相場に影響を与える経済指標

経済指標とは、各国の公的機関や主要な銀行、大学などが発表する経済状況を構成する要素を客観的に分析し、数値化したもので、経済の現状や過去からの変化を正確に把握できるものです。

ここでは、この経済指標の与える影響について解説します。

商品先物を含め、ほぼすべての市場相場は、その国の経済状況に応じて変化するため、経済指標は将来の値動きの方向性を予測する上でとても重要です。

経済指標としてよく分析の的とされるのは「政策金利」、「フローや景気に関する指標」(GDP、景況感調査など)「消費に関する指標」(消費動向、雇用統計)「物価に関する指標」(物価指数、物価上昇率)「貿易関連の指標」になります。

このように、具体的な指標については相場に影響を与えるものが数多くありますが、その中でも世界最大の経済大国であるアメリカ合衆国の経済指標は、その一国にとどまらず、世界全体の市場相場へ影響を与えることが多く、情報をしっかりつかむことが大切です。

相場変動について、関連する経済指標の数値結果によって大きく変動することがありますので、商品先物のみならず、投機的な為替取引や株式取引などを行っている場合には、値動きに大きな影響を与えることが予想される経済指標の発表日時をしっかり把握し、場合によってはリスクヘッジを拡大するなどをして、値動きの変化に対応できるように準備しておくことが要求されます。

そのためにも、事前に金融機関や専門家が発表する予想を把握しておくことが重要です。

情報ベンダーの発表する経済指標予想はその時点で市場での価格に織り込まれます。これをコンセンサスと呼びます。このコンセンサスのもとに実際の発表に至るまでの値動きが起こります。

しかし、実際に発表される値動きについて予想とどの程度のギャップがあったかによって、発表後の値動きの方向だけではなく、その振れ幅も大きく異なってくるのです。

例えば、経済指標予想の方向性はあっていたがその程度が異なっていた場合には、予想以外の要因が存在することを恐れて取引自体が鈍化する傾向があります。

逆におおよそ予想通りであったけれどもプラスマイナスが逆であった場合には取引が活性化される場合があります。予想していた要因がまだ発現しておらず、時間差で予想通りの動きから導かれる結果を期待しての取引が増加するのです。

このように、経済指標は市場の雰囲気を作り上げるものとして重要であり、多くの投資家の目に触れるからこそ、その雰囲気が実際の値動きとして顕在化する場合を考えねばならないのです。

その他影響を与えるものは何か

さて、経済指標は基本的には市場全体の雰囲気を決定する要因となりますが、それ以外に銘柄ごとに大きな意味を持つ情報も存在します。

ここではおおよその分野に分けて解説していきますが、まずはおおよその商品に共通するものについて解説します。

商品先物の場合、多くは国際商品になりますので為替動向については注意を払う必要があります。

円建での購入を行う場合、円安=商品高、円高=商品安となり、これは輸入品の価格変動と同じ向きになっていることを覚えておくと良いでしょう。

逆に、国内取引しか行われないコメ相場や、日本にしか存在しない小豆相場に為替の影響はありません。

各論で紹介しますが、産出国の情勢は為替以上に影響を与える可能性が高い要素です。当然扱う銘柄により注意すべき国や地域は異なりますが、場合によっては複数の地域を注視する必要もあります。

このように、自分が取引するものに応じて集めるべき情報は変わってきます。

では、おおよその部門について解説していきます。

まずは石油関連についてです。石油は「原油」「ガソリン」「灯油(暖房油)」などに分かれますが、大元である原油価格の動向にまず依存しますので、関連する商品の相関係数は正に大きくなりがちです。

石油だけでなく、地下資源である商品については生産国が限られますので、その生産国の政治情勢や近隣との地政学的要因が価格に跳ね返る場合がほとんどです。

その中でも石油は長く情勢不安の続く中東と、現在不安定化を余儀なくされているロシアが大きな産出量を占めているため注意が必要です。

また、OPECがその産出の40%を占めているため、その動向にも要注意が必要です。

意外に思われるかもしれませんが、生産面からの要素ではなく需要面からの価格要素としての天候の影響が考えられる商品でもあります。

灯油に関しては主に暖房のために使われますので冬季の気温が低ければ価格は上がることになりますし、ガソリンについては夏季の晴れ日が多いほど行楽のための移動距離が大きくなり需要が増大することで価格が上昇することが知られています。

同様に地下資源である貴金属類はどうでしょうか。商品先物として扱われるのは「金」「プラチナ」「銀」などでしょう。最近は「パラジウム」という化学的性質がプラチナに近い金属も取り扱われる場合が増えています。

意外に思われるかもしれませんが、この貴金属は装飾品としての需要もさることながら工業製品。特に自動車の排気ガス浄化触媒としての需要が大きく、途上国の発展と景気に応じた自動車需要と正の相関をすることが知られています。

このような貴金属もまた産出国が限られます。「金」「プラチナ」さらにパラジウムを含む希少金属についてはアフリカ、特に南アフリカ共和国の産出が多く、ついでロシアの産出が大きく、その情勢が大きな影響を与えます。

それでは農産物について見ていきましょう。

農産物の考えられる影響としてはまず第一に天候の影響があります。商品によって異なりますが、天候の動向についてしっかりと情報を集めておく必要があります。

また、その取引の時期についても情報が重要です。地下資源や工業的な分野と異なり農産物は季節により増産減産が周期的にあり、その生産面の都合により値動きが大きい場合もあります。

この季節変動については、赤道を挟んで北半球の産出国と南半球の産出国で逆の動きになることも覚えておきましょう。

さらに、「とうもろこし」や「大豆」は食用となるだけではなく、家畜飼料になる割合も多く、家畜頭数の変動が需要変動として価格に影響を与える場合もあります。

このように、大きな値動きを引き起こす要因に加えて、銘柄ごとの個別要因をしっかり見極められるだけの情報を集め、選別することが重要となるのです。