機関投資家とは何か
機関投資家という言葉を聞いたことはありますか?
機関投資家とは、プロの投資家のことを言います。「プロって、専業トレーダーのこと?」と思う方もいるかもしれませんが、それは違います。
機関投資家は金融商品取引法2条3項1号で定められている、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者」のことを言います。
なお、金融商品取引法上では「適格機関投資家」と呼ばれています。機関投資家は一般投資家に比べて関連する規制は緩やかなのが特徴です。
機関投資家ですが、どのようなものが該当するかというと、例えば、投資顧問会社、生命保険会社、信託銀行、生命保険会社、損害保険会社、年金基金等が該当します。なお、現在どんな適格機関投資家が日本にいるのかは、金融庁のHPから確認することができます。
機関投資家は基本的に、顧客から預かった資金を元手に運用します。上の例で言えば、例えば生命保険会社の場合は加入者の保険料収入を運用に回しているわけです。
機関投資家の資金量は大量であるため、市場に大きな影響を与えます。
機関投資家は顧客から預かった資金をずっと運用しなければなりません。個人投資家のように、「今日の相場は良くないから、取引は休もう」ということはできないのです。どんな相場であっても、運用を続けなければならず、パフォーマンスを上げなくてはなりません。
また、機関投資家は主にファンダメンタルを中心とした分析を行います。
例えば、営業利益の出し方や収益構造、取引先や関連企業の動向、企業訪問や過去の数字等々、様々なデータを元に、投資先企業を分析するのです。
また、分析にあたっては、トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチ、定量分析、定性分析等々、様々な方法を駆使します。このように分析を行う関係で、彼らの情報は早く、量も多いのが特徴で、個人投資家が太刀打ちできるものではありません。
さらに、機関投資家は主に東証一部上場企業の株を主に運用する傾向があります。いわゆる大型株です。
機関投資家が売買するタイミングがある
株式市場に大きな影響を及ぼす機関投資家ですが、彼らが売買するタイミングがあります。
まず一つめにあげられるのが、投資信託が新たに設定される場面です。投資信託は株や債券など様々な商品を組み込んでいますが、そこに何の銘柄が組み込まれるのかが分かれば、キャピタルゲインを狙いやすくなります。
また、悪材料が出た銘柄についても、機関投資家は売却する可能性が高いと言えます。
過去のオリンパスや最近の東芝のように、粉飾決算などの不祥事があった企業については、機関投資家がそれまでその銘柄に対し、判断を下していた根拠が覆ってしまうため、売却する可能性が高いのです。
さらに、機関投資家がベンチマークしている指標…例えばTOPIXや日経平均株価などの銘柄の入れ替えなども、機関投資家に影響を及ぼします。彼らはベンチマークしている指標の銘柄を買うこともあり、新たに組み入れられた銘柄を大量に購入する可能性があるのです。
また、機関投資家には色々な縛りがあります。株券等の大量保有の状況に関する開示、いわゆる5%ルールです。
この5%ルールですが、発行済み株式総数の5%を超える株を保有した場合、そのことを報告する義務がある、というものです。報告すると速やかに公表されます。
この5%ルールは機関投資家にとっては動きを縛るルールと言えます。先ほども書いたとおり、5%ルールは報告義務が発生してしまうため、投資先が丸わかりになってしまうのです。これは機関投資家にとっては避けたいことであると言えます。
このような事情もあり、彼らは発行済株式総数の大きい銘柄を取引せざるを得ません。彼らは莫大な資金を運用しているため、自分の売買が大きな影響を及ぼす銘柄は避ける傾向があります。
そのため、時価総額が100億円という基準を一つの目安にしており、これ以上の額の銘柄を取引することが多いと考えて良いでしょう。
もし現在100億円未満であっても、その企業の業績が好調で、時価総額が100億円に近付いてくると、まずは中・小型株を中心に運用しているファンド等の機関投資家が目を付け、買うようになります。
また、機関投資家は、長期的な運用をしているイメージがありますが、実はそうではありません。というのも、投資パフォーマンスの評価を毎月行っているからです。
月次で組入れ候補銘柄を見直すことが多いため、パフォーマンスを悪化される原因となっている銘柄があれば、その銘柄は売却し、他のパフォーマンスの良い銘柄に入れ替えます。
機関投資家がベンチマークする指標
機関投資家は指標ベンチマークして運用します。ベンチマークする指標に比べ、何パーセント勝った・負けたが運用力の評価となるのです。
ベンチマークする指標は運用する投資商品によって違いますが、日本株については、TOPIXがベンチマークする指標の主流となっており、多くの機関投資家がTOPIXを意識して運用しています。
この他に機関投資家がベンチマークする日本株の指標には、ラッセル野村プライムがあります。日経平均株価もベンチマークする指標には入っていますが、採用している機関投資家はだいぶ少ないようです。また、外国株式であればMSCIコクサイ・インデックス(KOKUSAI)がベンチマークの主流となっています。
なお、機関投資家はリスク管理もベンチマークを意識して行います。今挙げた指標をベンチマークするタイプの運用方法以外に、20銘柄程度に集中投資するファンド、絶対収益を狙う運用、超過収益部分のみを運用するポータブルアルファ戦略などの運用手法を採用している機関投資家もいますが、まだまだ少数派です。
機関投資家はパフォーマンスはベンチマーク以上の運用をしなくてはなりませんが、リスク管理についてはベンチマークと同程度を目指します。
このような形で機関投資家は運用を行いますが、ベンチマークする指標以上のパフォーマンスを要求されるために、例えばベンチマークがTOPIXであれば、TOPIXの組入れ上位銘柄をある程度入れなくてはならないのです。
また、組み入れ比率の縛りもあるため、下がると分かっていても、組み入れ比率を大幅に下げることもできないのです。
機関投資家は莫大な資金を元に運用するとは言っても、かなり制約された中で運用しているのです。