FXはどんなものか
FXとは、外国為替証拠金取引のことで、Foreign Exchangeを略した名称です。
株よりも手軽でルールが簡単ということもあって、爆発的に広がったFXですが、以前は個人での取引はできませんでした。
しかし、1998年に外国為替及び外国貿易法が改正されたことにより、個人もFX取引ができるようになったのです。
これにより、FX取引を提供する会社が誕生したことで、あっという間に広がり、今では金融商品の一つとして、メジャーになりました。
現在では様々な証券会社やFX専業会社等で、多種多様なサービスが提供されているFXですが、黎明期はまさに玉石混合で、中には悪質な会社もありました。
顧客に過剰な売買を勧めたり、顧客の資金を勝手に運用するなどの問題が頻繁に起こったため、これを重くみた金融庁が2005年に金融先物取引法を改正し、大幅な規制を行ったのです。
現在では当たり前になった自己資本規制比率や不招請勧誘の禁止などといったルールがこの時に布かれ、悪質な会社は激減しました。
その後、FXは株などよりも手軽に行える投資の一種として、知名度を増しました。実際にFXで儲けたなどといった本が数多く出版されるなど、投資商品の一つとして浸透しています。
そんなFXですが、現在店頭取引と取引所取引の2種類があります。
そもそもFXには、株のような取引所取引はありませんでした。ずっと店頭取引が主流だったのですが、悪質な業者が多発したことから、2005年に金融先物取引法が改正されたことを受け、東京金融取引所により「くりっく365」と呼ばれる外国為替の取引所取引が誕生しました。
FXはレバレッジがかけられる
FXにはレバレッジという仕組みがあります。これは何かというと、てこの原理のことです。
FXの場合、証拠金を差し入れることで、証拠金の何倍かの外貨を取引できます。小さな力で重いものを動かせるてこのように、レバレッジを使うと少ない証拠金で大きな金額の取引ができるようになるのです。
例えば、1ドル100円の時に1万ドルを買う場合、通常は100万円必要になります。
しかし、FXの場合はレバレッジを使うことができますので、例えば10倍のレバレッジをかけた場合、10万円の証拠金で1万ドルを買うことができるのです。
なお、FXは現物決済ではなく差金決済となっています。ですので、損失が出た場合は差し入れた証拠金から損失額が引かれます。また、利益が出た場合はそのまま反対売買をして手仕舞えば、その利益が証拠金に加算されます。
FXでかけられるレバレッジは、日本の場合、現在は25倍が限界となっています。以前は200倍、300倍などといった高レバレッジを提供する業者が多数ありました。
例えばレバレッジ200倍の場合、1ドル100円の時に1万ドル買うのに、5千円の証拠金を差し入れるだけで取引可能になります。1ドル100円が101円と円安方向に進めば、1万円の含み益となり、ここで反対売買すれば口座残高は1万5千円に増えます。
しかし、この時1ドルが99円と円高方向に進むと、差し入れ証拠金から損失分の1万円が引かれます。
しかし、証拠金は5千円しかないので、口座はマイナスになってしまいます。このように口座がマイナス(赤残と言います)になった場合、追加証拠金が必要になります。
しかし、この追加証拠金が払えずに、FX業者と顧客との間でトラブルになるといった問題が多発しました。
また、小さな金額で大きな金額の取引が出来てしまうことから、ギャンブル感覚で取引する人も出てくるなど、様々な問題が発生しました。そのため、金融庁がレバレッジ規制をかけたのです。
2010年8月にレバレッジは最大50倍に、2011年8月からは最大25倍に規制が強化されました。なお、このレバレッジ規制はあくまで個人がFX取引を日本国内で行う場合の話になります。
これが法人の場合は規制の対象外となり、さらに海外業者のFX取引については、日本国内のレバレッジ規制対象外となります。
ただし、海外業者については、出金できないなどといったトラブルが起こったり、日本語のサポートをしていない等のリスクがあることに留意すべきでしょう。
FXは相対取引
店頭FX取引は、それを提供している会社(証券会社、FX専業会社等)から提示されたレートで取引することになります。そのため、同じドル円であっても、業者の提示レートに違いが生じます。
店頭取引は相対取引とも言います。そのため、それぞれの業者で提示するレートが異なることがあり、それは何らおかしなことではないのです。
分かりやすく言うと、店頭FX取引は、スーパーマーケットと同じになります。
例えばスーパーAではあるメーカーの500mlのペットボトル入りのお茶が88円、スーパーBでは同じものが98円で売っていたとします。
これは別におかしなことではありません。店頭取引は市場を介さず売買の当事者同士で売買を行う方法ですので、取引価格は双方の合意により決定されるのです。
そのため、例に挙げたスーパーの例で言えば、スーパーBのお茶が「高い」と感じるのであれば、ここで買わず他の店で買えばよい、という話になります。
これと同じで、店頭取引においては、業者間でレートに差があることが当然であると言えます。
FXの取引所取引
くりっく365は取引所取引になります。2005年に金融先物取引法が改正されたことを受け、東京金融取引所により設立されました。
くりっく365では投資家の最終的な取引相手は取引所になります。くりっく365を取り扱っている証券会社やFX会社は、投資家からの注文を取引所へ取り次ぐのです。
くりっく365では、FX会社が投資家から預かった証拠金は全額取引所へ預託されることになっています。これによって、FX会社が破綻した場合でも、取引所に預託された証拠金は原則投資家へ全額返却されるのです。
くりっく365は複数のマーケットメイカーと呼ばれる銀行や証券会社が値付けを行って、売り気配と買い気配を提示します。東京金融取引所がそのうちの最も安い売値と最も高い買値を合成して、くりっく365の価格として提示しています。
マーケットメイカーになっている金融機関は、ゴールドマン・サックス証券、ドイツ証券、野村證券、三菱UFJ銀行等、世界的な大手金融機関で、店頭取引のFX業者がカバー先銀行として取引しているようなところも複数あります。
店頭取引のFXに比べ提示レートの比較ができて透明性が高いのがくりっく365の特徴ですが、店頭取引よりもスプレッドが広いというデメリットがあります。
ロスカットについて
FXは株のような値幅制限がありません。そのため、どこまでもレートが上がる可能性も下がる可能性もあります。もし、そんなことになったら、損失は計り知れません。
そんな状態になるのを防ぐために、ロスカットという強制決済ルールを各FX会社では設けています。ロスカットは、含み損が大きくなり、ある一定の水準を超えた場合に自動的に行われます。
FXはレバレッジをかけられるため、証拠金額以上の金額の取引ができます。
しかし、そのために、損失が大きくなりすぎる可能性もあります。損失は証拠金から引かれていきますが、その額によっては不足金が発生し、口座がマイナスの赤残と呼ばれる状態になってしまいます。
なお、赤残になった場合は、すみやかに入金して発生したマイナスを埋めなくてはなりません。この不足金については、FX会社に借金している状態と同等になるため、利息が発生します。
このようなリスクを極力避けるためにあるのがロスカットです。ロスカットはFX会社各社で定めた証拠金維持率があり、これを下回るとロスカットされます。証拠金維持率は各社様々ですが、概ね20%~30%程度に設定しているところが多いようです。
スプレッドについて
FXの場合、基本的に取引手数料を設けている会社は少なく、「スプレッド」を設けることによって手数料の代わりとしている会社が多数あります。スプレッドとは、売値と買値の差のことを言います。
FXで売買する時、売値(BID)と買値(ASK)が表示されています。顧客はFX会社が提示する売値で売取引をし、買値で買取引をします。
つまり、FX会社にとっては、顧客の売値は自分の買値、顧客の買値は自分の売値となります。顧客はFX会社の提示する売値でそのFX会社に通貨を売り付け、買値でそのFX会社から買いつけるわけです。
これでは分かりづらいかもしれません。古本屋や中古ゲームソフトのお店での売買を思い出してもらうと、分かりやすいのではないでしょうか。
例えば、もう読まなくなった本や漫画を古本屋に持って行き、買い取ってもらうとします。
その場合、古本屋の提示する価格で本は買い取られ、持ち込んだ顧客は買取代金を受け取ります。古本屋は買い取った本に値段を付け、店頭で販売しますが、その販売価格は、買い取り価格にお店が独自に決めた金額…人件費や家賃、水道光熱費等々の諸経費を考慮したものを上乗せした金額になります。
そのため、ある本Aを古本屋Bに売った場合、古本屋Bが本Aを買い取る価格と、古本屋Bが店頭で本Aを販売する価格には差が生じます。
FXの場合もこの例と同じです。FX会社ではこの差をスプレッドと呼ぶのです。
顧客にとっては、このスプレッドが狭い方が有利になります。そのため、各社しのぎを削って、低スプレッドを提供しているのです。
例えばスプレッドが1銭で、1ドル100円の場合、FXの取引画面には、ASKに100.01、BIDに100.00と表示されます。この状態で1万ドルを買います。
すると、取引画面には、-100円と表示されます。これはどういうことかというと、「1ドル100円1銭というASKの金額(買値)で、あなたは我々から1万ドルを買いました。
この1万ドルを我々に売った場合、我々はBIDの金額(売値)の1ドル100円で買い取りますので、あなたは現状100円損しますよ」ということなのです。
そのため、FXの場合、瞬間的な為替変動が無い限りは、スプレッド分の為替差損が生じた状態で取引がスタートします。
FX業者や通貨によってスプレッドは異なります。ドル円やユーロドルなど、取引高が多い通貨ペアのスプレッドは狭い傾向にありますが、取引量の少ない通貨ペアの場合は、スプレッドが広くなる傾向にあります。
カバー取引について
FX取引では相場の変動に対して保有ポジションにて損益が発生します。そのため、利益になることもあれば、損失になることもあります。FXでは、顧客の損失はFX会社の利益で顧客の利益はFX会社の損失となります。
例えば、顧客が1ドル100円で1万ドルを買ったとします。この場合、FX会社は顧客に1ドル100円で1万ドルを売りつけた、ということになります。
顧客が持っているこのポジションは、いずれ反対売買で解消されます。そのため、FX会社はこのポジションをその時のレートで買い戻す(顧客にとっては売り付ける)ということになります。
1ドル99円になった時、このポジションを解消しようと反対売買をすると、FX会社は顧客から1ドル99円で買い戻すことになり、FX会社は1万円の利益を得ることができます。
一方顧客は、反対売買で1ドル99円でFX会社に売り付けたことによって、1万円の損失を被ることになります。
1ドル101円になった時、このポジションを解消しようと反対売買をすると、FX会社は顧客から1ドル101円で買い戻すことになり、FX会社は1万円の損失を被ることになります。
一方顧客は、反対売買で1ドル101円でFX会社に売り付けたことによって、1万円の利益を得ることになります。
この例のように、顧客の利益はFX会社の損失、顧客の損失はFX会社の利益となるわけですが、為替相場がどのように動くか分からない以上、どう転がるか分かりません。
そんなリスクを取るわけにはいかないため、FX会社は、顧客からの注文と同等の注文を他の外国為替を扱う会社と取引を行います。これをカバー取引と言います。
ちなみに、相手の会社をカバー先(カウンターパーティ)といいます。このカバー先は、銀行や保険会社や同業のFX会社など様々です。カバー先については、各FX会社の取引説明書などに掲載されています。
先ほどの例の場合、顧客が1ドル100円で1万ドル買った時に、FX会社はカバー先に1ドル100円で1万ドルの買い注文を出します。1ドル101円になった時、FX会社には1万円の利益が発生し、顧客側も1万円の利益が発生します。
この段階で顧客がポジションを解消すると、FX会社は1万ドルを顧客に支払う必要がありますが、カバー取引で発生した1万円をそのまま顧客に渡すことで、実質的な支払いは0になります。
また、反対に1ドル99円になった場合、FX会社はカバー先に発生した損失1万円を支払う必要がありますが、顧客側で発生した損失1万円はFX会社の利益となりますので、これをそのままカバー先に渡すことで、実質的な支払いは0になります。
このように同数量で持ち高をイーブンにすることをスクエアポジションといいます。
なお、カバー取引については、顧客の注文を全て自動的にカバー先へ回すFX会社と、選任ディーラーを置いてディーラの裁量によりカバーするかしないかを決めるFX会社があります。
全てを自動的にカバー先に回す場合、入ってくる収入はスプレッド分の手数料収入のみとなります。ディーラーの裁量による場合、ディーラーの技量によって差が出てしまいます。
どちらが良いかはその会社それぞれの経営判断によるため、何とも言えませんが、同じFX会社でも、カバー取引に差があることを覚えておくと良いでしょう。