住宅ローンの借入額は、金融機関が貸してくれる額だからといって、実際に返せる額であるとは限りません。同じ年収でも、家族構成や将来の支出などで、返済できる額も異なるからです。

自分にとっての「返せる借入額」はどう考えたらよいのでしょう? また、将来の家計の変化をどう想定し資金計画すべきなのでしょうか?

「返せる借入額」の基本的な考え方は?

「返せる借入額」というのは最初からローンの最終返済月まで、滞ることなく返済しきることができる金額のことだと考えましょう。毎月支払える金額をベースに、何年で返すか、どの金利タイプにするかの順で考えていきます。

毎月返せる額はどう算出する?

「毎月いくら返せるか」は、購入後の住宅関連費や今後増えると予想される支出も考慮して検討しましょう。住宅購入後は<図1>のように、固定資産税や修繕費などの維持費が新たに生じます。

たとえば、購入前の住宅関連費が13万円であった場合、購入後必要になる維持管理費を3万円とすれば、10万円が「毎月返せる額」になります。維持管理費などを確保することを忘れず、返せる額を算出しましょう。

<図1:「毎月返せる額」はどう算出する?>
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毎月返せる額がわかったら、その金額をいつまで返せるかを考えてみましょう。現役時代は返せる額でも、リタイアして収入が減ると、返済は厳しくなりますので、「いつまで働けるか」がひとつの目安になるでしょう。

金融機関や不動産会社の人に勧められたからと、安易に35年、30年にするのではなく、借入期間はリタイアまでの年数にしておくことが望ましいでしょう。

金利はどのくらいで考えればよい?

金利は、全期間固定金利型で借り入れするつもりで試算しましょう。金利の低い変動金利型などを使って算出すると、将来金利上昇で返済額が増えた場合、毎月の家計に余裕がなくなります。

家計に余裕を持たせておくためには、金利は少し高めの3%程度で算出しておくとよいでしょう。

<表2>は「毎月返せる額」を算出後、借入期間と借入金利によって「返せる額」がどう変わるかを示しています。

毎月返済額が同じ10万円でも、金利3.0%・20年返済なら、1,803万円ですが、金利を1.0%に見積もり20年しか返済できないのに35年返済にすれば3,542万円と倍近い金額を借入れできます。

このように設定する借入期間や借入金利が適切でないと、自分が「返せる額」の見通しを間違いかねないのです。

<表2:借入期間・借入金利が違うと「借入可能額」はどう変わる?>

※毎月支払える額が約10万円の場合

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将来の生活を考えた資金計画

返済期間の途中で、家計の支出が増えたり、収入が減ったりしても、住宅ローンの毎月返済額を減らすことは原則できません。住宅ローンは家計の中で、大きな割合を占めるだけに、将来の家計の変化にも備えて資金計画を立てましょう。

どんな支出が増えそう?

・子どもの教育費
子どもがいる、もしくは子どもが産まれる予定がある場合は、必要な教育費を見込んでおきましょう。

教育費は、公立か私立か、教育方針などにより各家庭で異なるものです。データなどを参考に、どのくらいの教育費が必要になるか考えておきましょう。

・車、家電、旅行などの大きな支出
家を買った後も、車や家電などの買い替え資金は必要です。家庭によっては、旅行や趣味にお金をかけたい場合もあるでしょう。

ローンの返済額が多すぎると、暮らしに必要なものや、やりたいことにお金を回せなくなります。将来必要な支出は、必ず予算取りをしておきましょう。

・子どもの成長にともなう生活費
子どもが増えたり、成長するに伴い、食費や光熱費など、毎月の生活費は少しずつ増えていきます。今返せる額より余裕を持った返済額にしておかなければ赤字になりかねません。

また借入れを機に、毎月の保険料や通信費などの固定費を見直すなど、家計のムダはなるべく無くすようにしておきましょう。

収入が減るのはどんな時?

・リストラされる、転職・起業する
経済状況の変化に伴い会社の業績が悪化し、給料やボーナスが減ることもあり得ます。また、会社都合で突然リストラされれば給料が途絶えます。一定期間、失業保険の給付はありますが、給料よりは少ない額です。

また、転職したり、新たに起業した場合も、収入は減るかもしれません。特に、自営業の場合は、収入が減っても公的制度からの補てんはありません。一時的な収入減を乗り切るため、常に半年分程度の生活費を手元に準備しておきましょう。

・病気やけがで働けなくなる
長い返済期間には、病気やケガの入院で、長期間働けなくなることがあるかもしれません。療養が続けば貯蓄も減り、家計は苦しくなります。会社員なら傷病手当金などで一部は補てんされますが、自営業者の場合は社会保険からの補てんはありません。

生活予備費の準備に加え、病気やけがに備え民間の保険に加入しておく、いざとなったら妻が働くなど、事前に対策を考えておきましょう。

・妻が仕事を辞める
子育てなどの理由で、妻が仕事を辞めるケースも多いでしょう。また、正社員からパートに変わるというように、働き方によって収入が減ることもあります。

夫婦2人の収入で借り入れする場合は、妻の将来の働

<将来の家計はどう変化する?>

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借入額が適正であれば、将来支出が増えたり収入が減った場合でも、安定したローン返済が可能です。子どもの教育や家族の夢をかなえるお金なども確保できてこそ、幸せのマイホームといえます。

そのためにも、余裕を持った借入額にしておきましょう。