ボラティリティとは何か

オプション取引は、そもそも「相場が今後どう動くか分からない」ということから出発しているため、根幹には確率統計の考え方があります。

今後の動きを数字にした時、その数字の散らばりの度合いを測るのが、標準偏差というものになります。この標準偏差は、平均値からの差の各数値を二乗して総和を求め各数値の個数で割り、√を使って平方根を求めたものです。

例えば、1から10の自然数があるとします。これらの数の平均は、(1+2+・・・+10)÷10=5.5
になります。この数字5.5と各数字との差は、-4.5、-3.5・・・3.5、4.5となります。

これらの数をそれぞれ二乗し、和を求めると、82.5になります。これを自然数の個数10で割ると8.25になり、この平方根を求めると、約2.87になり、これが1から10までの数字の標準偏差になります。

そして、この標準偏差がボラティリティです。

この標準偏差が大きいとボラティリティが大きく、標準偏差が小さいとボラティリティが小さい、ということになります。ボラティリティはリスクを測る物差しとしても使われているのです。

このボラティリティですが、実際にトレードする際、どのように活用すれば良いでしょうか。

ボラティリティは、原市場価格の上下いずれかの方向への変動性向と定義されています。そのため、ボラティリティが30%であれば、原市場価格が変動しても、1年間のうちに67%以上の確率で、上下30%の範囲内に収まる、ということを意味しています。

ですので、例えばある会社の株価が1株1000円で、この株のボラティリティが30%の場合、この株は、これから1年間のうちに、700円から1300円の範囲内で変動する可能性が67%以上、ということを表しています。

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出典:Bloomberg(2014年10月17日付「【今日のチャート】米ボラティリティ拡大、株式が債券に先行」より)

2つのボラティリティがある

ボラティリティには2種類あります。それは、ヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティの2つです。

ヒストリカル・ボラティリティは、過去の原市場の平均変動率のことです。オプションの理論価格は、ヒストリカル・ボラティリティを元に算出されています。過去の日数によって異なってきます。

インプライド・ボラティリティとは、将来の変動率についての市場の予想を表したものです。このインプライド・ボラティリティは、実際のオプション取引で重要になってきます。

また、インプライド・ボラティリティは、プレミアムが相対的に割高か割安かを示す指標になります。インプライド・ボラティリティが高ければプレミアムが高くなり、インプライド・ボラティリティが低ければ、プレミアムも低くなります。

インプライド・ボラティリティは常に変化しているため、上昇、下降のトレンドを形成しますが、基本的には一定の範囲を行き来しています。

また、インプライド・ボラティリティは、貴金属や農作物、エネルギー等のコモディティのオプションは、原市場価格の上昇時にインプライド・ボラティリティが上昇する傾向があります。

株式や株価指数が原指数のオプションは、原市場の下落時にインプライド・ボラティリティが上昇する傾向にあります。

ボラティリティの特徴

ボラティリティには様々な特徴があります。まず挙げられるのは、トレンドや一定のレンジを形成するということです。株や為替、商品などと同様、ボラティリティにも短期・中期・長期のトレンドがあり、上昇トレンドや下降トレンドを形成します。

また、一定のレンジ内で上下を繰り返す性質があります。

ボラティリティには銘柄による季節性があります。これは、特に穀物商品、例えばコーンや大豆などに顕著で、需要期である春にはボラティリティが高くなり、収穫期の秋に安くなるといった傾向があります。

穀物市場のボラティリティは、夏に向けて上昇し、夏を過ぎると低下する、というのが一般的です。

また、ボラティリティは銘柄や市場によって異なる、相対的なものです。例えば、下記は為替のボラティリティです。通貨ペアごとにボラティリティが異なることが分かります。

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出典:Yahooファイナンス(2015年10月21日)

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出典:日本取引所グループ 月刊ETF・ETNレポート(2015年9月版)

このようにボラティリティは銘柄や市場によって異なり、絶対的な数字ではないのです。そのため、ボラティリティ20%という数字が、ある銘柄では非常に高い数字になり、別の銘柄では低い数字になるのです。

また、ボラティリティは満期までの期間や権利行使価格によっても異なります。満期が近いと、ボラティリティが高くなる傾向にあります。

特に、穀物や原油等、商品市場ではこの傾向が顕著で、原市場価格が急上昇したり急落する場合、期近限月のコールやプットが買われるため、満期までの期間が短いものほどボラティリティが高くなります。

権利行使価格については、相場の状況によって、行使価格によって、ボラティリティが上下します。

なお、ボラティリティはコールとプットで異なります。同じ銘柄の同じアット・ザ・マネー、あるいはアット・ザ・マネーから同じ価格だけ離れたアウト・オブ・ザ・マネーのコールとプットのボラティリティには大きな違いがあることがよくあります。

これは、コールがプットに対し、割高か割安の状態にある場合によく見られる現象です。

オプションのボラティリティは通常、緩やかに上下します。ボラティリティの下落時には緩やかに下落して、次第に横ばいになっていきますが、ボラティリティの上昇については、急激な上昇を見せることがあります。

例えば1990年の湾岸戦争時の原油価格や金市場は、ボラティリティが数倍も上昇しました。

また、相場の変動と同じく、ザラ場のボラティリティも大きく変動することがよくあります。基本的にボラティリティは毎日のプレミアムの終値を元に算出されますが、プレミアムは日中の相場の変動に伴い、変動します。

そのため、ボラティリティが日中に大きく変動して本来の数値から乖離することがあります。