROEは互いに逆数になっています。なぜなら、PER=株価(株主資本)÷純利益、ROE=純利益÷株主資本で算出されるからです。分母と分子が逆になるだけで、計算に使う項目が一緒です。そのため、PERとROEはどちらかが分かれば、もう片方も分かるのです。

また、ROEのところで触れたとおり、PBRが低い企業はROEやPERも低い可能性があります。ROEが高くPERが低いためにPBRが低くなっている場合は問題ありませんが、RERが高くROEが低いためにPBRが低くなっている場合、良いとは言えません。

PER・PBR・ROEにはこのような関連性があることを覚えておくと良いでしょう。

DEレシオについて

PERやPBR、ROEなどといった指標以外にも、株には見るべき指標があります。その一つがDEレシオです。

DEレシオとは負債資本倍率とも呼ばれ、有利子負債÷自己資本で算出される倍率のことで、外部負債を返済するための内部留保がどの程度あるかを測る指標です。DEレシオから、財務の健全性が分かるのです。

また、DEレシオは長期の支払い能力を表す指標としても利用され、社債の格付けや、金融機関の融資条件などでよく使われています。

DEレシオは数値が低いほど良いと言えます。算出される式から分かるとおり、有利子負債が多く、自己資本が少ない会社ほど高くなってしまうからです。

また、DEレシオには、ネットDEレシオと呼ばれるものもあります。ネットDEレシオの場合、より厳密に計算するため、分子に有利子負債から現預金を差し引いた純有利子負債を用います。そのため、(有利子負債-現預金)÷自己資本という式で表されます。

有利子負債ですが、これは、長・短期借入金、社債などの返済義務がある資本のことです。別名「他人資本」とも言い、自己資本とは対極にあることになります。なお、自己資本に該当するのは、資本金、資本余剰金、利益余剰金、自己株式などです。

例えば、借入金が50億円、社債が25億円の場合の有利子負債は75億円となります。一方、資本金が30億円、利益余剰金が30億円、自己株式が15億円だとすれば、DEレシオは1倍になります。基本的に負債は自己資本でカバーできる水準であることが望ましいとされているのです。

DEレシオが高いイコール、負債が大きいということですので、好ましい状態とは言えません。DEレシオが高くなる原因で考えられるのは、利益のわりに設備などの器が大きすぎて見合っていない可能性です。設備投資にかける負債が大きすぎることが考えられるのです。

反対にDEレシオが低くなれば、財務の安定度は増します。しかし、レバレッジが効かなくなるため、ROEの低下を招く可能性もあります。

β値について

β値とは、個別銘柄やポートフォリオの収益が、証券市場全体…つまり株価指数の動きに対してどの程度敏感に反応して変動するかを示す指標です。簡単に言うと、TOPIXや日経平均株価が1%動いた時、それに対してその銘柄はどれくらい動いたか、ということになります。

例えばTOPXで見てみると、β値が1であれば、TOPIXが1%上昇すれば同じように1%上昇し、1%下落すれば同じように1%下落します。つまり、β値1はTOPIXと同じ値動きをするということになります。そのため、β値が2や3になれば、TOPIXが1%変動するのに対し、2%、3%変動することになり、値動きが激しいということになります。

反対にβ値が0.5になれば、TOPIXが1%変動するのに対し、0.5%変動することになるため、あまり動かない銘柄であると言えます。また、β値がマイナスの場合は、TOPIXと反対の動きをする、逆相関の銘柄ということになります。つまり、TOPIXが上昇すると反対に下落する、ということを意味しているのです。

このβ値には特徴があります。例えば鉄鋼や不動産等の景気敏感株はβ値が高くなる傾向があります。反対に医薬品や鉄道等のディフェンシブ株はβ値が低くなる傾向にあるのです。

また、同じ業界であっても、上位のものほどβ値が低く、下位のものほどβ値が高くなる傾向にあります。さらに、低位株であればあるほどβ値は高くなります。

β値は値動きの激しさを表す指標であるため、上昇トレンドの時は日経平均やTOPIX以上に大きく上昇し、大きな利益を得ることができます。

しかし反対に下降トレンドに入ると、大きく下落し、暴落することも考えられるのです。β値が高い銘柄は値動きが激しいために、短期取引向きの銘柄であると言えるかもしれません。

EV/EBITDA倍率について

EV/EBITDA倍率とは企業価値を測る指標の一つです。企業価値(EV)が企業が稼ぐ利益(EBITDA)の何倍になるかを表しています。この指標はM&Aでよく使われます。ある会社を買収した場合、その会社の本業が生み出す利益を使って買収額を回収するのに何年かかるかが分かる、簡易的な指標です。

なお、EV=株式時価総額+有利子負債-現預金EBITDA=営業利益+減価償却となります。EVで最後にキャッシュを引くのは、会社の価値を求めるのではなく、事業の価値を求めるためです。

企業価値は企業全体の価値で、将来の事業で得られるキャッシュから算出した事業価値と、すでに現在あるキャッシュである金融資産を合計して算出されます。

つまり、事業価値+金融資産=企業価値です。そして、企業価値から、有利子負債の借り手に債務を返済した場合の残りの金額が株主にとっての株式価値になるので、企業価値-有利子負債=株式価値ということになります。

そのため、この式を変形させると、株式価値+有利子負債=企業価値となります。

そのため、事業価値+金融資産=株式価値+有利子負債となります。そのため、事業価値を出すには、金融資産を右辺に移動させ、株式価値+有利子負債-金融資産(キャッシュ)で出すことができる、ということになります。そのため、EVではキャッシュを引くのです。

EV/EBITDA倍率は、M&Aにおける企業の価値評価、割安株のスクリーニング、借入の際の信用力の評価等、非常によく用いられます。