為替とは何か
為替という言葉を聞いたことはありますか?「郵便為替」なら知っている、という方も多いかもしれません。
為替とは、本来は立替を意味し、取引相手が離れた場所にいる場合に、現金を現金書留などの方法で送ったり、ジェラルミンケースなどに詰め込んで持っていくことなく、債権・債務を決済する方法です。
為替が生まれたのは諸説あり、古代バビロニアや古代エジプト時代からあったという説もあります。
ただし、はっきりわかっているものはなく、為替取引の原形となるものは、中世のイタリアであると言われています。
当時、北イタリアの都市で、両替に伴う貨幣運搬の危険性を減らすため、公証人を間に立てて支払いの取決めをした「公正証書」を作成したことが始まりであると考えられています。
日本で為替が始まったのは江戸時代です。当時商業の街として発達していた大阪と、政治の中心として栄え、一大消費地となっていた江戸とを結ぶ送金システムだったのです。
北イタリアの都市の例と同様、現金をそのまま運ぶのは危険性も高く、重量もあるために大変です。
そこで考え出されたのが、両替商による立替払いでした。江戸の商人は、江戸の両替商(三井)に代金を払い、大阪の商人は、大阪の両替商(鴻池)から代金を受け取るというものでした。
この場合、立替払いをした大阪の両替商は、江戸の両替商から代金をもらわなければなりません。
現在のような電子送金システムが無い当時どうしていたのかというと、別件で江戸へ送らなければならないお金と相殺して決済していたのです。
そして、その差額分の小判だけを運んで清算することにしたのです。これが為替です。
現在、為替業務は銀行が行っています。現在行われている銀行の全銀システムというコンピューターシステムでも、この江戸時代の決済システム同様、銀行間の貸借関係の相殺を行っています。
決済尻という差額を、日本銀行においてある各銀行の勘定で決済しているのです。
銀行は、日本銀行に当座預金口座を設けており、その勘定に入金、あるいは、引き落としをすれば決済できるようになっています。
この送金および決済システムは、国内で行われているため、内国為替(ないこくかわせ)と呼ばれています。
外国為替とは何か
外国為替は、内国為替の範囲が国内だったのを海外にまで広げたもので、海外との間で発生した債権・債務の関係を、現金を実際に運ぶことなく、決済することをいいます。
現在では、海外との取引が盛んで、あらゆる商品の輸出入が頻繁に行われています。
それにあたり、海外の取引相手との間でお金の授受が行われますが、その際に「お金の立替払い」である外国為替で決済が行われるのです。外国為替は、海外の銀行においてある預金口座で決済する仕組みのことです。
基本的には内国為替と同じなのですが、日本のような全銀システムは海外にはないため、代わりに海外に預金勘定を開設し、その口座で入出金を行うのです。
この預金勘定をコルレス勘定(為替決済勘定)といい、コルレス勘定を利用して為替の決済を行う取り決めをコルレス契約といいます。
また、外国為替は、外国の通貨と日本の通貨、または異なる二国間の通貨を交換することも指します。場合によっては交換した通貨を送金することもあります。
分かりやすい例で言えば、海外旅行や海外への出張が挙げられます。
海外に行く時、現地での買い物や支払のため、ドルやユーロ等、現地通貨への両替を銀行などで行います。
この他に、自動車や家電製品などの輸出企業が海外に商品を販売する時、その国での売上は、日本円に両替して日本に送金します。
反対に、石油や小麦等、輸入企業が商品を日本に輸入する際には、代金はドル建てで決済します。
石油会社(輸入企業)が原油を輸入する際、その代金を取引相手である、海外の企業に支払いますが、その場合は日本円ではなく、外貨で支払う必要があるため、米ドルなどで決済します。
その時、日本円を米ドルに両替して決済します。このように外貨と交換する意味でも、外国為替という言葉を使います。
また、ニュースなどで、1ドル100円などという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは、ドルと円の交換比率を指しています。この交換比率を外国為替相場と言います。