カードローンの返済の延滞が続くと、ローン会社または保証会社(以下、併せて「ローン会社」と表記します)は請求・督促、内容証明郵便の発送、強制執行と段階的に債権の回収手続きをすることになります。
強制執行となると、利用者の意思とは無関係に預金などの財産や給料などの定期的な収入を差し押さえ、ローン会社が資金の回収を行います。
取立ての実際
カードローンで借りたお金を返済日(約定日)に支払わず、それ以後も返済をせず放置した場合、どうなってしまうでしょうか。
映画やテレビ番組に出てくるように、怖い表情の人たちが自宅や勤務先に突然現れて、「返済が遅れているぞ!早く払え!」と取り立てるシーンを思い浮かべる人もいるかもしれません。
以前は、そのような取立ての方法を禁止したり取り締まる法律がなかったことから、厳しい取立てに追われ夜逃げをしたり、逃れられずに自ら命を絶つといった痛ましい事件が起こる時代がありました。
しかし、平成18年に貸金業法が改正され、①上限金利の引下げ、②過剰貸付の抑制、③貸金業への監督や罰則の強化、④多重債務者問題に対するサポートなどが法的に整備されました。それ以降は、昔のような厳しい取立てなどはほとんどみられなくなりました。
とはいえ、借りたものを返さない人をそのままにしておくことはできません。ローン会社としても、お金を返してもらう権利を放棄するわけにはいきませんから、厳しい取立てという手段を講じないまでも、合法的な範囲内で返済を求めているというのが実情です。
債権回収とその流れ
債権とは、「ある人が別の人に一定の行為を請求する権利」をいいます。ここでは、カードローンの利用者はローン会社からお金を借りているわけですから、本来はお金を返済しなければなりませんが、もし返済しなかった場合、ローン会社は債権者としてカードローン利用者に対してお金を返済するように請求することができるわけです。
それでは、カードローン返済の延滞等が起きたときの対応についてみていきます。
請求・督促
ローン会社によって督促の方法もいろいろありますが、一般的には電話がかかってくるかもしくは督促状などの書面が利用者に送られてきます。請求書が送られてくるケースもあります。
電話による督促では、遅延の状況についての説明や返済期日が遅れているので支払いがいつ頃になるのかを聞かれます。請求書は支払期日が過ぎているので返済金額を支払うように明記した内容のものです。
督促状は、督促の内容、返済期日、返済金額などが記載されていて請求書と同じような内容ですが、請求書に比べて少しだけ厳しい文言で書かれています。請求書や督促状にはローン会社指定の振込口座番号などが記載されていて、期限内に指定口座に返済額を振り込むように指示があります。
内容証明郵便
電話のほか、請求書や督促状が届いたにも関わらず、依然として返済期日に返済されないとローン会社は次の手段をとります。
まず、ローン会社から利用者に内容証明郵便が送られます。内容証明郵便とは、日本郵便株式会社が差出人(この場合はローン会社)の謄本に基づいて証明した書面で、誰から誰に出された書面であるかを日本郵便が証明した郵便物のことです。内容証明には「これ以上の返済未納が続くとカードローンの会員資格が解除されること」や「場合によって裁判になること」「財産の差し押さえといった法的手段をとること」などが記載されます。
裁判手続き・強制執行(回収)
内容証明郵便が届いてもなお返済がない場合は、ローン会社は法的手段に訴えて利用者の財産の差し押さえなどの強制執行の手続きをとることになります。これにより、債権者であるローン会社は、債務者である利用者の銀行預金などの財産や給料などの収入から債務者の意思とは関係なく債権を回収する――という流れになります。
返済期限の時効
カードローンの返済期限には、「ある一定の期間経過すると、債権が消滅する」という時効があります。「借金して返済が滞納しても時効ってあるの?」と思う人もいるでしょう。なかには、返済せずに借りたお金を踏み倒せる、などと倫理に反することを考えるかもしれません。カードローンの返済期限の時効とは、
- カードローンによる借入れを行ってから、
- 返済をせず、
- その後もローン会社から返済の請求・督促がなく、
- 以後、5年経過したとき
の条件がそろってはじめて成立します。「5年経ったから時効が成立したので返済しなくていい」のかというと、そうではありません。5年を経過したことにより時効がきたことを主張する必要があります。
これを「時効の援用」といいます。「時効の援用」をしなければ、たとえ5年経ったとしても債権が消滅することはありません。
現在はローン会社も徹底管理していますので、お金を貸してから5年間、まったく返済の連絡をしないまま放置することはなく、時効の成立は事実上ありえません。
万一、ローン会社が請求・督促を怠っていても、5年以内に督促を行えば債権の時効はリセットされ、振出しに戻ります。債権の時効は決して利用者を救済する法律ではないことを肝に銘じましょう。