先物取引と先渡し取引の違い
投資家のみなさんなら「先物取引」という言葉は既に知っていることでしょう。しかしながら、この先物取引に参加をしている人の中には、認識を誤ったままチャレンジされている方も非常に多いと聞きます。
それは、先物取引と似た手法の「先渡し取引」と混同をしてしまう人が多いからです。
事実、先物取引と先渡し取引には、共通する部分もあります。それは両者ともに、“将来のある期日をにらんで取引をする”ということです。
どちらも、取引が成立をした時点では、何も受け取ることはできません。あくまでも約束をした期日まで待たなければならないということです。
では、それぞれの違いについて見ていきましょう。
先物取引とは、取引期間が決まっており、期間内に売り買い可能、期間終了時点の価格で強制的に決済する取引のことを言います。
株取引の場合、一般的には取引時間は決まっていますが、株式を強制的に約定させる必要はありません。これが先物と株取引との大きな違いです。
一方、先渡し取引とは、相対で行われる“予約取引”の事です。期間内に取引して期間が終了すると終了時の価格で決済し、店頭取引で現物決済を行う、という所までは先物取引を同じですが、細かい違いがあります。
先物取引は差金決済がメインであるため、現物決済ではなく、商品を受け渡しする必要はありませんが、先渡しは原則として現物決済を行う必要があり、商品が必要相対取引であるので条件を自由に決められる、という所です。
“先渡し取引は予約取引”という表現を使ったのは、相対取引で予め通貨や商品のレート価格で売買の予約を行うためです。
普通の先物取引なら、一定の期間が過ぎた後、先に予約した通貨や商品を売買します。予約決済であるため、売買のための通貨や商品が必要です。
一方で先渡し取引は相対取引であるため、取引所のような厳密なルールはなく取引条件を自由に決められます。取引の対象、単位、決済期日に制限がないため、自由度の高い取引と言えます。
自由度が高い反面、取引がスムーズにいかないリスクを抱えています。先物取引は取引所によるルールがある分、取引は低リスクです。
しかし先渡し取引は、相対取引による自由度の高さがある反面、自由度の高さによるリスクがあるのです。
似たように感じられる両者の取引ですが、取引場所や取引の自由度、それに伴うリスクが異なる、と、意識すると覚えやすいと思います。
限月とは
次に、商品先物取引が分からなくなってしまうもうひとつの大きな原因、「限月(げんげつ)」についてご説明します。
この「限月」というのは“受渡し契約の最終決済月”のことを言います。商品ごとに違いますが、全ての商品が6限月制で、取引期間は最短で半年~最長で1年となっています。金の場合なら、偶数月に限月が設定されており、1年となっています。
受け渡しは、この限月ごとに行われ、それぞれの限月ごとに納会日つまり、最終決済日が定められています。そのため、“買いから入っても、売りから入っても1年以内に決済しないといけない”ということです。
要は、株のように「思っていたのと値段が反対にいった」「思うような利益が出ていない」からと言って塩漬け状態などにはできないということです。
予想が外れたとしても、1年以内のどこかで必ず決済するので、損失であっても必ず確定しなければなりません。
仮に、相場を読み違えたとして、損失を取り戻そうと意地になって取引をし続けると、想像以上に大きな損失を出してしまうこともあります。
ただし、悪いことだけではありません。実際は、株と違って値動きはそれなりにありますし、値下がりを利益として取ることもできるので、商品の値段が上がり続けているときでも、下がり続けているときでも利益を取ることができます。
また、物の値段ですので、商品の価格自体が0円になることは実際にあり得ませんし、株のように塩漬けにしている間に会社が倒産して0になってしまった、ということもありません。
10年、20年にも渡って損失を出しっぱなしにするということもまず、ありません。
また、取引の中には限月を利用したものもあります。わざと同じ商品の中でも違う限月を取引して、リスクを分散させたり、その価格差を利益として売買するやり方もあります。
そのような取引を総称して「鞘取り(さやとり)」と言います。鞘取りには、色々種類があり、今述べた方法はスプレッド、同市場、異銘柄の場合はストラドル、異市場間の場合はアービトラージと呼んだりします。
これらは、それぞれの商品によって需要時期が異なることから成り立ちます。
みなさんの身近で一番分かりやすいのは、例えば石油製品です。ガソリンは主に行楽シーズンやロングバケーション時、おおよそ春から夏にかけて需要のピークを迎えます。灯油は暖房用に使われますので、冬に需要が伸びます。
一見、北半球、南半球とあるから関係無さそうに感じるかもしれませんが、先進国はほとんど北半球にあるため、その需要も日本と同じように伸びるのです。
つまり、夏の時期にはガソリンの需要が高いので、買い、灯油は不需要期ですので、売りといったように逆の建玉をすることで、リスクを分散しつつ、その価格差を利益として取っていく、という方法です。このように、限月を上手く利用すると取引の幅が広がります。
商品先物は現金以外も資金にできる
最後に、“商品先物は現金以外も資金にできる”ということについて、みなさんにお伝えしておきたいと思います。
信用取引や先物取引等において知っておいてもらいたいのが、「反対売買(はんたいばいばい)」です。これは、買った銘柄を売ること、または空売りした銘柄を買い戻す売買注文のことを言います。
反対売買により現在のポジション(建て玉と言います)を解消することを、差金決済とも呼びます。
信用取引(制度信用取引)や先物取引の場合、買い建て・売り建てしたポジションについては一定の期日で決済をしなくてはならないようになっています。
そのため、期日までには買い建てした銘柄は必ず売却し、売り建てした銘柄は必ず買い戻す必要があります。
この際に行われる、以前行った取引とは反対の取引のことを反対売買と言います。尚、反対売買による決済は、現物の受渡しや売買代金の総額では行われず、売買代金の差額を受渡すことによって行われます。
これ以上の銘柄売買をおこなわずに取引を終了し、現金化してうけとることを最終決済といいます。最終決済時には建玉は全て解消していることになります。