住宅ローンの金利には大きく「固定金利型」と「変動金利型」の2つがあり、それぞれ金利の決まり方には違いがあります。
金利がどのように決まるのかを知っておけば、借入れのタイミングを決めたり金利タイプを選ぶときの参考になるでしょう。将来の金利の予測なども合わせ、詳しく見てきましょう。

目次
金利は何を基準に決まる?
住宅ローンの金利は、何を基準にして決まるのでしょうか?「固定金利型」、「変動金利型」、それぞれ基準になる指標が異なります。
「固定金利型」は10年国債の動きに注目!
全期間固定金利型や10年の固定金利選択型など、「固定金利型」の金利は、主に長期金利の動きに連動します。
長期金利の代表的な指標は、「10年国債の利回り」です。長期金利が上昇すると、銀行が企業などに貸し出す際の金利「長期プライムレート」も上がり、「固定金利型」の金利も上がる仕組みです。
長期金利は、将来「物価が上昇する」「経済が成長する」と予測される場合に上がります。なぜなら、企業などの設備投資が活発になり、長期の資金需要が増えるからです。
基本的に「景気が良くなる」局面では長期金利は上がり、「景気が悪くなる」局面には下がると理解しておけばよいでしょう。
確認方法は?
長期金利は、新聞などで知ることができます。
「変動金利型」は日本銀行の政策金利に注目!
「変動金利型」の金利の代表的な指標は「無担保コール翌日物金利」です。これは、民間の金融機関同士がお金の貸し借りをするときの金利で、この金利をコントロールしているのが日本銀行が設定する「政策金利」です。
日本銀行は、政策金利の上げ下げで金融引締めや金融緩和を行います。景気の行き過ぎを抑えようと金融引締めに動けば金利は高くなり、景気を拡大しようと金融緩和を図れば金利は低くなると考えておけばよいでしょう。
つまり、政策金利が上がれば、「変動金利型」の金利も上がります。政策金利の上げ下げは、日銀が毎月行なう金融政策決定会合によって決まります。
“金融政策決定会合では、年に8回、2日間かけて集中的に審議を行い、金融政策の方針を決定しています。議決は9名の政策委員(総裁、2名の副総裁、6名の審議委員)による多数決によって行います。”
日本銀行 金融政策決定会合
http://www.boj.or.jp/mopo/outline/index.htm/
確認方法は?
変更は、新聞やテレビの報道などで確認することができます。
実際の住宅ローン金利はどう決まる?
「固定金利型」「変動金利型」いずれの場合も、実際の金利は、それぞれ基準とする指標をもとに、各金融機関が独自に決めています。
指標の動きだけでなく、各金融機関の販売方針(キャンペーンなど)なども実際の金利には反映されます。例えば、販売に力を入れたい時期に、さらに金利を低く設定する場合などです。
確認方法は?
金利は毎月見直しされています。多くの金融機関ではその月の金利が月初に発表され、店頭やホームページなどで確認できます。
「固定金利型」「変動金利型」金利の決まり方はどう違う?
固定金利型の金利 | 変動金利型の金利 | |
---|---|---|
連動する指標 | 10年国債の利回り | 無担保コール翌日物金利 |
金利が上がる要因(主な具体例) | ・景気が良くなる ・物価が上がる ・株価が上がる ・円安になる |
日本銀行の金融引き締め |
金利が下がる要因(主な具体例) | ・景気が悪くなる ・物価が下がる ・株価が下がる ・円高になる |
日本銀行の金融緩和 |
実際の金利の決まり方 | ・指標を基準にし、販売方針も反映させて決定 ・毎月月末に決定、翌月の月初に店頭、ホームページで発表 |
・指標を基準にし、販売方針も反映させて決定 ・変更があれば、店頭・ホームページで発表 |
変わるタイミング | 毎月月初 | 毎月見直し(融資する金利見直しは原則年2回) |
今後の金利、どう予想する?
これまでの金利はどう動いてきた?
1990年代以降、デフレなどの要因で景気が停滞していたことにより、住宅ローンの金利も低い水準が続いてきました。
変動金利の推移
下表からもわかるように、「変動金利型」の金利は、平成2年に8.5%まで上昇したものの、デフレ脱却のためのゼロ金利政策(金融緩和)がとられ、ここ20年近く低い水準のまま推移しています。
固定金利の推移
また、「固定金利型」である旧住宅金融公庫の金利も平成2年には5.5%をマークしましたが、フラット35になってからは1~3%台での低金利が続いています。わずかな金利幅で上下はしていますが、近年は1%台を保ちながら推移しています。
過去の金利の動きは?
【変動金利型等】民間金融機関の住宅ローン金利推移

出典:フラット35
民間金融機関の住宅ローン金利推移
http://www.flat35.com/loan/atoz/06.html
【固定金利型】フラット35・10年国債利回りの金利推移

将来の金利を予想するポイントは?
現在は、アベノミクスが掲げる「2%の物価上昇目標」を達成するため、日本銀行による「量的・質的金融緩和」が続けられています。
目標に到達するまでは、企業が資金調達しやすいよう政策金利も抑えられるため、「変動金利型」の金利も低い水準が続くでしょう。
また、株価などを安定させるため、日本銀行は量的緩和として長期国債の買い入れ額を増やしています。国債の流通が減るため価格は上がり、利回りは下がります。
日本銀行の大量の買い入れが続く限り、長期金利も大きくは上がらず、「固定金利型」の金利も低い水準が続くのではといわれています。「大胆な金融緩和」がいつ終わるのかが、今後の大きな注目ポイントです。
転換期の読み方
物価が上がる、株価が上がる、景気が良くなるといった流れの中、2%の物価上昇目標が達成されることで金融緩和が終われば、金利は上昇する可能性が高まります。
このように、金利が決まる仕組みを知って、経済の動きに注目することで、これからの金利の動きを予想することができます。
とはいえ、遠い将来の予測までは難しいもの。金利が上がっても返済に困らない借入額や、返済額上昇に備えて貯蓄などで繰上返済資金を準備しておくことがより大事といえます。
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固定金利と変動金利については上記のページで詳しく説明していますので、こちらも合わせて参考にしてください。