商品先物について、取り扱う金額の大きさやその投機的な側面の強さから厳格なルールが存在します。
日常あまり耳にしない言葉や、ルールが存在しますのでここで少し解説します。
呼値について
先物取引を行う際、混乱を避けるために商品ごとに決まった量を塊として、その量での価格を決めていきます。
この商品ごとに決まっている、価格を表すための量のことを「呼値」と呼びます。また、その呼値あたりの商品の価格を「約定価格」と呼びます。また、その約定価格の値動きについての最低単位についても定められています。
蛇足かもしれませんが、上で説明した通り「呼値」は量であって値段ではありません。
例えば、東京商品取引所の金についての取引であれば1gあたりの価格を呼値として約定価格を決め、その価格について1円刻みの取引が行われることになります。
取引単位と数量
価格情報として表されるのは「呼値」あたりの「約定価格」ではありますが、実際に取引される単位は呼値ではなくより大きな単位を1つの塊として取引することになります。
この取引の際の単位を「〜枚」として表します。
先ほどと同様に東京商品取引所の金の例をあげれば、取引単位は1000gですので、1枚の取引を行う場合には約定価格の1000倍の資金が必要になることがわかります。
注意して欲しいのは、同じ商品でもミニ取引がある場合です。
東京商品取引所においては金と白金(プラチナ)がミニ取引可能ですが、金の1枚が1000g金ミニは1枚100g。白金の1枚が500g白金ミニが100gとお互い割合が異なりますので注意を必要とします。
板寄せとザラバ
さて、先物取引の約定価格決定についての方法の説明をします。
大きく分けて、「ザラ場」と「板寄せ」の取引方法があります。各々特徴がありますし、商品ごとに取引のやり方がどちらか決まっていますので確認しておかないと混乱の元になります。
「ザラ場」は商店でのショッピングに似た取引になります。
高く買ってくれる人に順に売っていき、安く売ってくれる人から順に買われていきます。
買えなかった人は希望金額をあげて買うことになるでしょうし、売れなかった人はさらに値段を下げて売ることになります。
したがって、ある銘柄の約定価格について同じ時期であっても異なる約定価格になる場合があるのがザラ場取引になります。
これは株式市場での通常取引と同じ形ですので馴染みのある方も多いかもしれません。
次に「板寄せ」についてです。これは市場(いちば)のセリに似ていると言われています。もっとも、市場のセリが一般的になじみ深い例だとは思えないのでもう少し説明を加えます。
この板寄せによる約定価格決定については集団同士の取引であると思ってください。
ある価格について売り手、買い手が存在するわけですが、その量は異なるわけです。その場合に、売り手の方が多ければ約定価格を引き下げ、売り手を減らし買い手を増やそうとします。
逆に買い手の方が多い場合には引き上げて、買い手を減らし、売り手を増やします。
このような作業を何度か繰り返し、最終的に数量が一致した段階で取引が行われます。
したがって、ある時期の取引について、どの取引についても同じ約定価格での取引になるわけです。
本証と追証
本商品先物取引は一枚あたりの「取引本証拠金」の分の資金があれば取引できます。身近な例で例えるとローンを組むときの頭金のようなものになります。
これは、商品先物取引が商品とお金を直接交換するわけではなく、その差益を求めるものであるため、証拠となる元手だけで取引が行われるからです。
しかしながら、その差益がマイナスとなり、証拠金では不十分となる場合もあります。
マイナスになる可能性について、値洗いした上で、本証の半分以上の損失が出そうな場合には追証が求められます。もしもこの追証分の証拠金を入れなかった場合にはその日の時点で決済されてしまいますので注意してください。
なお、本証の金額は、取引所が定めた金額(=取引本証拠金基準額)を下回らない範囲で、取引会社が自由に決めていいことになっています。そのため、会社によって金額が異なることがあります。
また、追証は、追加証拠金のことです。受入証拠金が証拠金所要額を下回った場合に追加して差し入れる必要のあるお金のことを言います。
このように、取引本証拠金以外にも資金が必要となる場合があることを認識しておきましょう。
サーキットブレイカー(CB)制度と値幅制限制度について
市場の値動きについて過熱しているかどうかの判断としてもっとも客観的なのが値動きの変動幅ですが、この変動幅に対して制限を加えすぎると過度な市場介入となり自由な取引が阻害されてしまいます。
現在日本の商品取引所ではこの値幅制限に代わり、サーキットブレイカー制度(CB制度)が取られています。
この制度は、限月ごとに設定以上の値動きが市場で起きた場合に取引を停止し、その上でさらにもう一度そこから設定額分の変動幅を増加して取引を行います。
商品によって異なりますが、規定回数の停止と拡大を行った場合にはそれ以上の拡大は行われませんが、取引所の判断で中断時間と値幅を再設定する場合もあります。
東京商品取引所の場合には停止時間は5分になります。
追証のルール
追証がどのラインから発生するかについて、各先物会社によって独自に設定されています。ですので、取引の前にどこから追証が発生するのかを確認する必要があります。
追証が発生した場合、基本的に、証拠金所要額を回復させるか、あるいは決済してしまうかのどちらかを選ぶ必要があります。
回復させる場合は、各先物会社が指定した期限までに、証拠金所要額を回復させる金額以上の追証を入金します。
また、決済する場合は、つまり損切りするということになります。追証の連絡があっても、ポジションはそのままあるわけですので、追証を入金するまでの間に、損失はもっと広がるかもしれません。
損失の出たポジションをクローズさせることなく、ダラダラと損失を拡大するよりも、損切りしてしまった方が良い場合もあります。
なお、相場の値動きが激しい場合、追証請求の前に「取引臨時増証拠金」を求められる場合もあります。これは追証が発生する前に未然に担保力を強化してもらうために取引所判断により請求されます。
これは、担保力だけではなく、市場自体の過熱感を和らげる目的もある場合もあります。
また、期限の短い当限の商品の場合には値幅解除がありますのでその対応のために取引定時増証拠金を求められる場合もあります。
ロスカットについて
ロスカットとはその商品における損失の最大額をあらかじめ定め、それ以上の損失を出さないために値動きに対する下限額を定め、その条件に当てはまった場合には取引終了を行い、リスク(損失)の最大額をあらかじめ組み込んでおく方法になります。
もちろんこの判断を自分でその都度行っても良いのですが、証券業者によってはロスカット条件をあらかじめ定めておけば、その条件になった場合に自動的にロスカットしてもらえます。
もっとも、証拠金の50%まで損失が出てしまえば追証の必要が出てくるわけですから、それ以上の設定はできませんが、リスクを出来るだけ小さくしたい場合には利用することも視野に入れるべきでしょう。
注意して欲しいのは、ロスカットしてしまえばその時点で取引は終了ですから、その後に値上がりがあった場合でもその損失は戻ってこないことです。
したがって早すぎるロスカットは運用の柔軟性を小さくして利益をあげるチャンスを潰す可能性もあるのです。
場合によっては追証ギリギリまで耐えるのも1つの判断になりますので、自分の目的にあったリスクマネジメントを心がけてください。