基本の売買は売切り、買切り
債券の売買の基本は、株や商品などと同様、単純に個々の銘柄を売買する形のものになります。これを「売り切り」「買切り」と言います。
売り切り、買切りは、基本的な売買スタイルではありますが、債券の運用を専門に行う法人のプロ投資家等は、複数の銘柄を組み合わせて同時に売買することがよくあります。
このような売買方法を入替売買といいます。
入替売買について
入替売買とは、保有する債券のうち、一銘柄または複数の銘柄を売却し、その代わりに別の一銘柄または複数の銘柄の債券を購入する売買を、同時に約定する取引のことを言います。
入替売買を行う目的には、リターンを向上させる場合と、リスクを低減させる場合があり、入替売買を通して、ポートフォリオの構成を組替えるのです。
金利予想に基づく入替
今後、市場全体の金利の低下が予想される場合に、短期債から中長期債への入替えを行います。金利が低下するということは債券価格は上昇しますが、中長期債の方が価格変動性が大きいため入替を行います。
反対に、金利が上昇し、債券価格の下落が予想される場合は、中長期債から価格変動リスクの低い短期債への入替えを行います。なお、この入替売買は、予想が外れた場合には大きな損失を被ることになります。
最終利回りアップの入替
短期金利より中長期金利の方が高い順イールド(短期金利より長期金利の方が高い状態)であるとき、短期債から中長期債への入替えや、流動性の低い銘柄への入替えを行い、最終利回りのアップを図ることができます。
最終利回りの向上を図る入替えは、中長期債の比率が高くなるため、金利変動リスクを高めます。また、流動性の低い銘柄への入替は、換金性が悪化するリスクがあり、また、債券ポートフォリオの信用リスクが上昇する可能性があります。
直利アップの入替
法人投資家の中でも、期間収益を重視する場合は、債券ポートフォリオの直利を高めるために、直利の低い(利率の低い)銘柄を直利の高い(利率の高い)銘柄に入替ることがよくあります。
時間差入替
債券の売却時期と、入れ替えを行う債券の購入時期をずらします。
売付けを先行させるものを「時間差入替」、買付けを先行させるものを「逆時間差入替」といいます。
流動性アップの入替
資金需要が発生した場合に換金性を高めるため、社債などの流動性の低い銘柄から、国債などの流動性の高い銘柄への入替えを行います。この場合、一般的に、債券ポートフォリオの最終利回りが低下することになります。
着地取引について
着地取引は、受渡日が約定日の翌月の応当日以降、6ヶ月以内の取引のことです。店頭取引の債券の売買の受渡日は、当事者間での合意があれば原則自由なのですが、受渡日を先にするほど信用リスクが高くなります。
着地取引を行う場合、日本証券業協会による「債券等の着地取引の取扱いに関する規則」従わなくてはなりません。
着地取引ができる投資家は決まっており、上場会社またはこれに準じる法人など、社会的、経済的に信用のあるものに限定されます。個人は着地取引を行うことはできません。
また、着地取引ができる債券は、国債、地方債、特別債、特定社債、これらの性質を有する外国証券などです。
スプレッド取引について
残存年数が同じくらいの債券だったとしても、債券の種類や信用リスク、利率の違いにより最終利回りは異なります。この最終利回りの差は、拡大・縮小します。
例えば、利回り差の動向を捉え、利回り格差が拡大した場合は、利回りの高い方の債券を購入するとともに、利回りの低い方の債券を売却し、利回り格差が縮小したら反対売買するという取引が行われることもあります。