不動産投資における利回りとは
投資を行うにあたって、投資額に対してどの程度の見返りができるかを判断する材料が「利回り」になります。
証券投資、特にこの言葉を用いる債券投資と不動産投資ではその算出と実体が異なり、勘違いに陥る可能性が最も高い分野ですので注意する必要があります。
債券投資において「利回り」といった場合、投資額に対して一年でどの程度配当があるのかを示す割合になります。
例えば、年金利5%で100万円の債券を購入し、5年後に105万円で売却する場合を考えてみましょう。
この場合、100万円の投資に対して5年後の売却時点で
(100×0.05)×5+105=130万円
の金額が戻ってきます。利益は
130−100=30万円
したがって1年あたりにすると
30÷5=6万円
ですので、利回りは6%(6÷100=0.06)となります。
これは物価水準を考えていない名目利回りで、金利変動もない条件での計算ですが、債券である以上これが大きく揺れることは多くはありません。
それに対して不動産投資における利回りは、例えば表面利回りであれば
(表面利回り)%=(年間家賃収入)÷(物件価格)×100
で求められます。
これは最も単純な表面利回りの計算となりますが、本来これに諸経費が加えられて実質利回りとなり、それが他の投資と同様に「利回り」として表されることになります。
さて、お気づきでしょうか。問題はこの「年間家賃収入」という部分なのです。通常、収益物件について表される利回りは、入居者が常にいる状態の想定される最大の家賃収入から算出が行われています。
したがって、利回りがどれ程高くても入居者がいない場合家賃はゼロになりますので、どれ程利回りが高くてもその物件自体に魅力がなければ想定される収益は見込めません。
逆に、利回りがそれほど大きくなくても常に入居者が殺到する魅力的な物件ならば大きな収益を期待することもできるのです。
特に、不動産投資は他の投資よりも利回りが大きく算出されますので、一見収益性が高いように判断してしまいがちですが、不動産物件の特殊性をしっかり理解していないと想定よりも収益が下回るどころか逆に赤字を毎月生み出すお荷物資産となってしまう場合もあるのです。
さらに、利回りについても、算出方法が幾つかありますので、それらをしっかり理解して、どんな計算でその数値が求められているか程度は理解しておいたほうが余計なトラブルや気苦労を未然に防ぐことができます。
表面利回りについて
先ほども紹介いたしましたが、不動産投資において最も基本であり単純な計算によって求められるのが表面利回りになります。グロス計算などと表現したりしますが、グロス(Gross)とは日本語で「粗い」という意味になります。余談ですがGDPのGもこのGrossを表しています。
再度計算方法について説明しますと、
(表面利回り)〔%〕=(年間家賃収入)÷(物件価格)×100
となります。正確な実態を表さず、当てにならないように感じるかもしれませんが、物件ごとを大雑把に比較していくときや、物件のおおよその概要を広く調べるときなどは、算出が簡単な分、情報を大量に分析できるこの計算は非常に便利になります。
また、年間家賃収入については「現在の月単位収入」なのか「全て満室の場合」なのかも注意が必要です。
この表面利回りは予想利回り、想定利回り、単純利回りなどと呼ばれることもありますので注意してください。特に次に説明することとなる「想定利回り」は何を想定されて算出しているかが重要になります。
想定利回りについて
想定利回りも先ほどの表面利回りと基本的には同様の考え方で算出されています。
したがって、おおよその値となることは確かなのですが、さらに、通常想定利回りの場合には年間家賃収入自体の値も実際の物件の現状と異なっている場合もあります。
一般的に想定利回りでの家賃計算について、周辺の一般的な相場から算出されてる場合がほとんどです。あるいは、現在の空室での設定家賃や入居中の家賃が参考とされています。
この時、入居者との相談や契約更新で現状の家賃が小さくなる場合も考えられるのです。
通常、表面的な相場と実際の相場が異なっている場合も少なくないため、「想定」とはいうもののその物件の最大利回りである場合がほとんどとなるわけです。
逆に、理想的な状態での利回りとして参考にしながら入居状態との兼ね合いでどの程度まで落とせるのかを判断することもできる指標だといえるでしょう。
実質利回りについて
実質利回りは先程までのグロス利回りとは異なり、実際にかかる経費を計算に入れての算出になります。
したがって、表面利回りよりは実情を表していますが、それでも、入居者の状況までは予測できないことは覚えておきましょう。
実質利回りについての計算は、
(実質利回り)=(年間家賃収入−年間諸経費)÷(物件価格)×100
によって求められます。
算出に加わった要素の「年間諸経費」については、大きく分けて、「ランニングコスト」と「租税公課」「士業報酬」に分けられます。
「ランニングコスト」については、日常メンテナンスのための管理費と必要に応じて大きな補修を行うための修繕積立金になります。また、物件管理を代行してもらっている場合、さらに賃貸管理代行手数料も含まれます。
「租税公課」に相当するものとしては、「固定資産税」「都市計画税」及び「火災保険料」になります。
また、契約時に必要となる司法書士への報酬や、税理士、弁護士に相談をしながら運用する場合には、その費用も含まれます。
さらに、表面利回りと実質利回りのズレについてもおおよそ予想ができるようにしておくと物件の選択がしやすくなります。
古い物件の場合、本体価格が低下しても家賃相場自体は大きくは変化しないため表面利回りは高くなる傾向がありますが修繕費はそれだけかかるため実質利回りは大きく下がります。
新しい物件の場合は本体価格が大きく、修繕費が小さいため、表面利回りと実質利回りの差は小さくなる傾向があります。
以上から分かるように不動産投資の場合、物件情報として表される表面利回りと諸経費を織り込んだ実質利回り、そして実際の収益はお互いに大きく異なる場合があることを頭に入れておくようにしましょう。