事例1 米国雇用統計
毎月第一金曜日に発表される米国雇用統計。この雇用統計が、高めの市場予測より、さらに高い数値が出たとします。そのため、予想通り発表後にドル高になったものの、しばらくして下落しました。
予想より良い数字だったにも関わらず、ドル高が一時的なものになったのは何故でしょう。
実はFXではこのようなことがよくあります。米国の雇用統計は数あるFX関連指標の中で、最も注目されていると言っても過言ではないでしょう。
雇用統計がどんな数字になるか、市場はあらかじめ予想しています。この事例の場合、市場はあらかじめ高い予想をしていたことから、ドルを買う動きが発表前からあったということになります。
そして、発表は予想以上の数字だったにも関わらず、ドル買いが一時的なものにとどまり、その後ドル売りになってしまったということは、発表までの間に相当ドルが買われており、買われすぎの状態になっていたことが考えられます。
このことから、市場は高い数字になることを、織り込み済みだったということが分かります。
雇用統計の数字が良いことを見越し、市場参加者たちは、あらかじめドル買いのロングポジションを取っていたと考えられます。期待感で買われていたドルですが、予想通りの高い結果、それも当初の予想以上に高い結果を出した、ということで売られたのです。
何故売られたのかというと、材料が出尽くしたからです。期待感で買われたものは、その期待が続く限り相場を押し上げます。しかし、その期待が現実のものになったということは、期待が消えたということになり、それを「材料が出尽くした」というのです。
このことから分かるとおり、相場は期待感で動き、市場参加者は期待を買うのです。その期待が現実のものになったことで、その投資対象については一旦終了となり、ポジションをクローズさせます。
反対売買の売りにより、ドルは一転下落するのです。そのため、事前予測と結果が同じの場合、その数字が予想を上回るものであったとしても、結果自体は織り込み済みであったために、上昇は一時的なものとなり、その後は下降してしまうのです。
事例2 貿易赤字
日本とアメリカ、どちらも貿易赤字となった場合は、為替レートはどうなるでしょうか。
貿易収支は通関統計です。日本の場合、税関を通るモノの流れを円ベースで計算しています。輸出金額が輸入金額をを上回れば黒字、反対の場合は赤字となります。
このことから、黒字の場合は外貨が流入し、赤字の場合は円が流出します。そのため、黒字の場合は円買いが進み、赤字の場合は円売りが進みます。
日本の貿易赤字は、為替市場では、ネットでの円売りということです。
ネットというのは、売りと買いを差し引いた状態のことを言います。貿易をドル建て行っている場合は、ドル買い、円売りとなりますし、ユーロ建てであれば、ユーロ買い、円売りになります。円建てで貿易している場合は、貿易の相手が自国通貨を買い、円を売ります。このように円が売られるため、円安ドル高となります。
このように、貿易収支から見えてくる、外貨と円貨の実需は、為替相場に大きな影響を与えます。実需は為替相場に大きな影響を与えます。
銀行や証券会社等の投機筋の場合は売り戻し、買い戻し行いますが、実需の場合は売り切り、買い切りとなるからです。為替市場ではほとんどが投機的な短期売買が占めています。
しかし、デイトレードのような短期売買は、翌日の為替レートに与える影響はほとんどなく、為替市場では少数でしかない、貿易等による実需がもたらす影響の方がはるかに大きいと言えます。
このことから分かるとおり、日米のどちらも貿易赤字であれば、円安ドル高となります。