
金の価格が上がっているというニュースを、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
金の価格があがったことにより、使用しなくなった金製品のアクセササリーや金の置物製品などを売り、現金を手にするという買取りブームが2010年ごろから起きていました。
最近では、この「金人気」を受けて若い人も金投資に興味を持つことが多いようです。今回は、金投資の魅力および始め方について解説します。
金だけ持つメリット

まず初めに、金自体の持つメリットを理解しましょう。株式や債権と異なり、金には独自のメリットがいくつかあります。
- 装飾品としての付加価値
- 工業金属としての価値
- 希少性が高い
- 保管・管理が行いやすい
- 金の価格は世界共通
- インフレにもデフレにも強い
装飾品としての付加価値を持っている
まず、金の持つ一番のメリットは投資以外にも利用用途があるということです。古代より、金は変わらない輝きと美しさに高い価値が認められ、装飾品として加工され世界中の国々で愛されています。
工業金属としての価値が高い
金は金属としての価値も高いです。耐食性・導電性・加工性など優れた特性を持っており、精密電子機器の部品には欠かせません。新興国の工業化などが進むにつれ、金属としての重要性がますます高まっています。
希少性が高い

現在、金は約18万トンが採掘され、また埋蔵量は約7万トンと推計されています。つまり、25万トンほどしか地球上に存在しないのです。
環境省総合環境政策局が発表している金属の可採年数によると、金属資源の埋蔵量を年間の生産量で割った年数が、鉄は100年以上であるのに対して金は20年を下回っていることからも、その希少性が伺いしれます。
災害に強く、保管・管理が行いやすい
金は安定した物質です。そのため、紙幣その他の資産に比べて、火災・水などの災害に対して圧倒的に強さを見せます。
少量で資産価値が高いため、相対的に他の資産よりも保管・管理が容易です。
金の価格は世界共通。全世界で取引されている

金の価格には世界基準となる国際価格というものがあります。
金の国際価格は、1トロイオンス当りの価格を米ドル建てで表示します。トロイオンスとは、貴金属や宝石の原石を量る時だけに使用される単位であり、グラムに直すと約31.1035グラムになります。
ドル建てで計算されているのは、米ドルが世界で最も多く取引されている基軸通貨だからです。
金は1日24時間、常に世界のどこかの市場で取引されています。
シドニー市場から始まり、各国の市場で金は取引されており、価格も刻一刻と変化します。そして最後のニューヨーク市場が閉まる頃、また翌日のシドニー市場が開くことになります。
インフレにもデフレにも強い金
株式や債権などの金融資産は、大不況の際は価格が際限なく下がっていき、たとえ分散投資を行っていても損失を抑えることは困難です。最悪の場合、国のデフォルトや会社の倒産などで、紙くずになる可能性もあります。
しかし、金はそれ自体に価値があるため、価格がゼロになることはあり得ません。そして、金はインフレとデフレの両方の経済変動に強いことも特徴です。
例えば、物価が上昇しインフレ局面になったとしても、純金価格は着実に値上がりします。
逆に、物価が下がるデフレ局面で経済不安が起こったとしても、純金それ自体の価値が損なわれることはなく、むしろ資金が金に集まるため価格があがる可能性もあります。
もちろん、金相場の動きを見極めた上で短期の売買で利益を得ることも出来ますが、10年20年といった長期的な視点で考えた方が、デフレ・インフレ両方に強い金の威力が発揮されるでしょう。
金のデメリットはないの?

金のいいところばかり書きましたが、では逆に、金のデメリットはないのでしょうか。以下の様な点が金のデメリットになります。
- 金自体で配当や利息が発生しない
- 元本割れの可能性
- 為替の影響を大きく受ける
- 資産が保護されないことがある
- 盗難リスクや保管コスト
金それ自身では配当や利息が発生しない
株や債権は、それを活用してビジネスを行い利益を生むため、配当という形で保有者に還元が行われます。
しかしながら、金はそのものを何かに利用することができないため、配当や利子による収益は起こりません。
金価格の上昇のみが収益源になるところは、注意が必要です。
価格が変動することで、元本割れの可能性がある
中長期でみると、金の価格は確かに上昇しています。しかし、短期的にも上昇しているかというと、必ずしもそうではありません。
過去の動きを見ると、例えば1年で20%以上下落した年もあります。
お金に変えたいタイミングで上昇していればよいですが、そうでない場合もあるでしょう。そのリスクを織り込みながら投資をする必要があります。
為替の影響を大きく受ける
先ほども言ったように、金の価格はドル建てです。よって、為替の影響を大きく受けることになります。円高の場合、金の価値は相対的に低下します。
もちろん、金価格同様、為替も予想できるものではありません。為替リスクも読み込む必要がある点については、注意が必要です。
資産が保護されないことがある

純金積立会社の中には、消費寄託という形で資産を管理しているところが多いです。消費寄託とは、契約者の資産を会社が自由に運用してもよい、という契約になります。
この場合、運用会社が倒産したりした場合、預けた純金は返ってこないこともあります。銀行預金と異なり、保護されるわけではなりません。
預けた純金を保証する「特定保管」という形態をとる会社もありますが、特定保管の会社は手数料が高いことが難点です。
そのため、保管方法は消費寄託とし、手数料を抑えながら信用力が高い大手の純金積立会社を選ぶのがよいとされています。
盗難リスクや保管コストがかかる
金をそのまま購入した場合は、盗難や災害のリスクが発生します。その防止策として盗難保険や金庫保管がありますが、それらはコストがかかるため、利益を圧迫してしまう恐れがあります。
金の投資は自分には合わないと思った方は、下記リンクから開くページでその他の投資について検討してみてください。金以外の9つの投資についてメリットデメリットがざっくり紹介されています。
お金を増やす!【初心者向け】初めて投資する前に知っておきたい投資10選。メリット、デメリットで比較
金投資の4つの始め方
一言で金投資といっても、実は4つほど方法があります。ここではその4つを紹介しながら、メリットとデメリットについて見ていきましょう
一番わかりやすいのは、金地金購入

いわゆるゴールドバー、金の延べ棒のことです。皆さんも一度はテレビ等で見たことがあるのではないでしょうか。そちらを購入する投資です。
メリット
こちらのメリットとしては、コストが安い点です。一回一回の買い物が大きいために、売買手数料が比較的安く、かつ、自宅で厳重に保管すれば年会費や保管料を支払う必要がないために、コストダウンを図ることができます。
そして、純金自体が装飾品としての価値が高いために、人に見せることでその人を魅了するという楽しみもあります。
デメリット
一方デメリットは、やはり保管のしづらさでしょうか。盗難リスク等はどうしても避けることができません。
預ける場合であっても保管料等のコストがかかるのが難点です。また、一回の買い物が大きくなるため、まとまった資金が必要になります。簡単に始めるのは難しいかもしれません。
ロゴ
金地金は、大手地金商の田中貴金属工業・製錬会社の三菱マテリアル・大手鉱山会社の住友金属鉱山などが、自社で製造した地金を販売しており、一般的に各社オリジナルのロゴがついています。
毎月○円からコツコツと!純金積み立て
一方、少額から始めたい方におすすめなのが、純金積積み立てです。
純金積み立ての一番のメリットは、その安い初期費用です。金融機関によって異なりますが、月1000円という少額から投資可能なのが魅力です。
純金投資は、月額をさらに日割りにして、金価格が安い日には多く高い日には少なく、均等な金額を購入する仕組みです。
貴金属メーカーのほか、楽天証券や住信SBIネット銀行といった一部のネット証券やネット銀行でも積み立てが可能です。手軽に始められるのもメリットです。
たとえば住信SBIネット銀行の場合、「Mr.純金積立」というサービスがあります。
1,000円から1,000円単位で積立が可能で、手数料も積立とスポット購入のどちらも1,000円につき25円と、比較的抑えられています。
NISAの対象にも!金関連の投資信託にも注目
金に直接投資するのに躊躇する場合は、金の投資信託を利用してみてはいかがでしょう。
NISAの対象にもなり、受け取った収益が非課税になる、というメリットに加え、様々なバリエーションの商品があります。
たとえば、通常の金価格に連動するファンドに加え、値動きが金価格の2倍に連動する、「ジャパン・ゴールド・ファンド・ブル2倍型」や、金価格が下がったときにファンドの価格が上がる「ジャパン・ゴールド・ファンド・ベア2倍型」等もあります。
また、円だけでなく、ドルなどの通貨を選べる場合もあります。
ただし、振れ幅が大きい場合、その分リスクも大きくなることは理解しておくべきでしょう。
コストは最も安い?金ETF
金ETFは、金価格に連動した上場投資信託です。金の価格に連動するようにポートフォリオが組まれています。
金ETFの一番のメリットは、なんといっても価格の安さとコストの低さでしょう。
価格は、安いところで一口4,000円という手ごろな価格から投資可能です。金地金や純金積立などと違い、保有手数料も一切かからないのが特徴です。
また、ある程度の保証がされている点も魅力の1つです。金のETFは裏づけとして、投資家の購入額に応じて金地金を購入・保管する仕組みをとっています。
このため、万一取扱会社の破綻があったとしても保護されます。ただし、一部の銘柄では裏付けが金現物ではないものもあるので、注意が必要です。
金の保有は○%がおすすめ?持ちすぎには注意!

金は、上記のように、メリットもデメリットもある資産です。そのため、すべてを金投資にしてしまうのは、逆にリスクが高くなってしまう可能性もあります。
金はその特徴から、リスクヘッジ資産、安全資産として考えられています。しかし、価格の振れ幅はそれなりに大きいので、持ちすぎには注意しましょう。
また、レバレッジを効かせることも商品によっては可能ですが、レバレッジのかけすぎは不測の事態への対応ができなくなりますので、ご注意ください。
一般的に、金は資産の10%程度がおすすめとされています。分散投資の一環として初めてみるのがよいかもしれません。
まとめ
金は、誰もが知っている鉱物ではありますが、資産として、投資対象としても魅力的であることが理解できたと思います。
特に、不況にもインフレにも強い、という点では、非常にバランスの良い資産であるといえるでしょう。
しかし、値動きに幅がある点や、為替リスクなど、様々なリスクがあるのも事実です。また、ゴールドバーを買おうとすると多大な金額がかかり、コストがかかるのも懸念点の1つです。
最近は、1,000円から積み立て可能な、純金積み立てや、金に連動する金ETFのような商品も多く登場しています。
これらの少額投資を活用しながら、金を保有することで、将来に備えてみてはいかがでしょう。
ただし、金だけで資産運用をするのはそれもまたリスクが高くなるので、保有割合には気をつけてくださいね。