さて、ローンの実例を少し見てみましょう。特に、キャッシュフローについて、複数の条件での算出を行って見たいと思います。

個々の状況に応じて異なりますし、不動産は1つとして同じものはないため、あくまで数字上の計算であることに留意してください。

また、金利についてはかなり厳しい数字を採用しております。実際にはもう少し金利は緩やかになるかと思います。

投資家側の状況も条件として異なりますが、 ここでは年収1000万円、月々の給与が60万円、賞与が280万円の投資家をモデルに考えます。

この時にかかる租税を厳し目の計算としておおよそ3分の1程度として月々の可処分所得を40万円、賞与について200万円とおくと年間おおよそ680万になる。というところから始めてみましょう。

また、可処分所得についてですが、理想的には月々の可処分所得の半分程度を基礎的な生活資材、光熱費や家賃など、やローンの支払いに当てると仮定して20万円までになんとか全てを納める必要が出てくることがわかります。

残り20万円は生活費に回ることになります。自分の生活レベルを落とさないことを考えると、このラインに投資が悪循環を起こした時のリスクがこないようにあらかじめ計算する必要があります。

賞与については最悪投資の持ち出しの受け皿として考える必要もあることも考慮に入れておくべきでしょう。

少し注意をして欲しいのは、今回の計算は実質利回りでの算出ではありますが、不動産取得時の税金など、取得時に即かかってくる費用が存在し、その額もバカにできません。

それらについてもしっかり頭に入れておかないと購入即破綻にもなりかねないので、単純に月当たりのキャッシュフローだけではなく、実際の費用の必要となるタイミングまでを考えての融資や計画をすることも必要となってきます。

では、キャッシュフローを計算してみましょう。

銀行ローンの実例

信頼があれば。いわゆる属性が良い顧客であれば不動産投資のアパートローンであれば3000万円程度は審査について難しくなることはありません。

したがって、取引価格3000万円、実質利回り8%の物件で算出してみます。

頭金を入れて10年の返済を考えてみます。初めての不動産投資で、地方銀行からの借り入れをと想定すると厳しめに考えると金利3%程度が現実的でしょう。

この時頭金300万円、返済期間を10年とした時のキャッシュフローが表の(1−1)になります。

表を見てわかる通り、この条件であれば仮に空室がなくとも毎月の赤字が発生してしまいます。

10年後はローンから開放されますのでその後は収益が上がりますが、毎月6万円で一年72万円。

一見ボーナスで挽回できそうな金額に見えますが、入居がない場合にはこの持ち出しが増えていくことになりますので現実的には10年間我慢できるかと言われれば甚だ疑問が残るキャッシュフローになります。

このような頭金、持ち出し覚悟の短期返済からその後の収益に期待するのは陥りやすい失敗ですので注意してください。結局返済の負担が大きくなり、不動産を二束三文で手放すことになりかねないのです。

逆に(1−2)であれば、同じ頭金で返済期間を倍の20年にしての計算になります。利率は高いですが、キャッシュフローはずいぶん軽いものになりますし、もしも満室状態を保持できれば利益をあげながらローンの完済を待つことが出来るのです。

信用金庫のローンの実例

信用金庫の場合には融資を受けれるだけの状況が整ってしまえば有利な状況が作りやすい傾向があります。

地元とのつながりや、普段から給与や公共料金の振り込みなどで付き合いがあればそれだけ信用してもらえる場合が多く、融資については受けやすい傾向があると思います。

金利については付き合いの長さに比例して大きく変わる傾向があります。最終的には地方銀行と変わらないレベルまで引き下がるかもしれませんが、不動産投資初心者と仮定するとおおよそ4%を覚悟しておけば良いのではないでしょうか。

担保がしっかりとしていればフルローンも可能性としてはありえますので先ほどと同様の条件で、頭金なし、利率4%の計算を(2−1)に示しておきます。しっかりとした担保があるのであれば、このような融資も見えてきます。

(2−2)は大型の融資になります。利回りは8%での計算になります。利率こそ高いですが、きちんと物件の情報をつかんで、入居に対する情報を整理しておけば、年収1000万円でもこのような形で黒字を期待できる物件を持つこともできます。

ノンバンクのローンの実例

ノンバンクについてはあくまで緊急回避用のものと捉えるようにしてください。

利率は大きく、かつ期間も短いので、どうしても(3−1)のような計算になり、どうあがいても黒字のキャッシュフローを作るのが難しい状況となります。

不動産投資に限らず、ノンバンクからの融資を利用した投資でプラスのキャッシュフローを作るのは離れ業で、そのような状況に陥った場合には投資自体を諦めるべきでしょう。

しかしながら、(3−2)のように、もう少しだけ資金が足りないといった状況であればノンバンクを利用するのも1つの方法です。

特に、買主が競合している優良物件についての場合には審査の時間が短く、基準の緩やかなノンバンクからの融資を多少であれば利用してでも手に入れた方が良い場合もあるでしょう。

ローン返済については少し重いかもしれませんが、返済期間が長期にはそもそもなりにくいので、物件自体の取得が済んでしまったならばそのあとに巻き返すことも考えることができるのです。

(1-1) (1-2) (2-1) (2-2) (3-1) (3-2)
購入物件(万円) 3000 3000 3000 9000 3000 3000
頭金(万円) 300 300 0 1000 300 2000
借入金(万円) 2700 3000 3000 8000 2700 1000
金利(%) 3.0 3.5 4.0 4.0 6.0 6.0
返済期間(年) 10 20 20 20 8 8
最終返済額(万円) 3128.6 4175.7 4363.1 11634.8 3406.3 1261.6
月返済額(万円) 26.1 17.4 18.2 48.5 35.5 13.1
月最大家賃(万円) 20.0 20.0 20.0 60.0 20.0 20.0
100%入居月収益(万円) -6.1 2.6 1.8 11.5 -15.5 6.9
75%入居月収益(万円) -11.1 -2.4 -3.2 -3.5 -20.5 1.9
50%入居月収益(万円) -16.1 -7.4 -8.2 -18.5 -25.5 -3.1