保有している株式や債券、投資信託などの有価証券を担保にしてお金を借りる仕組みを証券担保ローンといいます。
担保の有価証券を運用しながらお金も借りられる反面、担保評価額が変動するため、価額が大きく下落するとすぐに返済を求められることや、追加の担保を差し入れなければならない点に注意が必要です。
証券担保ローンの仕組み
証券担保ローンは、株式や投資信託、国債などの有価証券を担保に融資を受けるものです。
大きく分けて、証券会社が独自に融資する証券担保ローンと、証券会社が日本証券金融株式会社(以下、日証金)と提携して貸し出ている日証金提携証券担保ローンがあります。
証券担保ローンは、証券会社または日証協に有価証券を置いたまま担保とするため、担保有価証券の売買も原則自由に行うことができ、資産運用をしながらお金を借りることができます。
日証金提携証券担保ローン (コムストックローン) |
証券担保ローン | |
取扱機関 | 日本証券金融または提携証券会社 | 証券会社 |
契約期間 | 契約締結から1年間、自動更新あり | 原則6ヵ月ごとの自動延長 |
担保 | 株式、協同組織金融機関の優先出資証券、投資証券、投資信託の受益証券など | 国内上場株式、海外上場株式、国債、政府保証債、地方債、金融債、電力債、 社債、円建外債、外貨建債券、投資信託など |
担保評価 | 担保有価証券時価額の60% |
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金利 | 3.675%~4.175% 変動金利 | 3.9% 変動金利※ |
借入可能額 | 30万円~1億円 | 100万円~10億円 |
審査 | 一定金額以上では個別審査有り | 一定金額以上では個別審査有り |
返済方法 | 随時返済 | 随時返済 |
申込方法 | 日証金または提携証券会社でインターネット申込み等 | 証券会社の店頭申込み |
証券担保ローンの担保の種類と価額の決め方
担保の種類
証券会社で取り扱っている有価証券は数多くありますが、証券担保ローンでは、すべての有価証券が担保として利用できるわけではありません。
たとえば日証金提携証券担保ローンで利用できる有価証券は、①東証マザーズ、ジャスダック上場銘柄を含む株式、②信用中央金庫等の協同組織金融機関の優先出資証券、③REIT等の投資証券、④ETF等の投資信託の受益証券となっています。
上場していない投資信託や国債、NISA口座で管理している株式等は担保にすることはできません。
また、①から④の有価証券であっても、日証金が融資不適格銘柄としている銘柄は担保とすることができず融資は受けられません。
一方、証券会社の証券担保ローンは、国内上場株式、海外上場株式、国債、政府保証債、地方債、金融債、電力債、社債、円建外債、外貨建債券、投資信託などの有価証券を担保にすることができます。
担保の評価割合
有価証券の担保の評価額は時価の一定の範囲内しか認められません。日証金提携証券担保ローンは有価証券時価額の60%まで、証券会社の証券担保ローンは有価証券の種類によって40%~80%以内となっています。
なお、日証金提携証券担保ローンでは、1銘柄の時価の割合が時価合計額の70%を超えるときの担保の評価は50%までとなります。これは、1銘柄が担保の大部分を占めてしまうと時価の変動を大きく受けてしまい、有価証券の担保価値も左右されてしまうためです。
時価変動で担保が不足してしまったら…
マーケットは日々、刻々と動いていますので、いつまでも担保価値が同じとは限りません。
担保として差し入れたときよりも有価証券の時価額が下がってしまい、借入額が担保の評価割合以上になってしまうこともあります。この状態を担保不足といいます。
万一、担保不足になったときは、取扱機関から書面およびメールで案内が届き、担保の割合を改善する必要があります。方法としては、追加の担保を差し入れるか一部返済等が必要になります。
もし担保不足になっても何もしないでいると、ただちに借入額と利息の全額返済が請求されることがあります。
また、借入額の割合が担保評価の90%以上になったときには、ただちに借入額の全額と利息を請求されるルールになっています。
有価証券を担保にすることで手軽に利用できる証券担保ローンですが、利用するときにはマーケットの動きにも注目し、現在の担保価値の把握をすることが大切です。
限度額ギリギリまで利用するのではなく、余裕を持った利用を心がけるようにしたいものです。