同一資金の回転売買

信用取引を利用すると、現物取引ではできない取引方法ができます。その中の一つが同一資金の回転売買です。

回転売買とはどういうものなのでしょうか。

実は、「一日に何度も売買を繰り返してさや取りを行う」ことを言います。つまりデイトレードのことです。

デイトレードの場合、株を保有すること自体がリスクであるという考えがベースにあるため、なるべく日中の間に売買を完結することが重要になります。

以前は信用取引でデイトレートを何度か行った場合、当日使用可能な保証金に制限がかかり、ある時点で取引がストップしてしまいました。

しかし現在はこのような規制がかからないため、信用取引のデイトレが現物同様、回数を気にすることなくできます。

デイトレードに回数制限がかからなくなった関係で、ヘッジファンドや外国人投資家といったプロも、レバレッジを効かせて多くの売買を仕掛けることが可能となりました。

信用取引のデイトレードでは、「回転日数」に注目して取引を行うのがポイントです。

回転日数とは過熱感を表す指標で、信用取引の買いまたは売りの建玉を作ってから返済までの日数を示しています。この日数が短いほど、短期売買が行われていることを指し、株価の思わぬ急落の可能性を示すシグナルとなります。

この回転日数は5日以内になると過熱気味であると考えらえています。

空売り

株の基本は「安く買って高く売る」ですが、株価の下落局面で、「高く売って安く買い戻す」ことで利益を出す取引が空売りです。信用売りとも言います。

空売りでは、証券会社を通じて株を借ります。そしてそれを株式市場で売り、株価が下がったら株を買い戻して差益をもらう取引です。なお、証券会社は顧客に貸すための株を、証券金融会社より借りてきます。

例えば、1株1万円の銘柄があるとします。この株が今後下がると考え、証券会社を通じて借りて売ります。もしこの株が順調に値下がりし、1株9000円になったとします。そうなったらその株を買い戻します。そうすることで、1万円×株数-9000円×株数分の利益が出るのです。

以前も触れたとおり、空売りには、制度信用取引と一般信用取引の2種類があり、制度信用取引は6か月で株式の返済をしなければならず、一般信用売りの場合は無期限で株を売ることができます。

この空売りで利益を出すには、株価が値下がりしないといけません。

株価が値下がるタイミングとしては、やはり、会社の業績悪化や業績予想の下振れがまず考えられます。その会社の見通しが暗いことを悲観し、株を売却する投資家が増えるからです。業績悪化や予想の下方修正によって株価は急落しますが、その後も緩やかに下げ続けることが多いようです。

また、増資で株数を増やすことになった場合も、株価が下がることがあります。特に公募増資はネガティブに捉えられます。

というのも、利益がないまま発行済株式総数が増える、つまり、株主の頭数だけが増えるという状態ですので、1株あたりの利益が薄くなってしまうのです。そのため、その株に旨味がないと判断した投資家が、株を売却して株価が下落します。

さらに、ストップ高まで買われた銘柄も急落することがあるようです。特に大型株に顕著で、好材料などで高値掴みしてしまった投資家が多く発生し、彼らが売り注文を出すために、売り圧力が強まり株価が下落します。

このように、空売りは株価が下がるタイミングを狙って行うことで、効率的に利益を出すことができます。「上げ100日下げ3日」という言葉があるとおり、下降相場は損失への恐怖感があるためか、上昇時よりもはるかに速いスピードであっという間に下がることが特徴です。

海外のヘッジファンドでは、空売りを積極的に仕掛けるところもありますが、それは、空売りの方が早く利益が得られるからです。なお、日本の株式市場は買いを好む投資家が多く、空売りを行う投資家が少ないのが特徴です。

また、空売りによるリスクを軽減するために、空売り残高が多い銘柄や売り長(うりなが=信用買い残高より空売り残高の方が多い)の銘柄には手を出さない、発行済み株数が多く、流動性の高い銘柄で実行する、複数回に分けてうるなどのポイントがあります。

というのも、空売り残高が多い銘柄や売り長の銘柄の場合、制度信用取引における6ヶ月という売買の期限があることから、将来的な買い圧力となり、値上がりが予想されるからです。

また、株価が下がらず上がってしまった時、流動性が低い銘柄の場合は値動きが荒いために、予想以上の高値での買戻しをせざるを得なくなります。

また、ストップ高となった場合は買戻しできないこともあります。そのため、流動性が高く、値動きがゆるやかな銘柄で行った方が賢明です。

また、空売りした後に、その株を一度に全部買い戻せればよいのですが、そううまくいかないこともよくあります。一度に全部を買い戻そうとタイミングを見計らっているうちに、どんどん値上がりしてしまい、損失が広がることも考えられます。

そのため、何回かに分散し、買い戻していくようにし、損失が出たとしても、最小限に収められるようにしましょう。

空売りでも現物でもそうですが、やはり重要なのは損切りです。損失をできるだけ小さくとどめられるよう、きちんとルールを決めて取引することが必要です。

つなぎ売り

つなぎ売りについては、権利取りのところ等で何度か説明していますが、ここでは、つなぎ売りがどんな時に使われるのか、にどんな効果があるのかをご説明します。

株主優待でも説明したとおり、つなぎ売りは、現物で持っている株が、下がることが予想される場合に使います。持っている株と同一銘柄同一数量の株を、同じ価格で売り建てするのです。

例えば、ある銘柄が、中長期では上昇トレンドである一方、短期では下降トレンド入りする場合に使います。

つなぎ売りをした後、短期の下げは一時的なもので再上昇し、さらに中長期では相変わらず上昇トレンドであったら、つなぎ売りした株は買い戻して返済します。

反対に、つなぎ売りの後に本格的な下降トレンドに入り、中長期でも下降トレンドに転換したようであれば、つなぎ売りを外す、または現渡ししてすべて手仕舞うかのどちらかを行います。

そもそも株価は一直線に進むものではありません。上げる時も下げる時も、ジグザグに動きながらある株価へ到達します。

ですので、ある株が1株1万円まで上昇した場合、その間、9,700円→9,800円→9,900円→1万円というように、ずっと株価が上がり続けるのではなく、9,700円→9,600円→9,800円→9,700円→9,900円→1万円というように、途中下がることもあるわけです。

この例の場合、9,700円で買い、そのまま保有しておけば1万円となった段階で1株あたり300円の利益を得ることができます。

しかし、株価のジグザグの動きに合わせて短期的な下げの時につなぎ売りをすると、300円の利益のみならず、下げた時にも利益を得ることができるのです。

また、短期で下降トレンドとなった時につなぎ売りをしておくと、そのまま中長期でも下降トレンドになった場合、短期トレンドが下降トレンドに転換した段階でつなぎ売りをしておけば、高い価格で株を売ることができます。

つなぎ売りは、現物で買った株が読み通り上昇しても、反対に下落してしまっても、適切に対応できる方法であると言えます。また、種類も様々で、異なる銘柄で行うつなぎ売りもあるなど、バラエティに富んでいます。