仕組債とは
仕組債とは、スワップやオプションなどのデリバティブを組み込んだ特別な仕組みを持つ債券のことです。
これらデリバティブを利用することで、投資家や発行者のニーズに合うキャッシュフローを生み出すのです。このような仕組みを利用することで、満期や利子などを比較的自由に設定することができます。
そのため、仕組債は利率、償還時期、償還金が通常の債券とは異なる形態となっています。
仕組債は主に海外の金融機関が発行し、日本国内では、証券会社等の金融業者が外国債券として販売しています。
仕組債の発行
仕組債には、仕組債の発行者のほか、アレンジャーやスワップハウス(デリバティブ取引を活発に行う金融機関)などの主体が関係しています。
証券会社等がアレンジャーとなり、投資家がどのようなキャッシュフローを望むのかなどを勘案し、仕組債をアレンジします。
仕組債の発行者は、リスクヘッジの目的でスワップハウスとの間でカバー取引をします。
こうすることで、仕組債の発行者は、固定金利やLIBOR(イギリスのロンドン市場での資金取引の銀行間平均貸し手金利)等の変動金利と同じ効果をもたらすことができるのです。
EB債
他社株転換債は、特定銘柄の株式の値動きに連動して、償還条件が変わる債券です。
EBとは、Exchangeable Bond (エクスチェンジャブル・ボンド)を略した名称です。
普通の債券は、満期日に「額面+金利」が償還されますが、EB債は、対象銘柄株が設定水準より下がると、満期日に「株式+金利」が償還されます。
EB債の償還は、
満期日の株価が設定水準より高い場合…元本+金利
満期日の株価が設定水準より低い場合…株式+金利
という形で行われます。
これだけでは、株主にどんなメリット・デメリットがあるのかが分かりにくいので、例を挙げて説明します。
例えば、A社の個別株式オプションを組み入れたとします。
株式の行使価格が5,000円の場合、金融機関は債券を発行し、投資家から5,000円を受取ります。オプション取引は権利の売買をする取引ですので、この場合、金融機関は投資家から、オプション行使日に株式を5,000円で売却する権利を購入した、ということになります。
この時のクーポン(利子)レートを5%に設定するとします。このクーポンレートは、通常のクーポンレートの相場水準2%に、オプションのプレミアム料を3%上乗せした数字です。
オプション行使日の株価が募集時に決定された行使価格5,000円以上だった場合、金融機関はオプションを放棄します。
なぜなら、もっと高く売れるのに、安く売ることになってしまい、金融機関にとってはメリットがないからです。
これにより、投資家は「元本+金利」を受取ります。この場合、株価が設定水準より大幅に高くなったとしても、償還されるのは「元本+金利」だけです。
そのため、株価が設定水準よりどんなに高くても、利益は常に一定となります。
反対に、株価が5,000円以下、仮に3,000円になったとします。金融機関は市場でA社の3,000円で購入し、オプション行使日に権利行使してA社株を5,000円で投資家に売却します。
金融機関は5,000円-3,000円=2,000円の利益を得られ、投資家は時価3,000円の株式を取得することになります。
そのため、「株式+金利」を受取ることになるのです。投資家は、株価が下がったことで、2,000円の損失が発生したことになります。
EB債は、投資家にとっては、株価が下がれば下がるほど、損失が大きくなってしまうデメリットがあることに気を付ける必要があります。
二重通貨建て外債
二重通貨建て外債は外国債の一種で、払込、利払い、償還が、異なる2種類の通貨で行われる債券のことです。
二重通貨建て外債のうち、払込と利払いの通貨が同じで、償還の通貨が異なるものをデュアル・カレンシー債(二重通貨建債)といい、払込と償還の通貨が同じで、利払いの通貨が異なるものをリバース・デュアル・カレンシー債(逆二重通貨建債)といいます。
例えばリバース・デュアル・カレンシー債については、利払いの際の外貨は、円よりも利率の良い通貨で通常行われます。
そのため円高になると、円転した時の金額が、当初の想定額よりも少なくなる可能性があります。反対に円安になると、当初の想定金額よりも多くなる可能性があります。
このことから分かるとおり、二重通貨建て外債の場合、円貨建てで支払われる部分には為替リスクはありません。しかし、外貨建てで支払われる部分は、為替変動の影響を受けます。
コーラブル債
コーラブル債(Callable Bond)とは、特定の日に債券の発行が繰上償還を行う権利がある代わりに、格付けや期間などが同条件の債券よりも高い利率が設定されている仕組債のことです。
つまり、投資家が受け取る利子が高い代わりに発行体が満期前に償還できる債券と言えます。高い利子を受け取れるものの、満期前に償還される可能性があり、そうなった場合は元本割れを起こすリスクがある債券です。
コーラブル債のコーラブル(collable)という言葉は、「コールできる」という意味ですので、コーラブル債は、投資家が発行体に「コールオプションを売る」ということになります。
コールオプションとは買う権利のことですので、発行者は自分が有利な時に買い戻すことができてしまう、ということになります。
そのため満期を迎えず途中で買い戻される可能性があるわけです。満期までの期間、高い利子が受け取れるはずが、途中償還されてしまったせいで、想定よりも利子を受け取れず、元本割れにもなる、ということもあり得るのです。
コーラブル債の発行体は、他の金融機関にコーラブル・スワップを売り、投資家に支払う利子を得ます。
発行体は、期間の違うコーラブル・スワップを組み合わせて、スワップのオプションという形で金融機関に売却します。これにプレミアムがつきますので、このプレミアム分を含めることで、市場より高い金利を投資家に支払うことができているのです。
なお、金融機関はスワップ契約の解約権を持っています。そのため、金融機関が金利低下により権利行使してしまうと、金利スワップ契約は解消してしまい、発行体は投資家に金利が払えなくなるのです。そうなると、コーラブル債は、投資家に途中償還されてしまいます。
リンク債
リンク債とは、デリバティブを使って組成した仕組み債の一種。ある対象にリンク(=連動)して価格が上下する。日経平均株価に連動する「日経平均リンク債」や金価格に連動する「金リンク債」など、連動する対象は多数ある。
例えば日経平均リンク債について見てみたいと思います。日経平均リンク債は、基準日からの日経平均株価の変動率等によって償還金額や利率が変動する債券です。
日経平均リンク債には、償還金額が変動するものや、利率が変動するものがあります。
償還金額が変動する日経平均リンク債は、株価観察期間中に日経平均株価があらかじめ決められた水準以下となり、最終評価日の日経平均株価があらかじめ決められた価格を下回った場合、日経平均株価の下落率により、償還金額が減ります。
このタイプの場合、額面金額ではなく、日経平均株価の変動に連動して償還金額が変動することになる、ということです。
なお、「株価観察期間中に日経平均株価があらかじめ決められた水準以下となること」を「ノックイン」いい、「あらかじめ決められた水準」のことを「ノックイン価格」といいます。
一方、利率が変動する日経平均リンク債については、償還金額は日経平均株価の変動に左右されず、額面金額で償還されます。
ただし、利率決定日における日経平均株価があらかじめ決められた基準価格以上となった場合は高い利率が適用され、基準価格未満の場合は低い利率が適用されます。
このタイプの場合、期中の日経平均株価の変動により、債券の利率が変動することになります。
通常、日経平均株価が一定水準(早期償還判定水準)以上となった場合は、債券が早期償還される「早期償還条項」がついていつものが多いようです。
日経平均リンク債については、相場がノックイン価格に近づくと先物の売りを誘い、相場の下落を加速させる可能性も指摘されています。