外国為替市場とは
外国為替市場とは、外国為替の売買が行われる場のことです。
証券取引所のようなイメージを持つ方が多いのではないかと思いますが、外国為替は現実に取引所という場所があるわけではありません。
外国為替市場には2つあります。
1つは銀行間で行われるインターバンク市場、もう1つが、銀行が対顧客を相手に行う取引市場です。通常、外国為替市場というと、インターバンク市場のことを言います。
インターバンク市場ではどんなことが行われているのでしょうか。
ここに参加している銀行やブローカーは、かつては電話で取引をしていました。このやり取りは基本的に英語で行われます。
ただし、日本市場しか動いておらず、日本国内の取引の場合は日本語で行われることもあったようです。
通常、インターバンクの為替取引は、最低100万通貨単位であり、 100万通貨単位が1本です。
例えば、銀行等の為替ディーラーがドル円を買いたい場合、「ドル円の1本のプライスを下さい」と相手方の行のディーラーに電話で訊きます。
そこで、相手がプライスを回答しますが、「10~11」など、幅を持たせます。そのプライスでOKであれば、「Mine」と答えます。
今回は買いたい場合ですので、このような回答ですが、売りたい場合は「Yours」と言います。
また、相手の提示したレートがこちらの条件に合わないために取引しない場合は、「Nothing」と答えます。
この例の場合は2WAYプライスといい、売りと買いの方向性を提示せず、相手にプライスを訊く方法です。
この方法以外に、売り買いを提示して取引する場合もあります。
その際は、Offer(買い)、Bid(売り)という言葉を伝え、どちらの取引をしたいのかを伝えます。相手が提示したプライスでOKであれば、「Done」と答えます。このような取引を電話で大声で行っていたのです。
現在では、ロイターの通信端末などのモニター画面を使って取引を行う、電子取引が主流になっていますので、電話でのやり取りを行う機会は減ってしまっているようです。
外国為替市場は24時間動いています。東京、ロンドン、ニューヨーク以外にも、シドニー、香港、シンガポール、パリ等、世界各国の都市にあります。これら市場は時差があるので、日付変更線に近いところから順にマーケットが開いていきます。
そのため、外国為替市場で一番早く開くのは、ニュージーランドのウェリントン市場です。その後、オーストラリアのシドニー、東京、香港、シンガポール、ロンドン、ニューヨークと地球をひとまわりします。
世界各地に外国為替市場はありますが、その中でも取引量が大きいのは、ロンドン、ニューヨーク、そして東京です。これら市場の動きが世界経済に与える影響は非常に大きなものとなっています。
東京市場は9時から開き、ロンドン市場は日本時間の17時頃からスタート、ニューヨーク市場は日本時間の22時頃にスタートします。
そのため、9時から17時までを東京タイム、17時から22時までをロンドンタイム、22時から翌朝5時半頃までをニューヨークタイムと言います。
ロンドンとニューヨークは動く時間が重なっているため、22時から夜中の2時頃まではロンドン市場も動いています。
このように外国為替市場は土日祝日以外はずっと動き続けており、取引制限時間はありません。しかし、かつて東京市場には取引時間が制限されていたことがありました。
その頃は、9時から12時、13時半から15時半までの合計5時間のみ取引が許されていたのですが、このルールは1994年に廃止されました。その名残で、現在の東京市場の主要な取引時間帯は午前9時から15時半までとなっています。
インターバンク市場は、銀行、外国為替ブローカー、通貨当局の三者が主に参加していますが、その中でも銀行が取引のメインとなっています。
ここでの取引は、銀行間同士で直接取引を行う直取引(ダイレクト・ディーリング)とブローカーを経由する取引の2つから成り立っています。
直取引は手数料が要らず、大きな額を一度に取引できるのが特徴です。
直取引は取引したい銀行が、相手の銀行をスクリーン上に呼び出し、レートを提示するように要求します。相手の銀行はそれに応じ、オファー(相手銀行にとっての売値)とビッド(相手銀行にとっての売値)の二つを提示します。
買いたい場合は相手銀行が提示したオファー、売りたい場合は相手が提示したビッドで取引するのです。
取引することを相手銀行に伝えることで、取引は成立します。もし相手の提示した額での取引しない場合は、取引には応じません。
このようにして直取引は行われますが、最初に説明した、かつて電話取引だった時代とやっていることはまったく同じで、使うツールが変わっただけということが分かります。
外為ブローカーを介して取引する場合、銀行は売買の注文(通貨の種類、希望取引金額、希望レート)をブローカーに提示します。
この場合は2WAYではなく、売りまたは買いのどちらの注文なのかを伝えます。ブローカーは様々な銀行と取引しており、各取引銀行から出された買値と売値のうち、最も高い買値と最も安い売値を市場レートとして提示するのです。
銀行が売りたい場合、ブローカーが提示する買値で売り、買いたい場合はブローカーが提示する売値で取引します。
なお、取引が成立すると、ブローカーは銀行に、自分の取引相手の銀行名を伝えます。
インターバンク市場の参加者
インターバンク市場にはどんな取引参加者がいるのでしょうか。
まず挙げられるのは銀行です。東京市場では、都市銀行、信託銀行、地方銀行、第二地銀、信用金庫、外資系銀行が挙げられます。これらの外国為替取引(外国為替業務や両替業務)を行う銀行を、外国為替公認銀行といいます。
銀行は輸出入企業や機関投資家などから注文を受け、外国為替取引を行っています。
しかし、顧客の注文を受けて行う場合、売り・買いのどちらかにポジションが偏ります。このままではまずいので、銀行は外貨の過不足をインターバンク市場で調整し、偏りをなくすのです。
ポジションに偏りのない状態をスクエアと言います。
例えば、ある会社が海外への支払のために、銀行から100万ドルを円で買った場合、その銀行は100万ドルのショートポジションを持っていることになります。
為替レートは変動するので、円高方向に進んだ場合はこの銀行にとっては、為替差益が発生しますが、円安方向に進んだ場合は為替差損が発生することになってしまいます。
このような為替リスクを相殺するため、銀行は外国為替市場で100万ドルを買うのです。これがスクエアです。
こうすることで、為替リスクがなくなります。
ただし、今後の為替相場の見通しがはっきりしている場合、銀行はスクエアにせずにポジションを持ち、為替差益を狙うこともあります。
次に、外国為替ブローカーですが、彼らは自らポジションを持つことはありません。
様々な銀行との間を仲介します。銀行と銀行をつなぐことで、双方から売買仲介手数料をもらうのです。電子取引の発達で、ブローカー経由の取引は減少傾向にあります。
その代わり、外国為替ブローカーは、個人のFX取引にシフトしていくところが多いようです。
社名に「短資」という言葉が入ったFX取引を提供している会社は、かつては外国為替ブローカーだったところで、社名にその時の名残があるのです。
最後に、財務省や日本銀行などの財務当局についてですが、彼らは外国為替市場に非常に大きな影響を及ぼす参加者であると言えます。財務省や日本銀行を通貨当局と言います。
通貨当局は、ファンダメンタルズに合った為替市場の形成、政府の金融政策達成、過度の円高や円安による為替相場の乱高下の防止を目的として、為替介入を行います。
介入にも種類があり、政府・日銀が東京市場で独自の判断で介入するものを単独介入、ロンドンタイム、ニューヨークタイムに介入が必要になった場合、海外の通貨当局に介入を実施してもらう委託介入、各国の通貨当局と協議し示し合せて、同時あるいは断続的に行う協調介入があります。
ここ最近で為替介入が行われたのは2011年が最後です。民主党政権時、過度な円高となったため、何度か為替介入が行われています。
なお、市場介入の資金は、外国為替資金特別会計で賄います。ドル売りの場合は、外貨準備のドルを使います。ドル買いであれば、政府短期証券を発行して、円を調達して介入資金にします。
最後に対顧客市場についてですが、商社、生命保険会社、損害保険会社、機関投資家、個人を相手に取引を行う市場です。インターバンク市場のレートに銀行の手数料が加算されたものが対顧客市場における取引レートになります。