
預金はあるけれど少しの間だけお金を借りたい、ローンを組むことに抵抗がある、ローンを組むほどの借入額ではないなど、お金が必要になるケースはさまざまです。
そのようなときに役立つのが、定期預金を担保にして借入れる当座貸越です。当座貸越の仕組みと利用方法を知って、預金を利用した賢い借入れを行いましょう。
手軽に利用できる便利な借入れ方法
お金を借入れる方法で、最も簡単に利用できるのが定期預金を担保にした当座貸越です。当座貸越を利用するためには、銀行に総合口座を開設し、定期預金を預け入れます。
借入れ可能額は、一般的に定期預金残高の80%もしくは90%までとされており、金融機関によって違いがあります。80%まで借入れられるなら、定期預金の残高が100万円あるときには80万円まで借りられます。
普通預金がマイナスになっても定期預金があれば自動的に借入れることができるのも特徴です。
借入れの上限は、200万円もしくは300万円まで。限度額は個人あたりの限度額ではなく、1通帳あたりの限度額となっています。
定期預金を担保にした貸付は、銀行や信金や信組、労働金庫やJAやネット銀行、ゆうちょ銀行など、ほとんどの金融機関で取扱っています。
個人向け国債などの債券も担保にできる
定期預金のほか、個人向け国債などの債券を保有していても、当座貸越を利用することは可能です。担保として利用できる債券は、利付国債、政府保証債、地方債、割引国債です。
債券によって貸出割合が決まっており、利付国債、政府保証債、地方債は額面の80%まで、割引国債は60%までとなります。
利用限度額は200万円までになります。たとえば、額面が100万円の利付国債と額面150万円の地方債があるときには、それぞれ80%まで借入れることが可能です。
借入れ可能額は、それぞれ80万円、125万円です。限度額は合わせて200万円ですので、200万円まで借入れることができます。
額面100万円の政府保証債と額面200万円の割引国債を保有している場合には、政府保証債は80%、割引国債は60%となりますので、借入れ可能額は、政府保証債は80万円、割引国債からは90万円となりますので、170万円まで借入れることができるようになります。
当座貸越の貸付割合と貸付上限
商品名 | 割合 | 貸出上限 |
---|---|---|
定期預金 | 残高の80%もしくは90%まで | 200万円もしくは300万円まで |
利付国債 政府保証債 地方債 |
額面の80%まで | 200万円まで |
割引国債 | 額面の60%まで | 200万円まで |
定期貯金 定額貯金 |
90% | 300万円まで |
借入利率と返済方法
定期預金を担保にしたときの当座貸越の借入利率は、定期預金の利率に0.5%上乗せした利率が適用されます。複数の定期預金があるときには、利率の低いものから適用される仕組みになっています。
総合口座の返済方法は、別途、返済口座などを設けるのではなく、普通預金の口座に入金をします。預金通帳では当座貸越の残高表記はマイナス表記になっていますが、普通預金の残高がマイナスを上回れば、通常の表記に戻ります。
利息の計算は、毎年2月と8月に行われ、1年365日の日割り計算で100円単位です。貸越があるときには貸越に組み込まれますが、返済済みのときには普通預金から引き落とされる仕組みになっています。
ゆうちょ銀行は、定期貯金を担保にしたときの利率は定期貯金の金利に0.5%上乗せした利率が適用されます。定額貯金を担保にしたときの利率は、返済時の約定利率に0.25%上乗せした金利が適用されます。
複数の定期貯金があるときには、①貸付期間が最も長いもの、②貸付金利が最も低いもの、③貯金の個別番号の大きいもの、の順で貸付が行われます。
複数の定額貯金があるときには、①貸付期間が最も早く満了するもの、②貸付金の金利が高いもの、③貯金の個別番号の小さいもの、の順で貸付を行います。
利息は1年365日の日割り計算です。
アイディア次第で豊富に活用できる
○○ローンといった名称の専用ローンの場合、利用するときには明確な目的や資金の用途が必要になりました。一方、当座貸越は、自動的に貸付が行われますので資金の用途は問われません。
カードがあれば、いつでも好きなときに普通預金口座から引き出すことができますので、スピーディで手軽に利用できる貸付といえるでしょう。
多くの人が普通預金からクレジットカードの引き落としや公共料金の引き落としや家賃の支払いサービスを利用していると思います。
定期預金の貸付なら、普通預金の残高が足りなくなっていても自動的に貸越になるため、わざわざ入金のために銀行へ出向かなくてもいいのです。
今月は出費が多くてピンチ! というときにも大いに役立つ心強い味方が当座貸越という方法です。