住宅ローンの金利は、多くの場合基準となる金利から一定の金利が引き下げられたものが適用されます。金利の引下げ幅や引下げ方法は、金利タイプや金融機関ごとに違っています。
ここでは、一般的な金利引下げの仕組みを理解しましょう。また、引下げ方法の違いによって、返済額がどうなるかも比較していきます。

目次
「店頭金利」と「適用金利」はどう違う?
住宅ローンには、「店頭金利(または基準金利)」と「適用金利」の2つの金利があります。それぞれの違いから見ていきましょう。
店頭金利
金融機関が決めている本来の金利が店頭金利です。住宅ローン金利の基準となる金利で、物の値段に例えれば、「定価」と考えることもできます。
適用金利
店頭金利から、一定の金利を引き下げたものが適用金利です。
店頭金利が「定価」だとすれば、適用金利は「値引き後の価格」と考えることもできます。実際にはこの適用金利が使用され、返済額も適用金利を使って計算されます。
引下げ幅
引下げ幅は、金融機関によって異なりますが、近年の低金利競争を背景に引下げ幅は拡大される傾向にあります。
引下げ幅は借り入れする人によって差があります。例えば、自己資金が20%以上ある場合や、公務員など勤務先が安定している場合などには、引下げ幅が大きくなる傾向があります。
また、借り入れする金融機関に給料口座を開設する、指定のクレジットカードに申し込みするなど、一定の条件を満たすことで引下げ幅が大きくなる場合もあります。
引下げ幅は借入れする人に対する総合的な審査で決まります。
引き下げ幅が決まる要素
- 自己資金の割合
- 勤務先が公務員や大企業
- 給料口座の開設
- 指定クレジットカードの新規申込み
※金融機関により異なります。

「引下げ幅」や「引下げ方法」どんな違いがある?
基準金利からの引下げ幅は、金利タイプや引下げ方法によっても違ってきます。一般的なルールや特徴を知ったうえで、商品の比較をしましょう。
「変動金利型」の場合
多くの変動金利型は、借入れの全期間に渡って当初の引下げ幅がずっと適用されます。変動金利型で借り入れする場合には、できるだけ引下げ幅が大きいものを選びましょう。
ただし、返済の途中で固定金利選択型に切り替える場合、同じ引下げ幅が適用されないことがあるので、申込み時に確認しておきましょう。
変動金利について詳しくは次のページで説明しています。
変動金利型を選ぶといいのは誰?
「固定金利選択型」の場合
「固定金利選択型」の場合、引下げ方法には、以下の2つのタイプがあります。引下げ方法によって総返済額が変わるかため、基準金利から「どれだけ」「いつまで」引き下げてもらえるかが、重要なポイントです。
固定金利について詳しくは次のページで説明しています。
固定金利選択型を選ぶといいのは誰?
1.当初引下げ型
固定期間中の引下げ幅が大きく、固定期間終了後の引下げ幅は小さくなるタイプです。
例えば、当初10年間の引下げ幅は2%、11年目からは1.2%になる といったケースです。金利を低くしたキャンペーン商品などには、当初引下げ型のものが多くみられます。
また、固定期間ごとに引下げ幅に違いがある場合もあります。
当初引下げ型の一例
引下げ幅 当初10年間2.0%
11年目~ 1.2%
11年目に店頭金利が2%上昇と仮定

2.全期間引下げ型
全期間引下げ型は借入れの全期間を通じ、引下げ幅が一定になっているタイプです。当初の引下げ幅は、「当初引下げ型」より小さくなりますが、固定期間終了後も同じ引下げ幅が適用されます。
全期間引下げ型の一例
引下げ幅 全期間1.7%
11年目に店頭金利が2%上昇と仮定

引下げ方法で返済額はどう変わる?
借入期間や引下げ幅によって、総返済額が変わります。固定金利選択型の当初引下げ型と全期間引下げ型のケースで見てみましょう。
借入金額3,000万円
固定金利選択型(10年固定)
元利均等返済
ボーナス払いなし
店頭金利3.3%
引下げ幅
【当初引下げ型】
▲2.0%(当初10年間)
▲1.2%(11年目~)
【全期間引下げ型】
▲1.7%(全期間一律)
店頭金利は10年ごとに2%ずつ上昇すると仮定
<表1>借入期間30年のケース
当初引下げ型 | 全期間引下げ型 | |
---|---|---|
店頭金利 | 3.30% | 3.30% |
適用金利 当初10年間 | 1.3%(3.3%-2.0%) | 1.6%(3.3%-1.7%) |
11年目~ | 4.1%(5.3%-1.2%) | 3.6%(5.3%-1.7%) |
21年目~ | 6.1%(7.3%-1.2%) | 5.6%(7.3%-1.7%) |
総返済額 | 44,785,151円 | 44,331,649円 |
<表1>のケースでは、当初の金利が低い「当初引下げ型」の方が有利に見えがちですが、最終的に「全期間引下げ型」の方が、総返済額は少なくなります。
固定期間終了後の期間が長い場合には、引下げ幅が小さくなることの影響をより大きく受けるといえます。
では、同じ条件で、借入期間が20年の場合を見てみましょう。
<表2>借入期間20年のケース
当初引下げ型 | 全期間引下げ型 | |
---|---|---|
基準金利 | 3.30% | 3.30% |
適用金利 当初10年間 | 1.3%(3.3%-2.0%) | 1.6%(3.3%-1.7%) |
11年目~ | 4.1%(5.3%-1.2%) | 3.6%(5.3%-1.7%) |
総返済額 | 36,539,982円 | 36,848,203円 |
<表2>のケースのように、借入期間が短くなると、引下げ幅の差の影響を受ける期間も短くなるので、「当初引下げ型」を選んだ場合の方が、総返済額は少なくなります。
まとめ
引下げ幅だけでなく、借入期間によっても、「当初引下げ型」と「全期間引下げ型」のどちらが有利になるかが変わります。返済期間が長い場合は「全期間引下げ型」が、返済期間が短めの場合は「当初引下げ型」が有利になる傾向があります。
引下げ幅や借入期間によって、個々の結果は異なります。金融機関のサイトにあるシミュレーションなどを利用すれば、自分で試算することができます。
難しければ、金融機関で試算してもらったうえで、どのタイプにするか決めるようにしましょう。
注意
金利の引き下げは返済の延滞が起こると適応されなくなることもあるので延滞だけは気を付けましょう。