住宅ローンの金利には、大きく分けて「固定金利」と「変動金利」があります。総返済額で考えるか、自分の性格に合わせるかなど、選び方はさまざまです。
ここでは、それぞれの特徴や返済額の違いを見ていきます。なにを優先するかを考え、家計に合った金利タイプを選んでいきましょう。

目次
住宅ローン金利の基本的な違いを理解する
住宅ローンには「全期間固定金利型」「固定金利選択型」「変動金利型」の3つの金利タイプがあります。選ぶ前に、基本的な特徴や違いについてを知っておきましょう。
住宅ローンの金利タイプ3つ
- 全期間固定金利型
- 固定金利選択型
- 変動金利型
全期間固定金利型
全期間固定金利型は、借入時に完済までの金利が決まります。つまり、借りる時点で毎月返済額や総返済額が決まることが特徴です。
こんな方におすすめ
家計管理がしやすいため、子どもの人数などライフプランが決まっていない人や自営業者など、家計が大きく変化する可能性のある人などに向いています。
固定金利選択型
固定金利選択型は、借入時から一定期間、金利が固定されます。5年・10年などの固定期間終了後は原則として変動金利型が適用されますが、再び固定金利選択型を選択することもできます。
ここに注意
固定期間終了後に金利が大きく上昇していた場合、毎月返済額が急増することもあり得ます。変動金利型と同じように、金利上昇リスクがあることを理解しておきましょう。
こんな方におすすめ
子育てのために妻が働けない期間や、子どもの教育費が続く期間など、一定期間の返済を抑えたい人などに向いています。
変動金利型
変動金利型は、年2回金利情勢に合わせて金利が見直されます。
返済額は変わらない?
ただし、ほとんどの場合、金利が見直されても毎月返済額は5年間変わりません。また、5年ごとに毎月返済額を見直す際も、極端な増額にならないよう、それまでの毎月返済額の1.25倍を上限とするルールになっています。
例えば、毎月返済額が10万円の場合、次の毎月返済額の上限は12.5万円です。
ここに注意
注意したいのは、金利上昇幅が大きいケースです。金利が上がっても毎月返済額には上限があるため、毎月返済額のほとんどを利息が占め、元金残高が減らない事態が起こり得ます。利息が毎月返済額を上回る「未払い利息」が発生する可能性も理解しておきましょう。
「未払い利息」については住宅ローン金利ってなに?「2.変動金利型のリスク」にて詳しく説明しています。
こんな方におすすめ
十分に貯蓄があり、金利上昇時に備え早い時期での繰上返済を考える人などに向いています。
<主な特徴まとめ:どのタイプを選ぶ?>
特徴 | |
---|---|
全期間固定金利型 |
・金利は完済まで変わらない ・毎月返済額と総返済額が借入時に確定する |
固定金利選択型 |
・金利動向に影響を受ける ・固定期間終了後は変動金利型もしくは希望の固定期間を選択できる |
変動金利型 |
・金利動向に影響を受ける ・年に2回金利見直し ・毎月返済額は5年後ごとに変わる(上限は1.25倍まで) |
こんな人に向いてます | |
---|---|
全期間固定金利型 |
・将来のライフプランがはっきりしない(子どもの数など) ・家計の収入 ・支出が安定していない ・教育費がこれからピークを迎える ・金利の動きに気をとられたくない ・返済期間が長い |
固定金利選択型 | ・一定期間(妻が働けない間や子どもの教育費が続く間など)だけ、毎月返済額を安定させたい |
変動金利型 |
・毎月の家計に余裕がある ・共働きなど、将来にわたり収入の安定が見込める ・十分な貯蓄がある・借入額が少ない、返済期間が短い ・早い時期の繰上返済を計画している |
【金利が上昇した場合の比較】固定と変動
一般的に、金利は高い方から、全期間固定金利型、固定金利選択型、変動金利型の順になります。
原則、金利が低いものほど総返済額は少なくなりますが、金利上昇の度合いなどによって、最終的な結果は変わります。
ここでは、下記3つの場合で試算し、総返済額を比較しています。
【1】金利が変わらないケース
【2】緩やかに上昇するケース
【3】大幅に上昇するケース
借入額3,000万円
借入期間30年
元利均等返済
ボーナス払いなし
<当初の金利設定>
全期間固定金利型:2.0%
固定期間選択金利型(10年):1.5%(完済まで引下げ幅は一律)
変動金利型:0.75%(毎月返済額は5年ごとに見直し)
【1】金利が変わらないケース
金利タイプ | 全期間固定金利型 | 固定金利選択型 | 変動金利型 |
---|---|---|---|
金利 | 2.0% | 1.5% | 0.75% |
毎月返済額 | 110,885円 | 103536円 | 93,085円 |
総返済額 | 39,918,769円 | 37,272,768円 | 33,510,615円 |
金利が低い分、変動金利型の総返済額が一番低く、固定金利選択型、全期間固定金利型の順番になっています。
【2】金利が緩やかに上昇するケース
金利タイプ | 全期間固定金利型 | 固定金利選択型 | 変動金利型 |
---|---|---|---|
金利 | 2.0% | 1.50% | 0.75% |
金利 | 全期間2.0% | 10年ごとに金利が1.0%ずつ 上昇した場合 |
5年ごとに金利が0.5%ずつ 上昇した場合 |
毎月返済額 | 110,885円 | 当初10年間(1.5%) 103,536円 11年目~(2.5%) 113,696円 21年目~(3.5%) 119,264円 |
当初5年間(0.75%) 93,085円 6年目~(1.25%) 98,847円 11年目~(1.75%) 103,671円 16年目~(2.25%) 107,448円 21年目~(2.75%) 110,071円 26年目~(3.25%) 111,440円 |
総返済額 | 39,918,769円 | 40,379,544円 | 37,473,742円 |
総返済額で比較
【1】と同じく、変動金利型の総返済額が最も少なくなりました。変動金利型は、金利が低いため元金の減り方が早く、残高も早く減っていきます。残高が少なければ、金利上昇の影響は小さくなります。
毎月返済額で比較
毎月返済額は、26年目以降は全期間固定金利型に比べると変動金利型の方が多くなりますが、差額はごくわずかです。
一方、固定金利選択型は、変動金利型に比べ、同じ時期における残高が大きい分、金利上昇の影響が大きくなり、総返済額は最も多くなりました。
【3】金利が大幅に上昇するケース
金利タイプ | 全期間 固定金利型 |
固定金利 選択型 |
変動金利型 |
---|---|---|---|
金利 | 2.0% | 1.50% | 0.75% |
金利 | 全期間2.0% | 10年ごとに金利が2.0%ずつ 上昇した場合 |
5年ごとに金利が1.0%ずつ 上昇した場合 |
毎月返済額 | 110,885円 |
当初10年間(1.5%) 103,536円 11年目~(3.5%) 124,437円 21年目~(5.5%) 136,568円 |
当初5年間(0.75%) 93,085円 6年目~(1.75%) 104,827円 11年目~(2.75%) 115,018円 16年目~(3.75%) 123,256円 21年目~(4.75%) 129,151円 26年目~(5.75%) 132,318円 |
総返済額 | 39,918,769円 | 43,744,862円 | 41,859,317円 |
総返済額を比較
このケースでは、金利が大幅に上昇したため、全期間固定金利型が最も有利になりました。
毎月返済額を比較
毎月返済額を比較すると、変動金利型、固定金利選択型のいずれにおいても、11年目以降は全期間固定金利型よりも多くなっています。
「【2】金利が緩やかに上昇するケース」と同様、変動金利型の方が、固定金利選択型よりも、金利が低く元金の減り方も早いため、金利上昇の影響は小さくなっています。
【返済期間の違いによる比較】固定と変動
一般的に返済期間が短いほど、金利上昇の影響は小さくなります。ここでは、返済期間20年のケースで比較してみましょう。
借入額3,000万円
借入期間20年
元利均等返済
ボーナス払いなし
<当初の金利設定>
全期間固定金利型:2.0%
固定期間選択金利型(10年):1.5%(固定期間終了後は変動金利型へ)
変動金利型:0.75%(毎月返済額は5年ごとに見直し)
金利は4年目と9年目に1%ずつ上昇
(【1】~【3】のケースより上昇時期は早め)
返済期間が短め(20年)のケース
金利タイプ | 全期間固定金利型 | 固定金利選択型 | 変動金利型 |
---|---|---|---|
金利 | 2.0% | 1.50% | 0.75% |
金利 | 全期間2.0% | 当初10年間 1.5% 11年目~ 2.75% (11年目以降は変動金利型へ) |
当初 0.75% 4年目~ 1.75% 9年目以降 2.75% (毎月返済額は5年ごとの見直し) |
毎月返済額 | 151,765円 | 当初10年間(1.5%) 144,763円 11年目~(2.75%) 153,823円 |
当初5年間(0.75%) 134,648円 6年目~(1.75%) 147,984円 11年目~(2.75%) 158,824円 |
総返済額 | 36,423,456円 | 35,830,341円 | 36,016,825円 |
総返済額を比較
このケースでは、前述した【1】~【3】のケースと異なり、固定金利選択型が最も有利になりました。総返済額が少なくなったのは、返済期間のうちの半分の期間、金利上昇の影響を受けずに低い金利で返済できたこと。
また、期間が短い分、元金の減りが早く、当初固定期間以降、金利上昇したとしても総返済額への影響が小さかったためです。
まとめ
ここまでの試算は一例です。金利が動く時期や上昇幅によって、試算の結果は違ってきます。また、返済期間によっても、金利動向による影響の違いから、有利な金利タイプは異なります。
大事なのは、自分なりの見通しを立てたうえで試算してみることです。
まず、自分の家計に合った借入額・借入期間を決めたうえで、金利の動きを予想し、比較しましょう。
総返済額の損得も大事ですが、金利上昇に備えたリスク管理をしておくことの方が大事です。金利上昇による影響を十分理解し、固定金利型か変動金利型かを選びましょう。
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