住宅ローンの借入時に加入する保険が「団体信用生命保険」です。加入することがローン利用の条件になることが多いため、借入者にとっては大切な保険であるといえます。

団体信用生命保険の仕組みや保障内容、種類などを見ていきましょう。

団体信用生命保険の概要

団体信用生命保険(以下、団信)は、住宅ローンの借入者が万一の時にローンの残高が全額清算される保険です。住宅ローン専用の生命保険ともいえます。その概要から見ていきましょう。

団信の仕組み

ローン契約者が死亡した時などにローン残高相当額を保険会社が保障しますが、保険金の支払われ方は通常の生命保険などとは異なります。

保険の支払いが決定されると、保険会社から金融機関に直接保険金が支払われ、契約者の支払い義務が免除されます。。

このように、ローン借入者が万一の時にローンが残って家族が返済で困らないよう、保険金でローン残高を清算し保障するのが団信の役割です。

団信の種類

団信には大きく分けて3つのタイプがあると言われています。

  • 一般団信
  • ワイド団信(緩和型団信)
  • 疾病保障団信

一般団信

一般団信とはローン契約者が死亡したり、高度障害状態になった場合を保障するものです(特約で医師から余命6ヶ月の診断を受けた時も保障される場合があります)。民間の住宅ローンを利用する際は無料で付帯されます。

ワイド団信(緩和型団信)

ワイド団信は、一般団信と保障内容は同じですが、加入条件を緩和したものです。過去に特定の疾病を患い一般団信に加入できない時に利用します。

疾病保障団信

疾病保障団信は、一般団信の保障だけでなく、病気や怪我で就業不能状態になった場合を保障するものです。こちはら、各人のニーズに合わせて任意で付加するのが一般的です。

<団信の種類と保障内容>
種類 保障内容/特徴 保険料
一般団信 死亡・高度障害 基本的に不要(金利に含まれる)
*フラット35は毎年保険料を支払い
ワイド団信 一般団信と保障内容は同じ。一般団信より加入条件が緩和。 金利に0.2~0.3%程度上乗せ
疾病保障団信 死亡・高度障害に加えて
がん、脳卒中、急性心筋梗塞
高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎などの保障
金利に0.1~0.3%程度上乗せ*負担無しの金融機関もあり

 
ではそれぞれの団信を詳しく見ていってみましょう。

一般団信

団信の内容は様々ですが、基礎的な保障内容で持っとも広く利用されているのもが「一般団信」と呼ばれるものです。

一般団信で保障されるのは、ローンの借入者が死亡または高度障害に該当した時です。

民間の住宅ローンを利用する場合、この一般団信に加入するための保険料は不要です。民間住宅ローンでは、金利の中の保険料相当分が含まれており、一般団信に加入することがローンを組む条件になっている場合がほとんどです。

ただし、フラット35では、団信の利用が必須ではなく任意加入のため、加入する際には金利負担とは別にローン残高に応じた保険料を個人で支払う必要があります。

 

団信への加入 保険料
民間の住宅ローン 必須(団信に入らなければ住宅ローンが組めない) 無料(金利に含まれる)
フラット35 任意(団信に入らなくてもよい) 自分で払う

 

団信は誰でも加入できる?

団信は、申し込めば誰でも加入できるのでしょうか? 団信も生命保険である以上、通常の生命保険と同様に健康状態についての告知が必要です。

告知内容は、団信を引き受ける保険会社により多少の違いはありますが、一般的には以下のような内容です。

<団信の告知内容>
1 最近3ヵ月以内に、医師の治療(診察・検査・指導を含む)や投薬を受けたことがあるか
2 過去3年以内に、病気(がん、心筋梗塞、脳卒中、胃かいよう、糖尿病、精神病など)で手術を受けたことや2週間以上の医師の治療(診察・検査・指導を含む)や投薬を受けたことがあるか
3 手・足の欠損または機能に障害があるか。または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害があるか

上記の告知内容に該当するものがなければ、原則として団信に加入できます。告知がある場合には正直に記入しましょう。告知を正しく行わないと告知義務違反となり、万一の時に保険金が支払われないこともあります。

また、告知があっても、服用中の薬の種類や治療内容・治療期間などを申告し、必要に応じて医師の診断書を提出することで加入できることがあります。

民間の住宅ローンでは、基本的に団信に加入することが借入れの条件となっています。

つまり、健康上の理由で団信に加入できないと借入れができません。日頃から健康管理に留意しておくことも、ローンの借入れを確実にするために大切なことです。

ワイド団信(緩和型団信)

一般団信に入れない時はどうする?

<通常の団信には入れない時は>

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一般団信に加入できない人向けに、保険の引受基準をゆるくした「引受基準緩和型団体信用生命保険」を取り扱う金融機関があります。引受基準緩和型団体信用生命保険は「緩和型団信」や「ワイド団信」などとも呼ばれます(以下、ワイド団信)。

健康上の理由で一般団信に加入できなかった人でも、このワイド団信に加入できる可能性があります。ワイド団信の加入条件の明確な基準は開示されていませんが、例えば、「高血圧症」「糖尿病」「肝機能障害」の場合でも加入が可能な場合があるなど、引受範囲が広くなっているため、審査は通りやすくなっています。

ただし、保険料相当分として、一般的に0.2~0.3%程度金利に上乗せされます。また、利用できる年齢にも違いがあり、緩和型団信を取り扱う金融機関のほとんどは、借入時の年齢の上限が50歳未満となっている場合もあるので注意が必要です。

ワイド団信(緩和型団信)を提供しているネット銀行

インターネット銀行の中でワイド団信(緩和型団信)を提供しているのは、auじぶん銀行、イオン銀行、ソニー銀行です。ワイド団信に加入するためにはそれぞれ指定の金利負担が必要で、年齢制限もあります。

銀行名 保険料(金利上乗せ分) 年齢制限
auじぶん銀行 年0.3% 満65歳まで
イオン銀行 年0.3% 満50歳未満
ソニー銀行 年0.2% 65歳未満

ワイド団信にも加入できない場合

ワイド団信にも加入できない時はどうするか? この場合は、団信への加入が必須ではない「フラット35」の利用が考えられます。

とはいえ、団信なしでは、万一の時に家族にローン返済が残りますので、何らかの返済対策は必要です。

例えば、すでに加入中の生命保険があれば、ローン返済に備えられるだけの保障があるのか確認しましょう。

足りない場合は、告知なしで健康状態に関係なく加入できる「無選択型保険」があります。

ただし、保険料は高めで、加入年齢や保険金額に制限があり、取り扱う保険会社も限られています。事前に保険代理店などに問い合わせ、取扱いの有無や保険料を確認しましょう。

さらに、万一の時に返済できるだけの貯蓄はあるのかも確認しましょう。

不足するなら、借入後は十分な貯蓄ができるよう収入を増やすこと、家計改善で支出を抑えることなども検討材料です。

これらの対策が難しければ、借入額を下げるなどして、万一の時の返済負担を少しでも抑えておくことが必要です。

長期間返済の続く住宅ローンでは、返済途中で借入者が病気や事故、自然災害などで万一のことが起きる可能性はゼロではありません。

万一の時でもローン返済が困難にならないよう、団信への加入と共に十分な対策をして借入れをしましょう。

疾病保障団信

死亡・高度障害時に保障される一般団信の他に、保障範囲に「がん・脳卒中・急性心筋梗塞」を加えた3大疾病保障付き団信などと呼ばれるものがあります。

死亡時に加え、3大疾病で一定の要件を満たすとローン残高が清算されます。

また、7大疾病や8大疾病に保障範囲を広げた団信を取り扱う金融機関もあります。

これらの団信では、一定期間病気で働けない状態が続くと、毎月返済額に相当する額が保険金として支払われたり、一定期間を過ぎても働けない状況の場合にはローン残高が一括返済されるなどの保障内容となっています。

ただし、保障範囲の広い団信では、保険料として金利に0.3%程度の上乗せや、ローン残高など借入内容によって保険料を支払う場合があります。

ネット銀行の疾病保障団信

ここでは4つのネット銀行が提供している疾病保障団信を比較してみます。提供する会社によって保障範囲と保障適用条件が異なりますので、どのような違いがあるかざっと頭に入れておくと良いでしょう。

auじぶん銀行

auじぶん銀行は「がん50%保障団信」「がん100%保障団信」「がん100%保障団信プレミアム」の3つを提供しています。
※新団信は2023年7月1日以降お借入れの方に適用

「がん50%保障団信」を無料で提供しています。がんの進行程度に関わらず、ガンと診断確定されれば、住宅ローン残高の半分が保障されます。

「がん100%保障団信」はガンの進行程度に関わらず、ガンと診断確定されれば、住宅ローン残高の全額が保障されます。

「がん100%保障団信プレミアム」はがん診断+4つの重大疾病で住宅ローン残高の全額が保障、さらにがん関連の給付金も充実しています。

「がん100%保障団信」「がん100%保障団信プレミアム」ともに保障料は金利に上乗せされます。

ソニー銀行

ソニー銀行は「がん50%保障」「がん100%保障」「3大疾病保障特約」「生活習慣病団信」を提供しています。

「がん50%保障」はガンと診断確定されれば、住宅ローン残高の半額が保障されます。保障料は無料です。

「がん100%保障」はガンと診断確定されれば、住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は金利0.1%金利上乗せです。

「3大疾病保障特約」はガンと診断確定、急性心筋梗塞および脳卒中で入院60日以上か手術を受ければ住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は金利0.2%上乗せです。

「生活習慣病団信」は、悪性新生物(皮膚のその他の悪性新生物)、上皮内新生物、糖尿病、心疾患、高血圧性疾患、大動脈瘤および解離、脳血管疾患、腎疾患、肝疾患、慢性膵炎によって、180日以上継続して入院した場合に住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は金利0.2%上乗せです。

イオン銀行

イオン銀行は「がん100%保障」「8大疾病保障」を提供しています。

「がん100%保障」はガンと診断確定されれば、住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は金利0.1%金利上乗せです。

「8大疾病保障特約」はガンと診断確定した場合、急性心筋梗塞および脳卒中で所定の状況が60日以上継続した場合、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎で12ヶ月以上就業不能状態が継続した場合に、住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は金利0.3%上乗せです。

住信SBIネット銀行

住信SBIネット銀行は「全疾病保障」「がん診断給付金(女性限定)」を提供しています。。

全疾病保障」はあらゆる病気や怪我で就業不能状態に陥った場合、「月々のローン返済に対する保障」もしくは「ローン債務残高に対する保障」してくれます。就業不能状態が継続する場合、一定の期間は月々のローン返済を肩代わりしてくれ、規定の期間を超えて就業不能状態が続く場合は住宅ローン残高の全額が保障されます。保障料は無料です。

「がん診断給付金(女性限定)」は、初めてガンと診断された場合に、30万円のお見舞金が保険会社からローン借入者に支給されます。こちらの保障料も無料です。

 

ネット銀行の団信を比較
銀行名 保険料
auじぶん銀行 がん50%保障団信 ⇒ 無料
がん100%保障団信 ⇒ 年0.05%金利上乗せ
がん100%保障団信プレミアム ⇒ 年0.15%金利上乗せ
※新団信は2023年7月1日以降お借入れの方に適用
ソニー銀行 がん50%保障 ⇒ 無料
がん100%保障 ⇒ 年0.1%金利上乗せ
3大疾病保障特約 ⇒ 年0.2%金利上乗せ
生活習慣病団信 ⇒ 年0.2%金利上乗せ
イオン銀行 ガン保障特約 ⇒ 年0.1%金利上乗せ
8疾病保障 ⇒ 年0.3%金利上乗せ
住信SBIネット銀行 全疾病保障 ⇒ 無料
がん診断給付金(女性限定) ⇒ 無料

 

実際の負担額を計算してみよう

3000万円を30年ローンで借入した場合、上乗せ金利によって増加する負担額は
年0.1% = 約46万円
年0.2% = 約92万円
年0.3% = 約137万円
です。

具体的な金額になるとイメージがしやすくなります。

いざという時のために保険に入っていると安心できますが、その安心のためにいくら支払うべきなのか、実際のコストを意識しながら住宅ローン選びに役立てましょう。

 
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