住宅ローンを比較するうえで、重要なポイントの1つが「金利」です。

住宅ローンを選ぶときは金利差だけでなく、金利タイプによっても返済額は変わりますので、金利の基本を正しく理解することが大切です。住宅ローンの「3つの金利タイプ」について、それぞれの特徴や注意点を確認しましょう。

金利推移

「金利」とはどんなもの?

一般的に、お金を借りると利息を加えて返済します。借入額に対して、支払う利息の割合を「金利」と言います。

例えば、1,000万円を借り入れして、月々の利息が2万円の場合「月利」は0.2%(2万円÷1,000万円)、1年の利息は12ヵ月分で24万円なので「年利」は2.4%(24万円÷1,000万円)となります。

 

住宅ローン金利の特徴とは?

住宅ローンの金利は「年利」で表示されます。この年利で計算された毎月返済額は「元金の返済分と利息の合計額」です。

元利均等返済の場合は、金利が高いほど利息が多く元金返済に充てられる額が少なくなり、元金が減るスピードは遅くなります。

また、住宅ローンの借り入れは高額であることが多く、わずかな金利差でも返済額に大きな差が出ます。

例えば、3,000万円を借入期間30年、金利1%と2%で借り入れした場合で比べると、毎月返済額で約1.4万円、総返済額で約518万円の差が出ます。

毎月返済額の元金返済分と利息の内訳(初回返済額)

※借入金額3,000万円・借入期間30年 元利均等返済・ボーナス払いなし 初回返済額における内訳

home-loan-05-01
金利1%の場合より、元本の返済に充てられる額が少なくなる

返済のスピードが遅くなる

 

住宅ローンの金利タイプ「仕組みと特徴」

住宅ローンの金利タイプは、3タイプに分かれます。それぞれの仕組みや特徴を見ていきましょう。

 

1.全期間固定金利型

全期間固定金利型は、借り入れから完済まで金利が固定されます。

つまり、市場金利が変わっても、借入時に確定した毎月返済額や総返済額は変わりません。金利は3つの金利タイプの中では高めです。全期間固定金利型の代表例は「フラット35」です。

全期間固定金利型

出典:住宅金融支援機構サイト フラット35 金利のタイプとは?より
 

2.変動金利型

変動金利型の最大の特徴は、経済情勢に合わせ半年ごとに金利が見直されること。一般的に、3つの金利タイプの中で金利は最も低めです。

変動金利の2つのルール

また、多くの金融機関では、金利上昇時に返済額が急増しないよう、2つのルールを設けています。

  • 5年間は毎月返済額を変更しない
  • 金利が上昇しても次の5年間の返済額の上限は、現在の1.25倍まで

上記2点がそのルールです。そのため、金利が見直されても毎月の返済額が変わるのは5年ごとです。

そして、金利が上昇しても現在の毎月返済額が10万円ならば、次の5年間の返済額は、1.25倍の12万5千円を超えることはありません。

変動金利型

出典:住宅金融支援機構サイト フラット35 金利のタイプとは?より

 

3.固定金利選択型

固定金利選択型は、最初の一定期間は金利が固定されます。厳密には「一定期間の金利を固定する特約」が付いた金利タイプです。

固定期間終了時に変動金利型にするか、再度固定期間選択型にするかを選ぶ仕組みになっています。

固定期間終了後の金利は確定していないため、「変動金利型」の仲間といえます。固定期間の種類は、2年・3年・5年・7年・10年・20年などがありますが、金融機関ごとに取扱いは異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。

固定金利選択型

出典:住宅金融支援機構サイト フラット35 金利のタイプとは?より

 

金利タイプごとの仕組みと特徴は?
金利タイプ 主な仕組みと特徴
全期間固定金利型 ・借り入れ時に完済までの金利が決まるため、返済額も確定する
・3つの金利タイプの中で金利は最も高め
変動金利型 ・金融情勢の変化に合わせ、半年ごとに金利を見直す
・毎月返済額は5年ごとに変更される
・大きく金利上昇しても、返済額の上限は直前の返済額の1.25倍まで
固定金利選択型 ・借入当初から一定期間、金利が固定される
・固定期間は2年・3年・5年・10年・15年などから選択
・固定期間終了時に、再度希望の金利タイプを選べる

 

金利タイプ毎のリスクとは?

1.全期間固定金利型のリスク

全期間固定金利型は、金利が固定されるため金利が上がっても影響は受けません。金利が下がった場合でも同様です。

金利が変わらない安心感はあるものの、世の中の金利が低くなっても、自分が支払っている住宅ローンの返済額が減らないことは、リスクの一つといえるでしょう。

景気悪化による物価の下落、給与の伸び悩みなどの局面では、高めの返済額が家計を圧迫することも考えられます。

 

どんな備え方がある?

  • 金利の低下が続くと予想 ⇒ 変動金利型や金利の低い全期間固定金利型に借り換えをする

 
全期間固定金利型を選ぶといいのは誰?

 

2.変動金利型のリスク

変動金利型の最大のリスクは「金利上昇のリスク」です。

借り入れ当初は子どもが小さく家計に余裕がある場合でも、子どもの成長とともに必要なお金は増えます。金利が大きく上昇した場合に、返済額の増加で教育費などが不足する事もありえます。

また、「毎月返済額は1.25倍よりも増えない」というルールがあるから安心というわけではありません。金利が上昇すれば、返済額に占める利息の割合が多くなるため、元金がほとんど減らない状況もありえます。
 

未払い利息

支払額が変更されないので知らないうちに、払うべきお金が先送りされるのです。そして、金利の上昇幅が大きい場合、毎回の返済額では利息を支払いきれず「未払い利息」が発生することもあります。未払い利息が発生すると、ほとんどの場合は、最終返済時に未払い利息を一括支払いすることになります。

「総返済額は完済時までわからない」のでギャンブルをしているといっても過言ではないのです。

 

金利が上昇すると毎月返済額はどう増える?
借入時 6年目 11年目 16年目
金利 0.75% 1.25% 1.75% 2.25%
毎月返済額 93,085円 98,847円 103,671円 107,448円
借入時との差額 5,762円 10,586円 14,363円
※借入額3,000万円・借入期間30年・元利均等返済・ボーナス払いなし・5年ごとに0.5%の金利上昇と仮定

 

どんな備え方がある?

  • 借入時の返済額に余裕のない人は、借入額を減らすことを検討する
  • 借入時の返済額に余裕がある人は、全期間固定金利型の金利で返済したつもりで差額を貯蓄し、金利上昇時には繰上返済して元金を減らす

 

変動金利型を選ぶといいのは誰?

 

3. 固定金利選択型のリスクは?

固定金利選択型は、固定期間終了時にあらためて金利タイプを選ぶ仕組みのため、固定期間終了時の金利によって、総返済額が大きく変わります

固定期間が短いものほど、変動金利型に近いといえますし、固定期間が長いほど将来の金利情勢は予測しづらくなります。

固定期間終了時に予想以上に金利が上昇していた場合、毎月の返済額が増えることもありえます。また、固定期間終了時の借入残高が多いほど、金利上昇の影響も大きくなります。

借入額によって、金利上昇時の増加額はどう違う?
借入額 2,500万円 3,000万円 3,500万円
当初10年間
適用金利1.2%
82,727円 99,272円 115,818円
10年後残高 約1,764万円 約2,117万円 約2,470万円
11年目以降~
適用金利3.2%
99,628円 119,554円 139,479円
増加額 16,901円 20,282円 23,661円
※固定期間10年・借入期間30年・元利均等返済・ボーナス払いなし

 

どんな備え方がある?

  • 固定期間終了時、金利が上がると返済が厳しい人は借入額を減らすことを検討する
  • 毎月の家計に余裕があれば、固定金利期間中に貯蓄に努め、繰上返済で借入残高を減らしておく

固定金利選択型を選ぶといいのは誰?

 
住宅金融支援機構 民間住宅ローン利用者の実態調査 民間住宅ローン利用者 ※年2回実施 金利タイプ構成比の推移

金利タイプ構成比の推移
超低金利を背景に変動金利を選ぶ方が増えてますが、金利が低いという理由だけで利用するのは避けた方がいいでしょう。

まとめ

このように、金利は住宅ローンの返済額を決める大事な要素です。金利タイプごとの特徴を十分理解したうえで、金利の低さだけに捉われず、将来の家計を見据えた金利タイプ選びをしていきましょう。