夫婦や親子で資金を出し合い購入した住宅は、2人の「共有名義」にする必要があります。「誰が、どれだけ負担したか」という資金割合に基づいて登記することが原則です。

ここでは、共有名義の持分の考え方や、共有名義にする時の利点や注意点を見ていきます。

共有名義が必要な場合とは

夫婦・親子での住宅購入は共有名義になる

夫婦や親子などで、それぞれが資金を出し合い住宅を購入する場合、土地や建物は2人の所有となります。

その状態を「共有」と言い、名義は2人の「共有名義」となります。共有名義になるのは、次のようなケースです。

共有名義になるケースは?

【主なケース】夫と妻 親と子など複数人で土地や住宅を購入
・住宅ローンの借入れをした
・現金を出した
※ただし、贈与の年間基礎控除額(110万円)以内
なら共有名義にしなくてもよい

 

出し合う資金の額は自由ですが、登記はそれぞれが出した資金の割合に応じて決まります。この登記上の所有権の割合のことを「持分」といいます。

持分はどうやって決めればよい?

現金・住宅ローンの借入れ、いずれで購入する場合においても、出した現金や借入額の割合で持分が決まります。

実際には、現金と住宅ローンの借入れ、両方を使って購入するケースが多いので、その場合の持分は、どのように計算したらよいのか具体例で見ていきます。

<夫と妻で購入 持分の例>

home-loan-26-1

上図は、夫と妻の2人で4,000万円の住宅を購入した例です。夫・妻がそれぞれ現金800万円と200万円を出し、夫2,000万円、妻が1,000万円の借入れをしたケースです。

夫の出した資金の合計は2,800万円(800万円+2,000万円)、妻の合計は1,200万円(200万円+1,000万円)です。

持分はこの割合で決まるので、夫の持分は10分の7(4,000万円分の2,800万円)、妻の持分は10分の3(4,000万円分の1,200万円)となります。

もし上記の例で持分を2分の1ずつにして登記してしまうと、妻は出した資金よりも持分が多くなるため、増えた分は夫からの贈与とみなされ、贈与税の対象になることがあります。

登記は、出した金額に応じた持分にするようにしましょう。
 

共有名義のメリットとデメリット

共有名義のメリットは?

共有名義のメリット

  • 夫と妻、親と子、2人とも住宅ローン控除を受けることができる。
  • 売却時の節税対策になる(特別控除3,000万円をそれそれが利用できる)
2人で住宅ローン控除が受けられる

夫と妻、親と子など2人で住宅ローンの借入れをすれば、どちらも住宅ローン控除を受けることができます(「連帯保証」では住宅ローン控除は受けられません)。

単独名義の借入れでは控除の枠を使いきれない場合は、2人で借入れすることで、合計で控除額を増やせることがあります。

ただし、妻が子育てを理由に仕事を辞める、親が定年になるなど、その後の収入が減れば、住宅ローン控除で戻る税金は少なくなります。将来の働き方や収入も視野に入れ、決めるようにしましょう。

住宅ローン控除については次のページで説明しています。
住宅ローン減税とは

売却時の税金が安くなる

通常、住宅を売却すると、売却で得た利益に相当する金額に対し税金がかかります(譲渡所得)。マイホームの場合は、一定の条件のもと、特別控除額3,000万円を譲渡所得から引くことができます。

つまり譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。2人の共有ならそれぞれ3,000万円の控除を受けられ、控除額は最大6,000万円になります。

売却時に土地や住宅が値上がりして、譲渡所得が大きくなった場合には、税金面で有利になるでしょう。
 

共有名義のデメリットは?

共有名義のデメリット

  • 売却に手間がかかる(共有名義人全員の署名・捺印が必要)
  • 離婚時に売却できない場合、共有の解消が難しい
  • とちらかが亡くなると、持ち分の相続で揉めることがある
売却に手間がかかる

土地や住宅などの不動産を売却するには共有者全員の同意が必要で、夫と妻、親と子などで共有していた場合には、両方の署名・捺印がなければ売却の手続きできません。

特に夫婦が離婚した場合など、お互いの連絡が取りづらくなり、売却しにくくなるケースもあります。いざという時の売却のことまで考え、共有にするかどうかを検討しましょう。

離婚時や相続時に持分で揉めることも

夫婦の共有名義の場合、離婚時に住宅をどうするかが問題となることがあります。売却したくとも、売却価格より住宅ローン残高が大きいと売却が難しくなります。

どちらかが住み続けるにしても、住まない共有者の持分を買い取るか、住む者1人の住宅ローンになるよう借換えをしなければ、共有状態を解消することはできません。

離婚することになった場合には、お互いの持分をどうするのか決めておく必要もあります。

また、どちらか一方が亡くなると、相続で揉めることもあり得ます。特に親子で共有名義にしたときは、親が死亡した後、親の持分を共有者である子が相続できるようにしておくことが重要です。

兄弟など他の相続人が相続すると、住み続けることが難しくなることも考えられます。

万一の際は、互いに相手の持分を相続できるように、遺言を残しておくなどの対策をしておきましょう。

共有名義の具体的な事例を扱う関連記事