経常利益について

経常利益は会社が経常的な営業活動や財務活動を行ったときに手元に残る利益を指し、損益計算書で確認することができます。

営業利益に受取利息などの営業外収益を足し、銀行に支払う借入利息などの営業外費用を差し引いて算出され、会社の事業全体の利益を表しています。

なお、営業利益は売上高から人件費や材料費、広告宣伝費などのコストを差し引いたもののことです。

経常利益は会社活動の総決算と言える数字で、事業全体がどのようなものだったかを表すものであると言えます。

そのため、金融機関や取引先は会社の収益性を把握するための判断材料として経常利益を重視します。

というのも、経常利益は会社の資産運用や借金など、事業全体にかかわる数字だからです。

経常利益には見るべきポイントがあります。例えば、経常利益が赤字なのに、当期純利益が黒字となる場合です。

これは臨時収入があったことを示しており、不動産売却や関連会社の株の売却による利益、前期損益修正益等、いわゆる特別利益がその臨時収入に該当します。

臨時収入によって黒字にはなっていますが、経常利益、つまり事業全体の収益は赤字ということですので、会社の経営状態に問題があり、場合によっては倒産危機にあるかもしれない、ということが言えます。

反対に、純利益がマイナスであっても、経常利益が黒字であれば、翌期にはその会社は本来の収益力を発揮し、業績が回復する可能性があるわけです。

とはいえ、経常利益が黒字だからと言って、手放しで喜べない場合もあります。

例えば経常利益には為替差益が含まれます。海外での売上が高い会社に顕著な傾向ですが、円安基調の時には為替差益が増えるため、経常利益も増えます。

しかし、これが円高に振れた場合、為替差益は減る、あるいは為替差損が発生することになります。

海外に子会社を多数抱える会社は連結決算の際に各子会社の現地通貨での決算を円に換算しますが、それにより、円安の時には資産が増えたように見えてしまうこともあるのです。

また、日本の会社が海外を拠点に事業を行っている場合、取引・再投資・預金もドルでしており、頻繁に円に両替するわけではないにもかかわらず、決算時に為替の影響で業績が左右されてしまいます。

そのため、実際は赤字であっても経常利益は黒字、反対に実際は黒字であっても経常利益は赤字になってしまうこともあるのです。

営業利益について

営業利益も損益計算書で確認することができます。経常利益の項目でも少し触れたとおり、営業利益とは、上高から人件費や材料費、広告宣伝費などのコストを差し引いて算出されます。

企業が営業活動をするためには、それに伴い様々な費用が発生しますが、これらは営業活動を続けていくために必要なものです。

このような費用、つまり販売費及び一般管理費を売上総利益から引いた上で、営業活動の成果を判断することになります。これが営業利益で、本業で得た利益ということになります。

元々日本では営業利益より経常利益の方を重視していました。しかし、2000年以降、欧米のように営業利益を重視する方向にシフトし、現在では営業利益や営業キャッシュフローを重視するようになりました。

さて、最初に営業利益の算出式を書きましたが、実は営業利益にはもう一つ算出式があります。

それは何かというと、限界利益-固定費=営業利益という式です。

限界利益とは何かというと、単純なモノの売り買いによって生じる利益のことを言います。

たとえばある会社が一個1万円で商品を仕入れ、5万円で販売した場合、粗利が4万円出ます。100個仕入れれば100万円の仕入れ値となり、これを全部売れば売上は500万円となり、400万円の粗利が得られます。

限界利益=売上-変動費、あるいは、限界利益=固定費+利益(営業利益)で表されます。

変動費とは、原材料費、仕入費など、商品を販売する際にかかる費用のことで、商品を販売した個数で変動します。そのため変動費と呼ばれるのです。

一方の固定費は、主に人件費、賃借料など、売上の大小関係なくかかる費用です。そのため、固定費と言うのです。

限界利益と営業利益を比べると、赤字に対するとらえ方が違うことに気づきます。

通常、赤字は、売上高-(売上原価+販売費・一般管理費)=営業利益がマイナスになった場合を言います。

一方、限界利益は売上高―変動費で算出されます。先ほども書いたとおり、変動費は売上に比例して増加します。そのため、受注した時に増えるのは売上と変動費、そしてそれに応じて限界利益も増えます。

一方、限界利益には固定費+営業利益という算出式もあります。先ほども書いたとおり、固定費はどれだけモノが売れようが変わりません。そこで、受注可否の判定は限界利益で行えばよいことになり、営業利益が赤字であっても、限界利益が赤字でない限り受注してよいのです。

これだけでは分かりづらいので、例を挙げて説明します。

例えば、1個500円で販売する商品があるとします、変動費400円、固定費300円とします。この商品が1つ売れた場合の限界利益は100円で営業利益は-200円となります。2個売れた場合の限界利益は200円で営業利益は-100円、3個売れた時の限界利益は300円となり、ここではじめて営業利益は0になります。

4個以上から初めて営業利益は黒字となり、4個の場合の限界利益は400円で営業利益は100円となります。限界利益の増加分に比例して、営業利益が増えているのです。

このことから、営業利益が赤字であっても限界利益が黒字であれば、受注数が増えるに従い営業利益も比例して増加し、最終的には黒字になることが分かります。