ファンダメンタル分析の基礎的要因

FXのファンダメンタル分析とは株のファンダメンタル分析とは違い、その通貨を発行している国の景気や財務内容、経済政策などの経済的要因から、その国の今後の経済の見通しを予想したものになります。

ファンダメンタル分析の場合はほとんどチャートなどは見ずに、経済的要因だけから分析します。

FXのファンダメンタル分析で重視されるのは、景気、貿易収支、物価、金利、通貨政策です。

景気については、実は日本の景気は為替相場ではそれほど重要ではありません。

為替相場で重要なのは米国の景気です。

特に重要なのは、米国の雇用統計です。米国の雇用情勢が悪化すると、円高ドル安になる傾向があります。反対に、米国の雇用情勢が改善すると円安ドル高成る傾向にあります。

貿易収支についてですが、日本の貿易黒字が増えれば円高、逆に貿易黒字が縮小または赤字に転換すれば円安になる傾向があります。

物価についても重要なのは米国の物価です。米国の物価高は金利上昇要因です。

反対に日本の物価が上昇していなければ、日米の金利差が拡大したということで、米ドルが買われることが考えられます。

ただし、米国の物価上昇が消費を抑制する等の理由で、米国の景気が冷え込む要因になる場合は、米ドルは売られます。

金利についてですが、やはり重要なのは米国の金利ですが、例えば日本とオーストラリアなど、日本と相手国との金利差が拡大すれば、金利水準の高い国の通貨が買われやすくなります。

通貨政策について、最も注目されるのは基軸通貨である米ドルです。

米国財務省のドルに対する方針によって、為替相場は大きな影響を受けます。米国が今後、強いドルを重視するのか、それともドル安を容認するのかにより、円相場も大きく変化し、長いトレンドを形成することもあります。

このように、様々な要因が為替相場を動かします。

なお、過去に同じことや類似した出来事があった場合、その時に為替相場がどのように動いたかをマーケット参加者が分析して、その時の動きを織り込んでいることもあるため、予想よりマーケットが反応しないこともあります。

FXのテクニカル分析

FXのテクニカル分析では、基本的に株と同じようにチャートが用いられます。株でもよく使われるローソク足がFXでも主流です。

分足、時間足、日足など、株と同様、期間によって様々なローソク足チャートが使われています。使われ方も株と同じで、短い期間を見たければ、分足や時間足などを見ますし、長い期間を見る場合は月足などを見ます。

為替市場は規模が非常に大きいため、株式市場よりも市場参加者が多いのが特徴です。

世界中に取引参加者がいるため、株に比べ、より多くの取引参加者によって価格が決められていると言えます。

また、為替の場合は、チャートも同じパターンを描くことが多いのが特徴です。

その理由として考えられるのは、市場参加者が過去のチャートを分析して投資する傾向がある、ということです。現在のレートと過去のレートを比較し、今のレートが割安なのか割高なのかを判断します。そのような取引参加者が多いために、同じようなチャートパターンになりやすいと考えられているのです。

為替レートは要人発言や経済指標等でも大きく動くことから、ファンダメンタルズだけでレートを割り出すのは限界があります。

そのため、機関投資家やヘッジファンド等、プロ投資家もテクニカルを取り入れて、テクニカル分析による売買判断を行った上で取引をしています。

FXの場合は株と違い、個人から機関投資家まで、テクニカル分析にも重点を置いており、テクニカル分析での売買判断を行っています。そのため、テクニカルに市場参加者の心理が反映されやすく、テクニカル分析が非常に有効なのです。

テクニカル分析1 ボリンジャーバンド

FXでよく使われるテクニカル分析の一つがボリンジャーバンドです。
この指標は、1980年頃、アメリカの投資家のジョン・ボリンジャー氏が考案した指標で、移動平均を表す線と、その上下に値動きの幅を示す線を加えた指標です。

ボリンジャー氏は、統計学の標準偏差と正規分布の考え方に基づき、株価の大半がこのバンド内に収まることを表す、ボリンジャーバンドを開発しました。

標準偏差とは、ある期間内の価格が、期間の平均値と比較し、どの程度分散しているのかを求めたものです。

この株価の5日間の終値は、平均すると102円です。

日数 終値
1日目 100
2日目 90
3日目 105
4日目 115
5日目 100

そして、各終値が平均値からどれだけ離れているかを絶対値で示すとこのようになります。

日数 平均値との差
1日目 2
2日目 12
3日目 3
4日目 13
5日目 2

標準偏差は、この平均値との差を二乗して総和を求めたうえで期間数5で割り、√を使って平方根を求めます。

この例の場合だと、2の二乗×2と3の二乗、12の二乗、13の二乗をプラスしたものを5で割ります。その後√で平方根を出すと、約8.12が標準偏差になります。

なお、標準偏差はσ(シグマ)と呼び、「平均値±標準偏差」が±1σ線、「平均値±標準偏差×2」が±2σ線です。

この標準偏差を、統計学の「正規分布」に当てはめてみると、価格の変動が、±1σに収まる確率 = 68.26%、±2σに収まる確率 = 95.44%、±3σに収まる確率 = 99.73%になることが証明されています。

ボリンジャーバンドの中心となるのが、移動平均線です。

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このチャートには株の周りに合計5本の線が表示されていますが、真ん中の線が移動平均線です。その周りの上下2つの線がボリンジャーバンドです。

株価は上下しますが、移動平均線あたりで株価が推移していることが多く、移動平均線から極端に離れることはさほど多くない、という考えに基づいているのがボリンジャーバンドです。

そのため、移動平均線からの乖離が大きくなった時、ボリンジャーバンドより高い位置に株価が来た場合は売り、逆に、ボリンジャーバンドより安い位置に株価が来た場合は買いという逆張りでよく使われます。

ボリンジャーバンドの中央には移動平均線がありますが、統計学的にその移動平均線の上下の線の間で株価が動く確率が、

移動平均線から一番近い上下線の間で株価が動く確率(1次標準偏差、1σ)=約68.3%
移動平均線から二番目の上下線の間で株価が動く確率(2次標準偏差、2σ)=約95.5%
移動平均線から三番目の上下線の間で株価が動く確率(3次標準偏差、3σ)=約99.7%

ということです。

ボリンジャーバンドは「順張り」と「逆張り」のどちらにも使えます。
具体的には、

①為替レートがバンドに対し、どの位置にあるか?
②バンドは、収縮と拡散のどちらの状態か?

ということに注目します。

①については、逆張りをする際の重要な判断ポイントになります。「為替レートが+2σを越えたら上昇し過ぎなので売り、-2σを越えたら下落し過ぎなので買い」という判断をするのが一般的です。

②については、「バンドの幅が広がって為替のボラティリティ(価格の変動率・値動きの激しさ)が急上昇しているので、その方向性についていく」といった順張りの際の判断材料になります。

なお、①の逆張りで使う場合、バンドの幅が拡大から収縮へと向かう瞬間や、別のオシレーター系指標を併用しながら売買シグナルの制度を高める必要があります。

また、②の順張り手法の場合、レンジ相場等であまり動きがない状態から、上下どちらかに大きく動き始めた時に有効です。逆に、規則正しい相場や動きの激しい状態から小休止した相場の場合は、あまり効果的ではありません。

テクニカル分析2 MACD

MACDはMoving Average Convergence and Divergence の略で、1960年代にジェラルド・アペル氏によって開発されました。

このMACDは、日本語に訳すと「移動平均収束拡散」と言い、期間の異なる2本の指数平準移動平均線(短期移動平均線と調金移動平均線)の価格差の伸縮を見て、トレンドの方向性と変化を見るものです。

そのため、パーセンテージではなく、実際の株価の値幅が単位になります。指数平準移動平均は、直近の価格に重みを付ける分析手法なので、MACDは移動平均線より早めに転換点を示すのが特徴です。

短期移動平均線が長期移動平均線を上回っているのは、株価の上昇力が強いことを表しており、この時MACDはプラスを示します。MACDがプラスの時は、上昇トレンドです。逆にマイナスの場合は下降トレンドになります。

短期移動平均線が長期移動平均線を上回っているのは、株価の上昇力が強いことを意味しており、逆に短期移動平均線が長期移動平均線を下回っているのは、株価が下降する力が強いことを示しています。

つまり、短期移動平均線>長期移動平均線の場合、MACDはプラス、短期移動平均線<長期移動平均線の場合、MACDはマイナスとなります。そのため、MACDが0以上であれば「上昇トレンド」と判断でき、マイナスであれば下降トレンドと判断できます。

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MACDは移動平均線よりも早い段階で「トレンドの転換」を判断できます。さらに、MACDとその移動平均線であるシグナル線という2本の線の交差を売買判断に使うことで、トレンドの行き過ぎをとらえた逆張り的な売買手法としても使うことができます。

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MACDは、上昇、下降、横ばいのいずれの場合も、相場が一定のトレンドを持ちながらある程度定期的に上下動している状態で使うのがベストと言えます。
このことから、

(1) MACDがプラス圏かマイナス圏かでトレンド判断

(2) MACDが上昇しているか下落しているかでトレンドの勢いを観察

(3) MACDとシグナル線のクロスやMACDのプラス(マイナス)転換でエントリー

(4) MACDが反転した時点で利益確定

という手順で売買するのが理想的なトレードと言えます。

テクニカル分析3 グランビルの法則

移動平均線の生みの親であるアメリカのチャート分析家J・E・グランビルは、グランビルの8法則を提唱しました。

この法則は、株価と移動平均線の位置関係に注目して売買のポイントを8つにまとめたものです。

このグランビルの法則も、FXではよく使われています。グランビルの法則は、このようなものです。

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●買い局面
①移動平均線が下降の後、横ばい、あるいは上昇している時、株価がその移動平均線を上抜けたら買いサイン。

②株価が、上昇中の移動平均線を下回った時、平均線の上昇に変化がなければ押し目買い。

③株価が上昇する移動平均線の上にあって、平均線に向かって下降し、平均線を割り込まずに再上昇したら、買い乗せ。

④平均線が下降していて、かつ、株価が大きくかけ離れて下落した場合、自立反発の可能性が大きく、短期の買い場。

●売り局面
⑤移動平均線が上昇の後、横ばい、あるいは下降している時、株価が平均線を下抜けたら売りサイン。

⑥株価が、下降中の移動平均線を上回った時、平均線の下落が止まらないようであれば、戻り売り。

⑦株価が下降する移動平均線の下にあり、平均線に向かって上昇したものの、平均線を抜けることなく再度下落する場合は、売り乗せ。

⑧平均線が上昇していて、かつ、株価が大きくかけ離れて上昇した場合、自立反落の可能性が高く、短期の売り場。