住宅ローンを借りるには、金融機関の審査を受けて承認されることが必要です。審査基準は金融機関ごとに決められています。申し込めば誰でも、どんな物件でも借りられるわけではありません。

住宅ローン審査の基本的な内容や条件、審査がスムーズに通るために必要な事を知っておきましょう。

審査対象は「人」と「物件」

「人」と「物件」

住宅ローンの審査とは、金融機関が融資したお金をきちんと返してもらえるかどうか、返済力を総合的に審査するものです。

審査の対象となるのは、大きく分けて「人(ローンを借りる人)」と「物件(ローンの対象となる家)」の2つです。順に、審査の具体的な内容を確認しましょう。
 

「人」のどこをみる?

年収

審査の対象となる最低年収は、200~300万円程度が多いようです。金融機関によっては400万円というところも。多くの場合、手取り額ではなく、税込の年収で審査が行われます。

また、自営業の場合、一般的に確定申告書の「所得金額」で審査されます。中には、経費を差し引く前の所得で審査する金融機関もあります。税金対策として極端に申告所得を抑えていると、自営業者の借り入れは厳しくなるでしょう。

年収をチェックされる期間

収入証明書を提出する年数は多くの金融機機関では2~3年分です。自営業者の場合3年分の確定申告書類を求められます。

”所得を証明する書類(借入申込年度の前年および前々年の公的収入証明書)”
フラット35:新規借入時の必要書類
http://www.flat35.com/loan/flat35/kensetsu_flow.html

 
 

ネット銀行の申込み条件を比較

銀行名 給与所得者
前年度税込年収
自営業
前年度所得
イオン銀行 100万円以上 100万円以上
auじぶん銀行 200万円以上 200万円以上
SBI新生銀行 300万円以上 2年平均300万円以上
ソニー銀行 400万円以上 400万円以上
住信SBIネット銀行 安定かつ継続した収入

 
上記の表はネット銀行の年収の申し込み基準を比較したものです。「イオン銀行」の100万円以上に比べソニー銀行は400万円以上から申し込みが可能となっています。

「住信SBIネット銀行」は明確な年収の基準を公開していませんので、他社よりも厳し目であると考えるといいかもしれません。

 

勤務先(年数や形態も)

勤務先や勤務形態を住宅ローン審査で評価の高い順に並べると下記のようになります。

  • 公務員
  • 大手上場企業
  • 上場企業
  • 非上場企業の正社員
  • 契約社員・派遣

勤務形態については、正社員であることが原則ですが、派遣や契約社員の場合でも、借り入れできる金融機関もあるので相談してみましょう。

勤務年数

一般的に、必要とされる勤続年数の目安は3年以上です。ただし、良い条件への転職など場合によっては、柔軟な対応もされています。

自営業の営業年数

自営業の場合は、原則として直近3年分の確定申告書が必要なことから、3年以上の事業継続が条件になります。事業規模や継続年数で評価が大きく異なりますが、自営業の方の審査では会社員よりも大幅に評価が割り引かれてしまいます。

 

ネット銀行の申込み条件(勤続年数)

銀行名 給与所得者の勤続年数 自営業者の営業年数
イオン銀行 6ヵ月以上 3年以上
auじぶん銀行
SBI新生銀行 2年以上(正社員か契約社員) 2年以上
ソニー銀行
住信SBIネット銀行

 

銀行によってはサラリーマン(給与所得者)は勤務年数が、自営業者には営業年数が制限される場合があります。

イオン銀行は、給与所得者であれば6ヶ月の勤続年数で申し込みが可能と、他社に比べて申し込み基準が柔軟な印象です。

 

個人信用情報

「個人信用情報」とは、個々のクレジットカードや他のローンの利用履歴や支払状況などが記録されたものです。金融機関は、この情報を確認することで、他の借り入れの契約内容や返済状況などをチェックします。

3つの信用情報機関

個人信用情報は信用情報機関によって管理されています。代表的な信用情報機関はCIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、全国銀行個人信用情報センターの3つです。

いずれも1,000円で自分の個人使用情報を調べることができます。不安がある方は、住宅ローンの申し込み前に自分でチェックするといいでしょう。1社だけでなく3社全て確認することがポイントです。

自分の個人信用情報を確認する方法

CIC JICC 全国銀行個人信用情報センター
料金 1,000円 1,000円 1,000円
支払方法 ※クレジットカード(1回) クレジットカード、コンビニ払い、ペイジー対応ATM、ネットバンキング ゆうちょ銀行の定額小為替証書
必要なもの ※クレジットカード契約時の電話から電話をかける 本人確認書類(スマホ撮影) 2種の本人確認書類
取り寄せ方法 PC、スマホ、郵送、窓口 スマホ、郵送、窓口 郵送のみ

※PC、スマホから手続きの場合

詳しい取り寄せ方法は以下のリンクから確認できます。
CICの情報開示
JICCの情報開示
全国銀行個人信用情報センターの情報開示

健康状況

住宅ローンを利用するには、団体信用生命保険(団信)に加入できることが原則です。そのため、健康状況によっては審査に通らないこともあります。

健康に不安があるなら、引受範囲の広い「引受条件緩和型」の団信のある金融機関を探してみましょう。

ただし、フラット35なら団信に加入しなくても借り入れ可能です。その際は、万が一のことがあった場合には、加入中の生命保険や貯蓄で、残った家族がローンを返済できるかどうかの検討が必要です。
 
フラット35、フラット35Sって何?

 

「物件」のどこをみる?

物件チェック

担保評価額

担保評価額とは、建物と土地を売却するとすれば、いくらで売れるかを評価した額です。返済が滞った場合、金融機関は資金を回収するために、担保の対象となった物件を処分します。

そのため、借り入れできる金額のは評価額以内とされています。新築ならほとんどの場合、購入価格や請負価格の100%の金額まで借り入れ可能です。
 

権利関係や法令違反の有無

土地に借地権がついている場合などは、審査は厳しくなります。担保評価が低い、土地に抵当権の設定ができないといった理由からです。

借地権付きの住宅についての住宅ローンは取扱いしない金融機関も多くあります。

また、建築基準法違反の建物や、市街化調整区域の物件も借り入れが難しくなります。返済が滞った時に、担保物件として処分しにくいと考えられるためです。

このように、金融機関は「人」「物件」の多岐にわたる項目をチェックし、総合的に審査の可否を判断します。

審査内容の主なポイント
「人」についての条件
  • 会社員なら、一般的に年収200~300万円以上で安定した収入があるか
  • 自営業なら、一般的に直近3年間の所得(経費差引後)が常に黒字で安定した収入があるか
  • 勤続年数3年以上の正社員(派遣社員・契約社員も可の場合もあり)であるか
  • 健康状態が良好であるか
「物件」についての条件
  • 土地/物件の価値が担保評価額以内に収まっているか
  • 土地に借地権・定期借地権はついていないか(取扱いのある金融機関は限定的)
  • 建築基準法に違反した物件ではないか
  • 市街化調整区域ではないか

住宅ローンの審査は「人」「物件」につて総合的に判断されます。
 

確実に借りるためには?

借り入れ中のローン

住宅ローンで借り入れできる金額は、年収を基準にした「返済負担率」(年収に占める年間返済額の割合)で決まります。

例えば、フラット35の場合は年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。この返済負担率は、住宅ローン以外のローンの年間返済額も含めて、前述の割合に収まる必要がありあります。

そのため、カーローンなど他に借り入れがある場合、それだけ借り入れできる金額は減ります。住宅ローン以外のローンはできるだけ審査の前に返済しておきましょう。

コレにも注意

また、携帯電話の端末代金の支払いには注意が必要です。分割払いにしていると、借り入れと同じ扱いです。一括で支払うか、審査申込みの際に伝えておきましょう。

 

クレジットカードの整理

クレジットカードのキャッシング枠も、「枠」そのものが借り入れ中とみなされ、審査に影響する場合があります。審査をスムーズにするためにも、クレジットカードは必要な1~2枚を残して解約しておきましょう。

 

夫婦それぞれ借入状況の確認

夫婦で収入合算で借り入れする場合、どちらかが過去に滞納していたなど金銭的トラブルがあれば、もう一方に問題がなくとも借り入れはできません

一度、審査に落ちてしまうと、その後の審査も厳しくなります。夫婦でそれぞれ借り入れがあれば、率直に話し合っておきましょう。

夫婦で借りる住宅ローン

 

自営業者の申告所得

自営業者の場合、前述の通り直近3年分の所得で審査されます。そのため、所得を少なく申告しすぎていると借り入れは厳しくなります

また、自営業の場合、確定申告書とともに、3年分の所得税や住民税の納税証明書の提出も求められます。税金の未納や滞納があると審査には通りません。納税は確実にしておきましょう。

 

審査の前にしておきたいことは?
これらをしておけば審査はスムーズに!

  • 借入れ中のカーローン、クレジットの残金を一括返済しておこう
  • 不要なクレジットカードは解約しておこう
  • 自営業は所得を減らしすぎないよう、計画的に確定申告をしよう(3年間)。また、納税も忘れずに
  • 個人信用情報に不安がある場合は、事前に照会を取ってみよう(指摘される前に申告するため)