
フィンテックという言葉をご存知でしょうか。今やニュース等でも当たり前のように使われていますが、その定義や具体的な内容については、よく知らないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、フィンテックとは何かについて、わかりやすく説明したうえで日本で今注目されているフィンテックサービスについて紹介します。
目次
フィンテックサービスとは、何のことを指すのか

フィンテックとは、ローマ字では「FinTech」と書きます。金融、という意味のFinanceと、技術のTechnologyを掛け合わせた造語で、2000年代にアメリカで生まれた言葉になります。
フィンテックとは
フィンテックとは、文字通り金融サービスに情報テクノロジーを掛け合わせたものになります。
これまで、金融サービスは金融機関や一部の専門家が独占的にサービスを提供しており、専門性が高く、一般人がそのサービスの内容を理解していないのをいいことに、そのサービスの中身はブラックボックス化されていました。
また、専門性が高いがゆえに、専門家が1対1で顧客対応をする必要があり、金融機関にとっても非効率な面がありました。
これを、ITの力を使ってオープン化したり、誰にでも使えるようなサービスにするというのが、フィンテックの本質になります。
利用者視点では?
利用者からしてみると、今まではそれが高いかどうかもよく理解できないまま、必要なサービスだからという理由でお金を払っていたものが、IT化されることで価格が透明になり安くなる可能性があります。
金融機関の視点では?
一方、金融機関側からすると、今まで1対1で行っていたサービスをITを使って行うことで、業務コストが小さくなり、かえって利益を生み出すことが出来る可能性もあるわけです。
規制緩和のトリガー?
さらに、フィンテックは規制緩和のきっかけにもなります。ここ数年で、日本でも多くの企業がフィンテック関連事業に参入しました。
結果、消費者は多くのサービスの中から利便性の高いサービスを選ぶことができます。現在、金融業界では新しいビジネスが続々生まれつつある、と言っていいでしょう。
フィンテックを支える技術とは?

では、フィンテックを支える技術には、どのようなものがあるのでしょうか。主なものについて解説していきます。
ブロックチェーン
フィンテックを支える主な技術として挙げられるのは、ブロックチェーン技術でしょう。仮想通貨などにもこの技術は使われています。
ブロックチェーンは、分散型のネットワークのことです。
従来タイプのデメリット
ブロックチェーンが生まれるまで、データベースは中央管理型のものが一般的でした。
中央管理型の場合、管理者は1名になります。1名が正しく管理しているかどうかというのは、誰にも分りません。
また、その管理サーバーがダウンすれば、必然的にシステムは止まってしまいます。
「安全」「信頼」が第一である金融サービスにとって、システムダウンや管理者の不正というのは、見逃せる問題ではありません。
これが金融機関をテクノロジーから遠ざけていた要因でもありました。
ブロックチェーンなら
一方、ブロックチェーンの場合、同じデータベースを複数の分散化されたサーバーで管理することになります。もちろん管理者も複数の体制になります。
こうすることで、1つのデータベースが壊れても、他のデータベースで仕組みを支えることができるのです。
また、分散させることで、相互いチェックをかけたり真偽を互いに判断できる、というメリットもあります。
分散型ネットワークでは情報の記録は、複数のデータベースで同時に更新されます。これにより、更新の速度はどうしても遅くなります。
しかし、最近はコンピュータの発達やネットワークの高度化により、更新スピードも速くなってきたことから普及が進んでいます。
AI(人工知能)

AIとは、人工知能のことです。人工知能という言葉はみなさん聞いたことはあるでしょう。では、金融サービスにどのように人工知能が生かされているのでしょうか。
今までは?
金融サービスは、正しさを証明するために多くのデータをとる必要があります。
結果、金融機関には多くのデータがあったものの、そのデータはデータベース化されておらず、使えるデータではありませんでした。
それが、ビックデータ化によりデータの集積を進めていったのが、2000年代後半から2010年代前半にかけてです。
ただし、あまりに膨大なデータのため、そのデータをうまく活用できていませんでした。
AIによる提案
しかし、2010年代後半に人工知能を活用することで、多くのデータを処理し、最適と思われる提案ができるようになったのです。
人工知能は、機械学習といって、データが多くなればなるほど正しいと思われるものに近づくことができるのです。
現在、人工知能は、運用等のサービスを中心に、活躍の場を広げています。
ソーシャルネットワーク

金融機関の仕事は、金融サービスを提供することだけが仕事ではありません。お金を集めることもサービスの一つです。
なぜなら、貸出1つをするにしても、貸せるお金がないとサービスそのものが提供できないからです。
ソーシャルネットワークの発達により、今までは限られた投資家にしかできなかった「貸し手」に一般の人がなれるようになりました。
多くの人から少額を集めることができるようになったことで、新しいサービスや、今までは資金を調達することができなかった人たちも、資金を調達することができるようになったのです。
他にも、サーバーのクラウド化や通信の信号化技術、APIによるオープンネットワークの発達など、様々な技術の発達により、フィンテックは発達し続けているのです。
フィンテックの市場規模はどれくらい?

では、これだけ騒がれているフィンテックですが、市場規模はどれくらいあるのでしょうか。
市場規模は約○億
フィンテックの市場規模を図るのには、様々な指標があります。流通総額を指す人もいれば、売上を指す人もいます。
今回は、売上ベースで、どれくらいの市場規模かを見てみましょう。
矢野経済研究所が出している「国内FinTech(フィンテック)市場に関する調査」によると、2016年の国内フィンテックの市場規模は、約48億5000万円だそうです。
法律的・技術的・物理的環境の整備が進み、特にソーシャルレンディングサービスとクラウド型会計ソフトサービスが市場を牽引したそうです。
驚くべき成長力
48億円というと、小さいと感じる方も多いかもしれません。しかし、同調査によると2015年の市場規模は33億円であり、1年で50%近くも成長しているのです。
さらに、同調査では、2021年の市場規模予測を、808億円としています。これは今後5年で16倍まで市場規模が伸びる、ということを意味しております。
まだ、規模は小さいサービスになりますが、今後のポテンシャルは非常に大きいといえるでしょう。
フィンテックサービス・注目の企業7選

フィンテックサービスを行う会社は大小問わず、様々な会社があります。
金融機関がフィンテック事業に参入する事例もあればIT企業が参入する事例、また、独立したベンチャー企業がサービスを提供していることもあります。
日本のフィンテックサービスは、主に7つに分類されます。その具体的なサービスと注目されている企業について、見てみましょう。
仮想通貨

仮想通貨はフィンテックの中でも、最もわかりやすいものでしょう。仮想通貨は、特定の管理母体を持たない通貨です。
最も有名なものがビットコインですが、イーサリアムやアルトコイン、ビットコインから派生したビットコインキャッシュなど、様々な種類のものがあります。
仮想通貨の1番のメリットは、個人間、または個人と法人で、直接決済ができる点です。
これまでの通貨の場合、相手に送金するには銀行などを介して送金する必要がありましたが、仮想通貨は、個人間で直接決済を行うことを可能にしています。金融機関を介さないことで、決済コストが大きく下がります。
もちろん円やドルとの交換も行うことができますし、国によって縛られた通貨ではないため、煩わしい手続きや制限が存在せずより自由な取引が可能になります。
仮想通貨に関する注目企業は?
仮想通貨は、残念ながら、日本発、というものほとんどありません。日本にある企業は、そのほとんどが交換所と呼ばれるビットコインと円やドルを交換する企業になります。
交換所で最も大きいのは、「ビットフライヤー」という交換所になります。もとはビットコインの交換所だったのですが、最近ではビットコインキャッシュやイーサリアムなど、様々な通貨を扱うようになりました。
取引量は3年連続日本一で、決済量を毎年増やしています。最近では証拠金取引なども出来るようになるなど、サービスの幅を広げています。
送金・決済サービス
続いては、送金・決済サービスのIT化について、見てみましょう。
かつては、送金・決済サービスは、銀行を介さないとできないものでした。送金や決済をするたびに、銀行やカード会社が儲かる、という仕組みになっていたのです。
また、企業やお店は、現金を持たなければならないというビジネスリスクを抱えたままでした。
そこで出てきたのが、送金・決済のフィンテックサービスです。具体的には下記のようなサービスを指します。
- スマホのジャックに差し込むだけで、カード決済を行える。
- APIを活用するだけで、オンラインショッピングに決済機能を導入できる。
このサービスを利用することにより、銀行を介することなく、低コストで送金や決済ができるケースが増えてきました。今後、キャッシュレス化が進む中で、さらに活躍の場が広がるサービスになると言えそうです。
送金・決済フィンテックに関する有望企業は?
アメリカでは、PaypalやSQUEREが有名です。一方、日本企業では「コイニー」が注目企業といえるでしょう。2012年創業のスタートアップです。
コイニーは、「お金の流れをもっと滑らかにし、人が生み出す価値の循環を促進する」というビジョンのもとに、事業を進めています。
カードリーダー端末に加え、オンライン決済用のサポート、そして直近ではAIによる融資サポート事業まで、活躍の場を広げています。
資金管理サービス
資金管理サービスとは、日々の収入や支出、銀行・証券・保険などの資産管理を自動的に行ってくれるサービスを指します。
簡単にいうと、家計簿や出納長を自動でつけてくれるフィンテックサービスと考えると分かりやすいでしょう。しかし、これだけでは、IT化した意味がありません。
資金管理サービスのIT化のメリットは、すべてのデータを記録化することで、比較や無駄の抽出等が簡単にできるようになったことです。
加えて、これらのサービスには会社のバックオフィスに必要な、会計や給与計算などの業務を効率化してくれるサービスもあります。
これらを活用することで、資金管理業務が効率化できるとともに、今まで会計士や税理士に対し支払いをしていたコストの低減が期待できます。
また、将来的にはこれらの集めた企業データ・個人データをもとに、新しい提案を行えるなどの新しい事業も期待できます。
また、銀行データとAPIで連携することで、よりスムーズに資金管理を行えるようになっています。
資金管理サービスの注目企業は?
資金管理サービスの注目企業は、個人向けと法人向けに分けて考えましょう。
個人向けサービス
個人向けでは、マネーフォワードが注目されています。すでに500万人以上の人が利用しているサービスです。
家計簿を自動作成してくれることに加え、複数の金融機関の口座情報を入れることで、資産管理も一括で行ってくれるのです。
スマートフォンアプリでは、レシートの写真を撮ると入力を自動で行えるなど、個人にとって嬉しいサービスもあります。
法人向けサービス
一方法人向けでは、上記のマネーフォワードと並んでFreeeも高い注目を集めています。
中小企業の経理・会計を大幅に簡単にすることを目的に、帳簿作成のほか請求書の発行・郵送・消込や経費精算まで対応しています。
リアルタイムに数字が把握できるため、経営状況が簡単に把握できます。今までは「税理士がいなければ、中小企業であっても資金管理は難しい」とされていましたが、アプリ1つで大きく効率化ができるようになりました。
加えて、確定申告のサポートや給与支払いなど人事労務関連のサポート、会社設立・開業サポートまでついています。
もちろん完全なサポートとはいきませんが、今まで専門家でないとできなかった部分が自分たちである程度進めることができるという点で、コスト削減に大きく寄与しているのです。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、資金運用のフィンテックサービスです。
従来は、資産運用は、専門家は1対1でアドバイスをするものでした。しかし、サービス提供者の数には限りがあるため、必然的にサービスを受けることができるのは富裕層がメインになっていました。
しかし、ロボアドバイザーサービスは、いくつかの質問や目標額から投資方針を決定し、自動的に銘柄を選んでくれます。
その上、リバランスまで自動的に行ってくれるため、投資家は自分の手をかけることなく目標に向かって最適な配分で投資ができるのです。
月額1万円からのサービスも登場するなど、投資に対するハードルを下げている側面もあります。
今後、AIがさらに発達すればサービスがさらに高度化する可能性もあるでしょう。
ロボアドバイザーの注目企業は?
ロボアドバイザーの注目企業は、「ウェルスナビ」です。元財務省、マッキンゼーの柴山氏が創業した、ロバアドバイザーの企業になります。
機関投資家向けのアルゴリズムを改良し、個人向けに活用しています。一度目標を設定すれば、自動的にそれに合わせて配分を選んでくれるので投資家にかかる手間は極めて小さくなります。
また、日本だけでなく国際分散投資を行うなど、リスクについても十分に検討されています。
毎月少額の積立を行えるサービスも行っており、投資初心者にも使いやすい内容となっているでしょう。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、お金を借りたい人と貸したい人をインターネットで結びつけるサービスになります。
個人と個人を結びつけるレンディングサービスという意味で、「P2Pレンディング」と言われることもあります。
ソーシャルレンディングでは個人と個人をインターネットで結びつけることで、貸し手には高利回りでの資産運用、借り手は「今まで融資を受けられなかった先であっても融資を受けられるようになる」というメリットがあります。
特に、環境や地域振興・新興国など、今までリターンが不明確で、なかなか貸し付けができなかった先に貸し付けができるようになり収益を生むようになった..という事例も多くあります。
ソーシャルレンディングの注目企業は?
ソーシャルレンディングといえば「マネオ」が最も有名ではないでしょうか。2007年創業と、フィンテック企業の中では歴史があります。
すでに900億円近くのローンを組成しているなど、実績は抜群だと言えるでしょう。
マネオでは、不動産担保付きのローンファンドを中心に、事業性資金のファンドなども取り扱いがあります。
地域振興ファンド専門・環境ファンド専門などのグループ会社を複数保有しており、複合的な経営を行っています。
クラウドファンディング
クラウドファンディングという言葉は、皆さま一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
クラウドファンディングとは、自社の商品やサービスを出すにあたり、事前に多数のお客様から賛同を得て、資金調達を行うサービスになります。
良いアイデアを持ったスタートアップ企業や個人が、商品開発用・事業用の資金を、インターネットで幅広く資金を調達する仕組みです。
出したお金に対してリターンがある「投資型」と、リターンではなく物品等のお礼で返す「寄付型」があり、日本では寄付型が主流になっています。
最初は小さな個人や事業者が中心でしたが、最近ではソニーがクラウドファンディングで資金調達をしたり、お笑い芸人の西野氏が絵本を作るプロジェクトの資金集めを行うなど、多様な広がりを見せています。
クラウドファンディングの注目企業は?
クラウドファンディングの注目企業は、サイバーエージェントの「Makuake」でしょう。
後発でクラウドファンディングに参入したものの、その営業力や企画力で多くのプロジェクトを成約に導いています。
特にファッションなどのライフスタイル系のプロダクトに強く、かつては伊勢丹にショールームを持っていたこともあるなど、新しい取り組みを行っています。
クラウドファンディングは誰もが取り組みやすいフィンテックなので、フィンテックのとっかかりとしてはよいかもしれません。
まとめ
フィンテックと一言でいっても、決済・資金管理・融資など、それぞれの機能をIT化することで、様々なサービスが生まれています。
それぞれがIT化のメリットを活用しながら、事業領域を拡大しています。
上で紹介した企業は、法人サービスのみならず、個人でも利用可能なサービスが多くあります。
気になったサービスがあれば、ぜひ一度利用してみて、フィンテックに直接触れてみてはいかがでしょうか。新しいサービスを利用することで、あなたもきっと便利さと革新性に気づくでしょう。