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クロス円とドルストレート
FXで主軸通貨となっているのは米ドルですが、米ドルが絡んだ通貨ペアのことをドルストレートと言います。その中でも特にユーロドルは世界で最も取引量の多い通貨ペアです。
日本人にとっては円がなじみ深いため、ドルストレートの通貨はハードルが高く感じてしまいます。そのため、円が絡んだ通貨ペアもあります。
例えば、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などが該当します。このように円が絡んだ通貨ペアをクロス円と言います。
実はクロス円は円とユーロ、円とポンドの直接のやり取りではなく、間にドルを挟んでいます。そのため、クロス円は合成通貨とも言われます。
外国為替市場では圧倒的に米ドル中心の取引が行われています。ドル円、ユーロ円のように、各通貨は米ドルとの取引でレートが形成されます。
通貨ペアは主に当事国同士の要因が通貨の強弱につながりますが、合成通貨であるユーロ円やポンド円などといった通貨ペアは、間にドルを挟んでいるために、お互い直接的な影響を受けているわけではありません。
このように、クロス円は米ドルを間に挟んでいる関係で、全てのクロス円の通貨ペアに米ドルの相場動向が影響します。そのため、値動きが複雑になるのが特徴です。
また、クロス円だけ違う動きを見せる、ということもあるのです。
例えばポンドが円に対してポンド高になったとします。
しかし、対米ドルではポンドが売られたためにポンド安になっているとします。その場合日本の投資家以外はポンドを売っているということになります。
世界で最も取引されているのは米ドルである以上、世界の投資家は理由があってポンドを売っているということになり、それに気づかない日本の投資家がポンドを買っているということになります。
米ドルの影響力は大きいため、いずれポンド安になるのですが、クロス円だけ見ていると、それに気づかない可能性があるのです。
そのため、ドルストレートを見るのは、FXを取引する上で非常に重要になります。ドルストレートを見ることで、世界の為替動向が把握できるのです。
通貨の特徴1 米ドル
米ドルは世界の基軸通貨で、12兆ドル以上もの供給量を誇ります。ドルはアメリカ国内のみならず、新興国では自国通貨の代わりに使われています。
例えば、このところ急激な経済成長を遂げているカンボジアでは、支払いは全て米ドルです。自国通貨(リエル)ももちろんありますが、日常で使うのはほとんど米ドルで、1ドル以下の部分で自国通貨が使われています。
カンボジアの例に限らず、新興国の場合、自国通貨の価値が非常に低く、政治的・経済的な問題から安定した通貨の価値を得られない等の理由で、米ドルが好んで使われています。
また、世界の貿易はほとんどドル建てで行われています。例えば石油の支払などもドルで行われるなど、ドルは国際貿易をするには欠かせない通貨なのです。
また、クロス円でも取り上げたように、ドルは両替の際にも使われます。
例えば、カナダを旅行するため、円を現地通貨のカナダドルに両替するとします。その際、円とカナダドルを直接両替しているのではなく、円から米ドルへ両替し、米ドルからカナダドルへ両替する、という手順を踏んでいます。
このようにドルは様々な場面で利用されており、安定した通貨価値を持っているため、経済危機や戦争・災害が起こった場合によく買われます。そのため、「有事のドル買い」という言葉があります。
ただし、実は円も有事の際に買われやすく、ドル円で見た場合は、有事の際にドルが売られて日本円が買われる動きになりやすい傾向があります。
円も世界的に認められており、日本がデフレとなっていることから、通貨価値が極端に低下することはないと考えられています。そのため、世界情勢が不安定になると、ドル売り円買いの動きが出やすいのです。
通貨の特徴2 ユーロ
1999年に決済用仮想通貨として誕生し、2002年に現金通貨として誕生したユーロは新しい通貨です。このところ、ギリシャ不安等、政治的・経済的要因で為替相場の影響を受けることが多ようです。
ユーロの特徴としてまず挙げられる事項に、25カ国が共同で使用しています。そのため、ユーロ加盟国の一部で起こった危機が全体に波及してしまうリスクがあります。通貨発行権は各加盟国にはなく、ECB(欧州中央銀行)にあります。
ユーロは米ドルの影響を受けます。ユーロは第二の基軸通貨ですので、米ドルが売られるとユーロは買われます。
ユーロは複数の加盟国によって成り立っています。そのため、加盟国の中でも経済的な影響力の大きい国、例えばドイツやフランスなどの経済指標がユーロに大きな影響を与えます。
通貨の特徴3 ポンド
ポンドは「暴れ馬」という別名があるとおり、非常に値動きの荒い通貨です。米ドルが基軸通貨になる前は、このポンドが基軸通貨でした。
ポンド円の場合、スワップはまあまあ高い方かもしれません。しかし、それ以上の値動きの荒さで損失を被る可能性が高いため、初心者向きではないと言えます。長期保有する場合は、潤沢な資金で取引するのがおすすめです。
イギリスは金融立国であり、個人投資家の投資も盛んです。ポンドは英国内での取引がメインで流通量が少ないために値動きが荒いのですが、その分、個人投資家の動向が鍵を握ると言えます。
また、イギリスは金融立国であるがゆえに、ソブリン債やハイ・イールド債等の債券市場の動きを個人投資家が指標として用いるため、ポンドに大きな影響を与えます。
通貨の特徴4 オーストラリアドル
豪ドルは以前は高金利通貨の代表格でした。高金利かつ安定していると人気でしたが、リーマンショック後は、金利はかつてほど高くはなくなっています。
しかし、それでも他の主要通貨に比べて政策金利が低く、政治的・経済的にも安定しているため、今でも人気のある通貨です。
また、オーストラリアは資源国でもあります。そのため、輸出や天然資源の採掘量等に為替が左右されることがよくあり、その場合は大幅にレートが動きますので、注意が必要です。
特に輸出はオーストラリア経済にとって重要で、景気動向をうかがう上で、大きな指標となります。
オーストラリアの主要輸出国は、中国、日本、韓国、インド、アメリカですが、この中で最も重要な取引相手は中国です。中国はオーストラリアの輸出先として30%以上のシェアがあり、豪ドルは中国の経済指標の影響を受けやすい特徴があることに留意しましょう。
中国以外の輸出相手国の経済動向も、長期的に見た場合、オーストラリア経済に影響を与えます。
また原油価格や為替相場の激しい変動などが起こると、金を含めた天然資源が買われる傾向にあり、オーストラリアの天然資源が買われます。その場合、一度豪ドルに一度決済されるため、豪ドルが買われます。
このように、商品相場の動向も豪ドルに大きな影響を与えることに留意しましょう。
通貨の特徴5 スイスフラン
スイスフランは永世中立国であるスイスの通貨です。
他の主要通貨よりも金利水準が低く、超低金利の日本よりももっと金利が低く設定されています。永世中立国ということもあり、ユーロの政治・経済等に為替市場は影響を受けますが、あまり価値の変動もなく安全資産として認識されていました。
リーマンショック等の金融危機が起こった際には、スイスの金融商材や、預金から個人投資家が他の焦げ付きを補填するために、一度換金してスイスフランが売られることがあります。
またユーロが売られることにより、スイスフランに買いが走り、リスク回避される傾向があります。
もともと金利が低くスワップ面での魅力が少ないこと、安全資産ということもあって、値動きが少ないことから、日本ではあまり取引されていない通貨でした。
しかし、安全資産としてのスイスフランの位置づけが変わる出来事が2015年1月に起こりました。
スイスの中央銀行であるスイス国立銀行が2011年9月から維持してきたスイスフランに対するユーロの下限(ユーロスイス相場)を1.2000として無制限介入を行っていくという為替方針を2015年1月15日に突然撤廃したのです。
これにより、ユーロスイス相場は一時41%も急落し、金融市場は大混乱となりました。
スイス中銀による介入により、スイスフランの安全資産としての位置づけが守られていたこともあり、それが終了した以上、今後のスイスフランがどのような位置づけになっていくのかに注視する必要があります。
通貨の特徴6 カナダドル
カナダは資源国です。経済指標も安定しており、資源国通貨ではありますが、安定しているのが特徴です。スワップは、同じ資源国通貨である豪ドルよりはだいぶ低いと言えるでしょう。
カナダ経済は安定していますが、カナダドルは流動性に欠ける通貨です。また、米国の隣に位置しており、文化的にも経済的にも結びつきは強いものの、米ドルの動向がカナダドルに直接的な影響を与えることはあまりなく、カナダドルは独特な位置づけにある通貨と言えます。
また、米ドルをベースとした投資を行っている投資家からは、リスク目的として買われることが多いようです。
カナダ国内で発表される様々な指標は、もちろんカナダドルに大きな影響を与えますし、カナダの中央銀行であるBOCの声明と政策金利の発表はカナダドルに大きな影響を与えます。
しかし、気を付けなくてはならないのは、カナダドルの場合、WTIという北米の原油価格を表す先物取引の指標と連動して推移する傾向がある、ということです。
安定した通貨ではありますが、金利も低く、相場予測を立てづらい通貨と言えます。
通貨の特徴7 ニュージーランドドル
ニュージーランドドルは、取引量が少ないため、値動きが大きいのが特徴です。また、ニュージーランドドルは高スワップが特徴です。
ニュージーランド経済はオーストラリアとの関わりが深く、オーストラリアの動向に左右される傾向があります。人口も少なく、農業が盛んなことから、現在では乳製品等の輸出や、観光立国を目指し、観光産業に力を入れています。
そのため、それらに大きな影響を与える災害の発生は、ニュージーランドドルの売りを誘う要因となります。
ニュージーランドドルの動向は、当然、ニュージーランド国内での経済指標の結果が左右しますが、それ以外に、金利政策とオーストラリアの通貨動向にも左右されることに注意しましょう。