債券価格に影響を与える金利について

債券は金利の影響を受けます。

市場金利が上昇すると、他の有利な金利商品に乗り換えるために、債券を売る動きが出てくるため、債券価格は下がります。

反対に市場金利が下降すると、市場金利より有利な利回りを持つ債券を買う動きが出てくるため、債券の価格は上昇します。

そのため、債券相場は金利の見通しを先取りして動きます。

金利が上がると予想された場合、債券価格が下落する前に債券を売る動きが出てきます。その結果債券価格は下がり、利回りは上昇します。

金利の下降が予想された場合は、債券価格が上がる前に債券を買う動きが出るために、債券価格が上がり利回りは下降するのです。

このように金利の動向によって債券価格は変動しますが、それは国債や社債などといった債券の種類に関係なく同じ方向に動きます。このことが債券の大きな特徴であり、株と異なる点です。

金利に影響を与えるもの1 景気と物価

金利は景気や物価の影響を受けます。

お金を借りたい人が増えれば、金利は上がり、貸したい人が増えれば、金利は下がります。つまり、資金需要で金利は決まるのです。

資金需要は景気に大きな影響を受けます。好景気の時は、商品が売れます。

そのため、企業は商品をより多く製造するために設備投資に力を入れますし、商品を作るための原材料や部品等もたくさん仕入れます。そのためには資金が必要になるため、資金需要が起き、金利が上がります。

債券を持っている会社は資金を作るため債券を売却しますし、金融商品を運用している会社は金利の低い債券を売って、もっと金利の高い金融商品に乗り換えます。

このようにして債券価格はさらに下落し、利回りは上昇するのです。

反対に不景気になると、商品は売れなくなります。企業は設備投資に資金を回す余裕はなく、お金を借り入れようとせず、コスト削減に力を入れるようになります。

また、資金に余裕がある場合は内部留保をため込んだり、安全な投資商品に乗り換えます。債券安全性の高い商品であるため買われ、債券価格は上昇し、利回りが低下します。

このように、景気が良いと金利は上がり、債券相場は下落します。反対に景気が悪いと金利は下がり、債券相場は上昇します。

また、物価も金利に影響を与えます。一般に物価が上昇すると金利は上がり、物価が下がると金利は下がります。そのため、債券もその影響を受けるのです。

景気が過熱気味になると物価が上がります。それを抑制するために金融引き締め政策が取られます。そのため、金利は上昇し、債券価格は値下がりして利回りは上昇します。

反対に物価が下がると、安定的な物価上昇を図るために、金融緩和策が取られます。そのため、金利は下落し、債券価格は上がり、利回りは低下します。

金利に影響を与えるもの2 為替

為替相場も債券価格に影響を与えます。その中でも特に、米ドルの変動は債券価格に影響を与えます。

一般的に、米ドルに対して円高となれば、金利は下がります。反対に円安になれば、金利は上がります。

なぜなら、日本の場合は輸出型の企業が多いからです。そのため、円高は景気を悪化させ、円安は好景気をもたらします。

また、円高はデフレを引き起こすため、物価が下がります。物価が下がると金利は下がります。そのために債券価格は上がります。反対に円安は物価の上昇をもたらすため、市場金利は上がり、債券価格は下がります。

また、円高の時は、為替差益を狙った外国人投資家による日本の債券への需要が増えます。

一方日本の投資家は為替差損を避けるために国内に資金を移し、日本の債券に投資するなどして需要が増えますので、債券価格は上昇し、利回りが低下するのです。

一方円安の時は、外国人投資家は為替差損を避けるために、日本の債券への投資を減らします。日本の投資家は為替差益を狙い、米ドル建て債券への投資を増やします。そのため、金利は上昇し、債券価格は下落して利回りは上昇します。

その他債券価格に影響を与えるもの1 買いオペ・売りオペ

利付国債を入札によって買い入れる、国債買い入れオペレーションや、売り戻し条件を付けて入札によって買い入れる、買い現先オペなどが行われると、国債は市場から吸い上げられて、市場に資金が供給されます。

そのため、債券相場は好影響を受けます。反対に国債の売り現先オペなどが行われた場合は、国債が市場に供給されるため、債券相場に悪影響を及ぼします。

その他債券価格に影響を与えるもの2 信用リスク

債券価格は信用格付けの影響を受けます。償還までの期間が同じ場合、格付けの高い方が利回りは低くなり、格付けが低い方は利回りが高くなります。
日本の債券の場合、国債が最も信用格付けが高いため、利回りは最も低くなります。

なお、格付けを行うのは格付会社です。格付け会社には、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)等があります。

その他債券価格に影響を与えるもの3 新発債の発行量

新発債の発行量が需要より多ければ、債券相場に悪影響を及ぼします。新発債が過剰に供給されることで、既発債が売られて価格が下落するなど、需給バランスが崩れてしまいます。

需要に見合った発行量であれば、順調に消化されるため、債券相場に好影響を与えます。そのため、債券の入札状況と消化状況は、今後の債券相場を予想する上で重要な判断材料になります。

その他債券価格に影響を与えるもの4 海外金利

債券価格は、海外の金利、その中でも米国金利の影響を受けます。例えば日本の金利が一定の時に、米国の金利が高くなれば、日本の投資家は円建ての債券を処分したり控えるなどして、より高い利回りを求めて米ドル建て債券への投資を拡大します。

反対に、米国の金利が低下し、日米の金利差が縮小した場合は、日本の債券への需要が増えるために国内債券価格は上昇し、利回りは低下します。

その他債券価格に影響を与えるもの5 株式相場

株価が上昇すると債券を売って、株式を購入しようとする動きが活発化します。そのため、債券価格は下落し、利回りは上昇します。反対に株価が下落すると、安全な債券を買い求める動きが出るため、債券価格は上昇し、利回りは低下します。

株価は景気が良くなると企業業績が良くなることで上がり、悪くなると企業業績の悪化で下がります。

なお、不景気の影響で株価が下落したとしても、国債自体の信用性が落ちているような場合は、債券ではなく金や原油に投資資金が向かうため、債券相場は上がらない場合もあります。