持家と賃貸のどちらがよいのか、誰しも悩むものです。家族構成や生き方、どのような暮らしを望むのかなどによっても、その答えは変わります。

検討する前にそれぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。また、具体的な一例を参考に、お金のかかるタイミングや総支払額の違いなどを見ていきます。

持家・賃貸のメリット・デメリット

持家と賃貸、どちらが自分にふさわしいのかは、費用面からだけでなく、生活スタイルなども含めた総合的な視点で考えましょう。まずは、それぞれの主なメリット・デメリットを見ていきます。

費用の面から考えてみよう

最も気になるのは、「どちらが費用的に得か」という点でしょう。物件の購入価格や家賃などにより答えは違ってくるので、一概にどちらが得と言い切ることはできません。

とはいえ、費用のかかり方の特徴を知っておけば、大まかな目安をつけることは可能です。

<表1>は、持家・賃貸それぞれのメリット・デメリットを費用の面からまとめています。総支払額を具体的に比較する前に、費用面・資産面の特徴を知っておきましょう。

表1:「費用面・資産面」から見た場合
持家 賃貸
メリット ・住宅ローンの返済額がある程度決まっているので、住居費の計画がたやすい
・資産価値が上がる可能性がある
・ローン返済が終わると住居費用が大きく減る
・収入に応じた家賃の物件に住み替えできる
・メンテナンス費用が掛からない
・頭金などにお金を回さなくてもよいので、手元に残っているお金を運用できる
デメリット ・収入減になっても、住宅ローン返済があるので住居費を抑えにくい
・資産価値が落ちるリスク、災害による再建リスクなどがある
・メンテナンスやリフォーム、建て替え費用などが掛かる
・固定資産税や管理費など維持費が掛かる
・老後も家賃の支払いが続く
・定期的に賃貸更新の費用が掛かる
・家賃を支払い続けても、資産としての住居は残らない

費用面から見た大きな違いは2つあります。

1つは、持家の場合はローンを完済すれば、その後の住まいに関する費用は少なくなりますが、賃貸の場合は老後も家賃の支払いが続きます。

もう1つは、持家なら最終的に家が資産として残りますが、賃貸の場合は自分の資産にはならないという点です。

今後の生活や価値観などから考えてみよう

持家・賃貸のどちらにするかは、どのような生活をしたいのか、家を資産として考えるのかなど、自分や家族が希望する生活、価値観、性格なども考えて決めるようにしましょう。

<表2>は、持家・賃貸で生活の変化に対する対応のしやすさなどを示したものです。納得して暮らしていくためには、こうした一面からの比較も必要です。

表2:「ライフプラン・価値観」などから見た場合
持家 賃貸
メリット ・自由にリフォームができる
・自分の所有なので気兼ねがない
・ライフプランに応じた住み替えが自由
デメリット ・気軽に住み替えできない ・好みの内装などにしづらい
・高齢になると賃貸を断られるケースがある

<表2>から分かるように、持家の良さは自分の家である「満足感・安心感」や、自分好みの間取りやインテリアにできる「自由度」でしょう。

また、賃貸の良さは子どもの誕生・就学や転勤など、家族構成や生活状況の変化に合わせ住み替えができる「自在性・柔軟性」といえます。

このように、持家か賃貸かを比較するときは、費用と家に対する価値観の両面から考えていくことが必要です。優先したいポイントを家族で話し合うようにしましょう。

平均寿命までの費用を含めた総支払額は?

ここではモデルケースを使って、持家と賃貸の費用面の比較をします。

総支払額を比較してみよう

生涯の住居関連費用の総支払額はどのくらいになるのか、持家、賃貸それぞれの場合で試算してみました。35歳で家を買った場合を想定し、85歳までの50年間の試算としています。

あくまで1つのモデルケースですが、考え方の参考にしてください。

<持家と賃貸 50年間の総支払額はどのくらい?>

総支払額試算の前提条件
持家の場合 ・物件価額:4,000万円
・頭金:800万円 諸費用:200万円
・毎月返済額:約10万円
(借入額3,000万円・借入期間35年・全期間固定金利型2%)
・固定資産税等:毎年15万円
・修繕積立金:毎月1万円(1万円×12ヵ月×10年間=120万円)
(10年ごとの修繕費用120万円)
賃貸の場合 ・家賃:12万円
・更新料:2年ごとに更新料1ヶ月分
・引越し時費用:10年ごとに50万円
(礼金、仲介手数料各1ヵ月分計24万円+引っ越し費用)
※ここでは、各費用は変わらないものとして計算。引越し時の「敷金」は戻りの敷金分で充当する
持家・賃貸50年間の総支払額比較

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最下部の赤文字が示す総支払額に注目すると、賃貸の方が持家の場合より約1,000万円多くなっています。

持家の場合は、ローン完済後は毎月の住居費がかからなくなるのに対し、賃貸の場合は家賃の支払いが住み続ける限りに続くことが大きな要因です。長生きするほど、その差は大きくなります。

また家賃相場が上昇した場合、持家との差はさらに大きくなるでしょう。反対に、住み替えなどで家賃が安くなれば、結果は逆転するかもしれません。

自分で試算するときは、物件の価格や希望の家賃など、なるべく現実に近い数字で試算するようにしましょう。

持家にするか、賃貸にするか迷ったとき、試算は1つの「ものさし」として参考になります。ただ、世の中の経済状況などによっても、結果は左右されることも理解しておきましょう。

お金のかかる時期の違いも知っておこう

持家と賃貸では、お金のかかる時期にも違いがあります。
①当初費用における違い
上表の①部分を見てみましょう。当初必要な費用は、持家の場合は頭金や諸費用など、多額の費用がかかりますが、賃貸なら入居時の敷金など数十万程度の出費で済みます。

また、持家の場合、これらの費用を支払わなくてはならないので、購入直後の貯蓄は大きく減ります。

②ローン返済期における違い
近年は借入金利が低いため、同様の物件で比較すると、近隣の家賃相場よりも毎月のローン返済額の方が少ない傾向にあります。上表②のように、持家の場合には固定資産税が毎年必要になります。

ただし、賃貸でも2年ごとに更新料が必要です。また持家の場合、10年ごとのメンテナンス費用はかかりますが、総合的に見て、両者の差はそれほど大きくありません。

③ローン完済後における違い
この時期が、両者の支出額の差がいちばん大きくなる期間です。上表③のように賃貸15年間の住居関連費用の合計額は、持家と比べ約1,600万円も多くなります。

老後は収入も減るため、予想以上に家賃が家計を圧迫することもあるでしょう。

家賃の安い物件に住み替える計画でも、高齢者を受け入れない物件も多いのが現状です。賃貸の場合、現役で働いている間は余裕がある分を貯蓄に回し、老後の家賃への備えをしてきましょう。

大事なのはできるだけ多くの意見や考え方を参考に、自分の優先したいものを整理していくことです。これら数字を目安に、自分なりの方針や考え方を持って決めていきましょう。

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頭金や住宅ローンにかかる費用について詳しい解説は次のページにあります。
頭金はいくら用意したらよいか
住宅ローンにかかる費用は?