買付証明とは
さて、実際の契約の流れについて見ていきます。
適切な物件について、購入の意思を示す場合に用いられるのが買付証明書になります。
買付証明書は別名購入申込書とも言います。こちらの方が体を表している表現ではあるのですが、一般的には買付証明の言葉を用いることが多いので、知識として知っておく程度で良いでしょう。
注意して欲しいのはこの買付証明書は購入の意思を示すものであって、それを売主もしくは仲介業者に渡したところで契約が完了、もしくは確実に契約までもっていくことができるわけではないということです。
特殊な場合になるかもしれませんが、なんらかの都合で買付証明書を提出した側からのキャンセルも可能です。
ただし、購入意思を示しておいてからの取り下げになりますので、相手に対して失礼に当たりますし、仲介業者からすると購入側の信頼を大きく下げる原因ともなりますので、買付証明書を出す場合には資金、キャッシュフロー、取引価格のために提示する価格についてしっかりとした吟味の上で発行するようにしましょう。
どれだけお買い得な物件であっても、月々の支払いができないような金額であればそもそも購入などできません。あらかじめ自分の資金と、融資に対する支払いに対してはシビアな計算をしておく必要があります。
また、買付証明書を提出した後に売主からも売渡承諾書という、売る側としての意思表示を提出してくれます。ここで、両者の合意を得られた時点で契約作業に取りかかれるようになるということです。
さて、買付証明書に記載するものを解説します。ここにあげるのは一般的なものです。
・購入希望価格
後で取り上げますが、売り出し価格そのままで購入希望額を提出する必要はありません。
購入側が価格を指定する取引を指値取引と言います。
通常の物の取引でいうところの値引き交渉に当たります。
・支払い方法、手付金の額
手付金は法律で定められたものではないものの、多ければそれだけ売主は安心してくれます。
また、購入希望者が複数いるような場合には購入意思が強いことを示す指標ともなります。
・現在支払っているローンの額、この物件についてのローンについて
自己資本以外の部分の情報になります。支払いについての信頼度を相手に提示します。
・契約希望日、引き渡し希望日
日時の指定になります。必要に応じて指定します。特に指定のない場合は「後の協議とする」でも良いでしょう。
また、その他の希望条件などがある場合は、別途記載するようにしますが、ここで注意が必要です。
通常、ローンなどの融資は、この買付証明書と売渡承諾書が揃った上で申し込み、その間に契約を結ぶことになります。したがって、本契約後に融資が不調になる場合も考えられるのです。
もしそうなったら契約書通りの支払いを行うことはできません。しかし、契約を結んだ以上支払うしかなくなります。これを避けるために「融資特約付」の文言を忘れずに入れるようにしましょう。
これは、「融資を受けられなかった場合は契約は無効になります」という意味になります。
以上が買付証明についてのおおよその説明になります。
買付証明の注意点
まず、買付証明書は契約を確定するものではないことは先ほども申し上げました。これは売主側から提出される売渡承諾書についても同じことが言えます。
したがって、仮に買付証明書と売渡承諾書が揃っており、両者が満足していたとしても本契約となっているわけではありませんので、そこに法的拘束力は発生しないことになります。
また、買付証明書についての作成に印紙等の租税は発生しません。
不動産会社によっては作成について手付金をとることもありますが、法的な根拠はありませんので注意してください。作成自体の手数料はともかく、営業手法として費用を請求する場合もありますのでしっかりと確認するようにしてください。
そもそも、買付証明書には法的な拘束力のない、「書面での口約束」ですので、それだけでは何の意味も持たない場合すらあるのです。
さて、実際買付証明書を提出する場合、売主の希望価格そのままであればすぐに契約は成立できるかもしれません。しかし、この買付証明書は単に「買う意思」の提示だけではなく、「この価格なら買う」という意思を売主に伝える機会でもあるのです。
1000万円の売り出し価格であっても、「900万円なら資金の算段もつくし、情勢から考えるとその辺りが妥当だ」と感じる場合もあるでしょうし、「800万円ならすぐにでも現金で契約できるのに」という場合もあるでしょう。
このような意思表示を指値での注文と呼びます。
指値での注文についてはまた解説する時がありますので詳細はそちらに譲りますが、取引する価格についても意思を表示することができるのが買付証明書になるわけです。
その上で、売主は売却先として考えられる条件の買付証明書を出している購入希望者へ売渡承諾書を返してくれるわけです。
売渡承諾書についても同様で、買付証明書の条件そのものを受け付ける場合だけではありません。
特に指値で注文を行った場合には取引する価格や手付金などの部分で売主からの注文が発生していることが考えられます。
例えば、1000万円の売り出し価格について900万円の希望を出した場合、断られる場合も多いでしょうが、売主によっては間の950万円を提示することもあるでしょうし、何か事情がある場合にはその条件を飲んでくれるかもしれません。
ただし、値切るわけですので条件が通った場合には購入するのが道義的に筋ですし、そこで断った場合には冷やかしと見られることは確実です。
その売主とはその時限りの関係かもしれませんが、不動産会社などの仲介を頼んでいる場合、その仲介者に対しても失礼に当たりますので、細心の注意を払った上で指値を指定するようにしてください。
双方の考え方が違う場合でも、調整できそうな場合は条件の書いた売渡承諾書か、直接の連絡があります。このやりとりが1往復で終わらない場合もあります。
その場合、何度かのやりとりを行う場合もあれば直接交渉する場合もあります。あるいは、売主と買主が双方仲介する不動産会社を立てて、その会社が交渉することもあります。
その末におたがいが納得できる条件になってはじめて契約にたどり着くわけですので、最終的な合意には若干の期間が必要となります。