事業者向け不動産担保ローンとは、法人の経営者や個人事業主が不動産を担保に差入れて融資を受けるローンです。担保にする不動産の評価額によっては数千万円から数億円程度の資金を低利で調達できるのがこのローンの最大の特徴です。
資金使途は原則自由。設備投資資金や運転資金、開業資金など、経営に必要なまとまった資金を調達したいときに利用することができます。
事業者向け不動産担保ローンとは?
事業者向け不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保に資金を借りることができる事業者向けのローンです。
不動産を担保に抵当権(または根抵当権)を設定することで、不動産担保評価額の範囲内で数十万円から数億円単位のローンが可能になります。
抵当権とは、「土地・建物の所有者がお金を借りた金融機関にローンを返済できなくなったら、金融機関が土地・建物を優先的に取り上げることができる権利」のことで、金融機関は抵当権を設定することで、資金を安心して貸し出すことができます。
担保・保証
担保不動産は、一般的な戸建住宅やマンションのほか、ビル等の建物や土地に加えて、借地権や共有持分などの権利でも審査可能としている金融機関もあります。
また、法人代表者の家族が所有している不動産や法人役員名義の不動産、他の金融機関に担保提供している不動産でも借入れ可能なケースもあります。
ただし、担保不動産が本人名義以外のときには、物件の名義人がローンの連帯保証人となる必要があります。
ローンを申し込む際には、原則として第一順位の抵当権が必要ですが、不動産担保の状況や資金使途、借入金額により、不動産に複数の抵当権が付いていても融資を受けられる場合があります。
融資限度額
担保に差し入れる不動産の評価額によりますが、融資額の上限は5,000万円~10億円となっています。
融資利率(金利)
金利は変動金利または固定金利が適用され、借入金額によって適用金利が変わるタイプや、融資期間によって金利が変わるタイプなどさまざまです。金融機関に担保を提供するため、無担保ローンの金利(5%~13%程度)に比べて3%~9%程度と低利で借りることができます。
返済期間と返済方法
返済期間の目安は、1年以上20年以内です。そのほかに、当初の契約が5年になっていて5年ごとに更新できるローンもあります。
返済方法は、毎月返済で元利均等方式や元金均等方式があります。繰上げ返済や一括返済も可能ですが、別途手数料が必要になります。
諸費用
不動産担保ローンを利用するときにはさまざまな費用がかかります。主な費用としては登記費用、収入印紙代、不動産調査料、抵当権設定料、振込手数料、事務手数料などがあり、数十万円程度の費用を準備しておく必要があります。
事業者向け不動産担保ローンの概要(金融業者A社の例)
融資対象 | 法人・個人事業者 ※安定した収入と返済能力を有し、取扱機関の基準を満たす人 |
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融資限度額 | 50万円~10億円 |
融資利率 | 固定金利または変動金利 3.0%~18.0%以内 |
融資形態 | 証書貸付 |
返済期間 | 1ヵ月~240ヵ月(最長20年) |
契約締結諸費用 | 収入印紙代、事務手数料(融資元本の3.24%以内)、登記費用(〈根〉抵当権設定費用)、不動産調査料(1物件8万円程度)、その他費用(火災保険保険料等) |
その他手数料 | 繰上げ返済手数料:返済元本の3.24%以内 更新手数料:残元本の1.08%以内 |
保証人 | 原則不要 ※法人代表者の連帯保証人が必要な場合もある。 |
担保 | 土地・建物 ※担保不動産に〈根〉抵当権を設定。 |
契約締結書類 | 本人確認書類(免許証・健康保険証・住民票・パスポート等)/収入証明書類(源泉徴収票・給与明細書・所得証明書・確定申告書等)/土地・建物の登記済証(権利証)/印鑑証明書・実印 |
事業者向け不動産担保ローンの資金使途
事業者向け不動産担保ローンの資金使途は原則自由。手形決済までのつなぎ資金のほか、設備投資資金、新規開業資金、従業員の給与・賞与支払資金、法人税や固定資産税などの納税資金など、事業に関わる資金として幅広く利用することができます。
ただし、借入金の使いみちについては金融機関が確認します。
事業者向け不動産担保ローンは、主に緊急性の高い支払いに利用するケースが少なくありません。そのような場合には、どうしても足元の資金繰りを乗り切るためだけに目を向けてしまいがちです。
担保に差入れている不動産にもよりますが、たとえば会社の建物や倉庫等、ビジネスに利用している不動産を担保に差入れているときには、万一、返済できなくなってしまったときにビジネスのベースを失うことになりかねません。
担保として差入れ可能な土地や建物が複数あるときには、不動産に優先順位をつけて、万一のときに影響の小さい不動産を担保にするなどの工夫が必要になるでしょう。