固定金利選択型は、借入れ当初からの一定期間は金利も返済額も変わらないため、見直すならば固定期間終了後と考える人は少なくありません。

しかし、固定期間終了時が見直しのベストタイミングとは限りません。どのように借り換えするのが効果的なのでしょうか? 

固定金利選択型で借りている人の借り換えを見てみましょう。

まずは現状の確認をしよう

借り換えを考える前に、まずは現在の住宅ローンの借入れ条件について確認しましょう。

現在の適用金利や借入残高、残り借入期間はもちろん、残り固定期間、固定期間終了後の金利引下げ幅についても必ず確認しましょう。

<借入れ中の住宅ローンの確認事項>
確認事項
借入残高 2,500万円
残り借入期間 28年
残り固定期間 3年
現在の適用金利 2.75%
固定期間終了後の金利引下げ幅 -1.00%

中でも、当初固定期間が終わった後の金利引下げ幅を確認することが重要です。

固定金利選択型の金利引き下げには2つのタイプがあります。当初の固定期間の引下げ幅が大きく、固定期間終了後は引下げ幅が小さくなるもの、借入期間中はずっと同じ引下げ幅が続くものがあるので、どちらのタイプか確認しましょう。

引下げ幅や引下げ期間などは、住宅ローンの契約書などに記載されています。不明な場合は、借入れ中の金融機関に確認しましょう。

借り換え効果があるかを確認するには

固定金利選択型の借り換えは、借り換え前後の金利リスクを同じ条件にして比べることで借り換え効果が明らかになります。現在のローンの残り固定期間と同じ固定期間のローンで比較してみましょう

例えば、固定期間が10年の固定金利選択型のローンで7年経過しているとすれば、残りの固定期間は3年です。下記は、残りの固定期間と同じ年数の固定期間3年のローンに借り換えた例です。

<固定金利選択型から固定金利選択型への借り換え例>

残り借入期間28年、借入残高2,500万円、元利均等返済、ボーナス払いなし
(金利変動がない場合)

適用金利 毎月の返済額 固定期間終了後の
金利引下げ幅
固定期間終了後の
返済額
(変動金利型へ移行)
総返済額
①借り換え前 2.75%
(10年固定
残り固定期間3年)
106,772円 1.00% 92,295円
(適用金利:1.475%)
31,532,292円
②借り換え後 0.8%
(3年固定)
83,074円 1.30% 86,903円
(適用金利:1.175%)
29,061,564円
差額①-② 23,698円 5,805円 2,470,728円

上記の例では、借り換え後の金利が大きく下がるため、毎月の返済額が約24,000円下がります。

また、固定期間終了後に変動金利型に移行したとすると、その時点の店頭金利は同じですが、金利引下げ幅は借り換え前よりも大きくなるため、毎月の返済額は約6,000円、借り換え後の方が下がります。総返済額で見ても約250万円の軽減です。

このように同じ時期に同じように金利が変わるものと比較して毎月返済額や総返済額を抑えることができるのであれば、借り換え効果がある、と考えられます。

ただし、最終的な借り換え効果は、諸費用の含めた総額で確認することも大切です。

実際に借り換えをするときには、今後の支出に合わせて固定期間を変えて借り換える方法もあります。

例えば、子どもが現在中学生で、大学を卒業するまでの約10年間は返済額を一定にしておきたいなら、固定期間が10年の住宅ローンなどに借り換えるのもよいでしょう。

固定金利選択型から変動金利型への借り換え

一般的に、金利は変動金利型が最も低い水準です。変動金利型への借り換えでは、当初の返済額は下がるものの、今後金利が上昇した時に返済額がどれくらい上がるのかを借り換え前に確認しておくことが大事です。

<固定金利選択型から変動金利型への借り換え例>

残り借入期間28年、借入残高2,500万円、元利均等返済、ボーナス払いなし
・借り換え前:固定金利選択型(10年固定)、残り固定期間3年
・固定期間終了後は完済まで5年固定を選択
・金利引下げ幅1.0%、金利が5年毎に0.5%ずつ上昇した場合

適用金利 毎月の返済額 総返済額
1~3年目(残り固定期間) 2.75% 106,772円 36,157,590円
4~8年目 2.20% 100,371円
9~13年目 2.70% 105,102円
14~18年目 3.20% 108,831円
19~23年目 3.70% 111,443円
24~28年目 4.20% 112,816円

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・借り換え後:変動金利型、金利引下げ幅1.7%、金利が5年毎に0.5%ずつ上昇した場合

適用金利 毎月の返済額 総返済額
1~5年目 0.78% 82,793円 30,609,463円
6~10年目 1.28% 87,510円
11~15年目 1.78% 91,364円
16~20年目 2.28% 94,263円
21~25年目 3.28% 96,118円
26年目以降 3.78% 96,849円

借り換え前を見ると、固定期間終了後に金利の低い5年固定に移行したとしても、金利が0.5%ずつ上昇すると14年目以降に現在の返済額を上回ります。

一方、変動金利型に借り換えると適用金利が低くなり、借り換え後の毎月返済額は約24,000円下がります。仮に5年毎に0.5%ずつ金利が上昇しても返済額は借り換え前のようには増えませんし、総返済額も引き下げることができます。

ただし、変動金利型は半年に一度、金利の見直しがあるため、急激な金利上昇があると毎月の返済額や総返済額は、上記の返済例を上回る可能性もあります。

金利が上昇し返済額が増えた時に備えて毎月の支出を見直し、家計に余裕を持たせておくことも大切です。

全期間固定金利型への借り換え

固定金利選択型は、固定期間終了時に金利が上昇していれば返済額が増えます。金利上昇リスクをなくして返済額を確定させたい場合は、全期間固定金利型の住宅ローンへの借り換えを検討しましょう。

<固定金利選択型から全期間固定金利型への借り換え例>

残り借入期間28年、借入残高2,500万円、元利均等返済、ボーナス払いなし(金利変動がない場合)

適用金利 毎月の返済額 固定期間終了後の
金利引下げ幅
固定期間終了後の返済額
(変動金利型へ移行)
総返済額
①借り換え前 2.75%
(残り固定期間3年)
106,772円 1.00% 92,295円
(適用金利:1.475%)
31,532,336円
②借り換え後 1.67%
(全期間固定金利型)
93,202円 93,202円 31,315,872円
差額①-② 13,570円 -907円 216,464円

上記例では、借り換えで金利が下がり、毎月の返済額が約13,000円軽減されます。

このまま金利が上昇しなければ、借り換え効果はあまりありませんが、固定期間終了後に変動金利型を選択し、将来金利が上昇すれば返済額が増えるおそれがあります。

このような心配を避けるためであれば、結果的に返済額はあまりかわらなくとも、全期間固定金利型への借り換えは有効です。

なお、借り換えには諸費用が必要となるので、その分も含めて借り換えを検討しましょう。

また、フラット35の場合は団体信用生命保険の保険料が別途必要になります。団体信用生命保険の保険料も含めて、借り換え後の総返済額を減らせるかどうかを検討しましょう。

通常、固定期間選択型の固定期間中は金利タイプの変更を行うことができませんが、借り換えすることであらためて金利タイプを選択することができます。

残りの固定期間に関係なく、今後の生活や家計支出、金利状況などを考えて住宅ローンの見直しを検討しましょう。