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近所の回らない寿司屋に行った時の話です。

その日は、カウンター席ではなく、奥の座敷に通されました。

若い女性店員が注文を取りに来たので、筆者は「握り寿司のセット」を頼みました。

彼女の説明によれば、そのセットにはお吸い物が付いていないようなので、オプションで「味噌汁」を注文することにしました。

事件は、その直後に起こりました。女性店員いわく、

「味噌汁は、先にお持ちしてもよろしいですか?」

「・・・・・・(絶句)

「ビールか!」 どこの世界に、食前酒感覚で味噌汁を飲むやつがいるんだ?)

耳を疑いつつ、半ば呆れながらも「いや、寿司と一緒で」と冷静に訂正し、その日はなんとか無事に食事を済ませました。

実は、この話には後日談があります。

数ヶ月後、何気なくネットで地域のニュースを眺めていると、ふとある記事が目に留まりました。

それは、その寿司屋が「ノロウイルスによる食中毒を出し、役所から営業停止処分を受けた」という内容のものでした。

もちろん、あのハチャメチャな接客とノロウイルスには直接的な因果関係はないわけですが、あの接客クオリティを体験していた筆者は、“さもありなん”と感じてしまったわけです。

さてさて余談が長くなりましたが、今日は、そんな彼女にもぜひ見てもらいたい、基本の接客術として使えそうな「コツ・マナー・心得・言葉遣い」等々をまとめてみました。

 


まずは基本の心構え!
接客に大切な「5つのS」

Smile スマイル・笑顔

接客サービスで最も重要な要素は、当たり前のようですが「笑顔」です。

笑顔はお客さんの気持ちを和ませ、良好な関係を築く基礎になります。

店のイメージにも関わってくるので、とても重要です。

Speed スピード・早さ

店員の対応や動きがテキパキとしていることを指します。

お客さんは「モタモタされる」ことを嫌うため、待たせない接客を常に心がける必要があります。

Sincerity シンセリティ・誠実さ

やや難しい単語ですが、「誠実」「真心」といった意味です。

どんな接客サービスも、心がこもっていなければお客さんには伝わりません。

Smart スマート・身だしなみ

接客サービスにおける身だしなみは、「清潔さ」がまず第一に大切です。

業種・業態、店舗コンセプトなどにより基準は異なりますが、「清潔さ」を大前提に“プロらしい”スタイルが求められます。

Study スタディ・学習

商品知識が豊富な店員さんに対応してもらうと、お客さんは安心してサービスを受けることができます。

接客に関しても、上司や先輩からの指摘には素直に耳を傾け、“次の機会”に積極的に活かしていこうという姿勢が大切です。

 


接客サービスの定番フレーズ!
8大用語「あしかもおおいし」

「あ」
ありがとうございます

感謝を伝える言葉です。

主には来店してくれたことへの感謝。

注文を受けたとき、気遣いをしてもらったときの対応などにも使えます。

実例:「毎度ありがとうございます」

「し」
少々お待ちください

何らかの理由で、お客さんに待ってもらう場合に使う言葉です。

「大切な時間を頂戴している」という気持ちを込めることが大事です。

実例:「少々お待ちくださいませ」

「か」
かしこまりました

お客さんに何かを頼まれたときの返事として用います。

「確実に承りました」という意思を表す言葉です。

「了解しました」「分かりました」はNGです。

「も」
申し訳ございません

お客さんに迷惑をかけたり、ミスをしてしまったりしたときに使う、お詫びのフレーズです。

心を込めて、落ち着いて言う必要があります。

「すみません」「ごめんなさい」はNG

「お」
お待たせいたしました

お客さんはたとえ一瞬でも「待って」くれています。

それに対するお詫び・感謝を表す言葉です。

程度によって、お詫びの気持ちを強めに

実例:「大変お待たせいたしました」

「お」
恐れ入ります

基本はお客さんが何かをしてくれたことに対する感謝の言葉です。

またお客さんに何かをお願いする場合の「クッション言葉」としても有効です。

実例:「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「い」
いらっしゃいませ

お客さんをお迎えする挨拶です。

「来店の感謝」の意味と、「ぜひいらしてください」という呼びかけの意味があります。

目を見て、笑顔で、歓迎の気持ちを込めて使います。

「し」
失礼いたします

お客さんに近づく、前を横切るようなときに一言添えて使う言葉です。

人は一定の距離内に他人が黙って近づいてくるのを嫌うため。

実例:「失礼いたします。こちらメニューです」

 


お客様との会話をスムーズに!
接客トークの心得「かきくけこ」

「か」
感じよく

初めて訪れる場所、初対面の相手に対しては、誰でも緊張感や警戒心を抱くものです。

お店での接客の場面においても同様です。

お客さんが店に入って、まず目に留まるのが店員の表情。自然な笑顔で迎えられれば安心感をもてますが、そうでない場合は、お客さんは不安を感じたり、不快に思ったりします。

店員の感じのいい笑顔は、お客さんの“心のハードル”を下げる鍵なのです。

最低でも1日1回は鏡に向かい、口角を引き上げた自然な笑顔の練習をしましょう。

この際、口元だけでなく、目元の「笑顔」も意識することがポイントです。

「き」
聴きやすい声で

店員の話し方(声)も、お店の第一印象を決定する大きな要素です。

同じ「いらっしゃいませ」でも、明るい声で言われるのと、暗い声で言われるのでは、聴き手が受ける印象は全く異なります。

一般に、明るい声を出すには、「ドレミファソラシド」の「ソ」の音で発声するとよいとされています。

具体的な「ソ」の音階というよりは、真ん中(=普通レベル)よりも「少し高め」を意識して発声するということではないでしょうか。

また人は説明に夢中になると、つい早口になってしまうものですが、常に“お客さんにとって聞き取りやすいスピード”を意識して話す必要があるでしょう。

「く」
区切って話す

店員さんは商品知識をもったプロであるため、お客さんから質問された際、ついつい長く一方的に話してしまいがちです。

しかし、一方的な説明は、専門的で難しい印象を与えてしまいます。

適度に説明を区切ることで、相手の反応を見ながら情報の過不足を確認し、話を続けるべきか否かの判断をするようにしましょう。

「いかがでしょうか?」「ご不明な点はございますか?」などの質問でいったんお客さんに会話のバトンを渡すことで、相手の欲しがっている情報を探ることができます。

お客さんとの“会話のキャッチボール”を心がけることがポイントです。

「け」
敬語は正しく

店員の敬語といって思い浮かぶのは、いわゆる“バイト敬語”“バイト言葉”と呼ばれるものです。

「以上でよろしかったでしょうか?」「お箸のほう、お付けしますか?」「こちら、おしぼりになります」「1万円から、お預かりいたします」などなど。

個人的には“まあそれもいいだろう”と思うのですが、一方で文法的に明らかに間違っている敬語には、やはり違和感を覚えてしまいますね。

(誤)「伺ってください」→(正)「お尋ねください」(誤)「いただいてください」→(正)「召し上がってください」

(誤)「いかがいたしますか?」→(正)「いかがなさいますか?」

(誤)「頑張らさせていただきます」→(正)「頑張らせていただきます」

(誤)「読まさせていただきます」→(正)「読ませていただきます」「拝読いたします」

「こ」
言葉を柔らかく

お客さんの要望に応えられないとき、または意に沿わないお願いをしなければならないときなどに、事実をできるだけ柔らかく伝える方法として「クッション言葉」と呼ばれるものがあります。

この「クッション言葉」を一言添えることで、お客さんへの配慮の気持ちが伝わります。

お断りする
「申し訳ございませんが」「あいにくですが」「せっかくですが」「申し上げにくいのですが」お願いする
「恐れ入りますが」「ご面倒ですが」「お手数をおかけしますが」「お差し支えなければ」

申し出る
「よろしければ」「何かお力になれることがございましたら」「私にできることがございましたら」

 


冷静な初期対応がポイント!
クレーム対応の「さしすせそ」

どれだけ丁寧な接客を心がけていても、どうしても発生してしまうことがあるのがクレーム事案です。そんな場合には、以下の「さしすせそ」を念頭に冷静に対処しましょう。

「さ」
最善を尽くす

あなたにできる最善の対応をしましょう。相手の心情を考慮し、「不快な思いをさせたこと」に対して、まずはお詫びを。

「し」
知ったかぶりはしない

即答を求められてしまう場合も多々ありますが、いったん詳細を調べてから対応するという余裕をもつことも大事です。

「す」
するな議論

クレームへの反論は危険です。謙虚な姿勢で、相手が不快に感じている状況や、苦情・要望の内容をしっかり把握しましょう。

「せ」
誠意をもって

苦情に対して心のこもっていない表面的な対応をしても、相手の気持ちを逆なでし、かえって火に油を注ぐ結果になります。

「そ」
即時、報告する

すぐに上司や担当者、関連部署に報告しましょう。事案を共有化することで、適切な対処や、再発の防止にもつながります。

 


おわりに

いかがでしたでしょうか?

上で紹介したような内容は、接客・販売の仕事に限らず、多くの企業のマナー研修や、職場のマニュアル等にも取り込まれているのではないかと思います。

多くの職場のマニュアルに共通して登場するということは、それが接客サービスの基本として、広く社会的に認知されているという証拠でもあります。

まずは基本のコツをしっかりマスターして、さらなるレベルアップを目指していきましょう。