カードローンは借入れ手段として便利な反面、複数の借入れが重なり多重債務になると、返済ができなくなり、最終的には債務整理に陥ることにもなりかねません。

債務整理には、民事再生、個人再生、自己破産などいくつかの方法がありますが、いずれも単に借金が減額されるわけではなく、事故者リストに載ったり、財産のすべてを失ったりするなどの厳しいペナルティが科せられます。

債務整理の種類と方法

個人信用情報機関のデータによると、過去に借入れをしていた、もしくは現在借入れをしていて機構に登録されている利用者数は1,939万人。

このうち、3ヵ月以上入金がなく延滞がある利用者は389万人。さらに、現在借入れ中で5社以上から借入れのある利用者は14万人で、その人たちの借入残高の平均は合計で198.0万円、一契約当たりの残高は36.5万円に達しているそうです。

個人信用情報の登録のある借入残高のある利用者データ(平成27年8月末現在)

登録人数 登録件数 残高金額 一人当たりの残高 一契約当たりの残高
1件 748万人 748万件 3兆5,805億円 47.9万円 47.9万円
2件 252万人 504万件 2兆826億円 82.7万円 41.3万円
3件 95万人 286万件 1兆448億円 109.8万円 36.6万円
4件 32万人 129万件 4,529億円 140.5万円 35.1万円
5件以上 14万人 74万件 2,712億円 198.0万円 36.5万円
合計 1,141万人 1,741万件 7兆4,318億円 65.1万円 42.7万円

(出所)株式会社日本信用情報機構(JICC)ホームページ

一般に、消費者金融などから5件以上の無担保無保証借入れをしていて、返済が困難になっている人を多重債務者と呼んでいます。

しかし、現在借入残高のある利用者1,141万人のうち、約3人に1人は2件以上のローンを借り入れており、潜在的な多重債務者予備軍といえなくもありません。

これらの人を加えると、借金に悩んでいる人は少なくない、ということがわかります。

消費者庁がまとめたカードローン等に関する相談事例をみてみると、次のような切実な声が寄せられています。

  • カードローンの残債を銀行で一括借換えしたが、給料が減り、住宅ローンもあり返済が苦しい。債務整理について知りたい。
  • 銀行への返済が遅れたことで債権回収業者から一括請求の通知が届いた。分割での返済を頼んだが、認められなかった。他にも銀行や信販会社からの借入れがあり、今後の返済が心配だ。
  • 携帯電話に「サラ金で借金し困っていないか」と電話があった。現在サラ金3社で借金していることを話したら、サラ金の過払金請求を代行すると言われ、資料が送付された。
  • 消費者金融と住宅ローンの返済が滞るようになった。相手から支払いの催促があるが、どのように対応したらよいだろうか。
  • 5年前から借りていたサラ金2社の債務を今年完済した。過払金の返還請求をしたい。合わせて返済中の2社の債務整理をしたい。

相談事例にもあるように、多重債務におちいる人の多くは、債務整理に一縷の望みを託します。では、債務整理とはいったいどのような手続きなのでしょうか。

債務整理の種類と方法

多重債務に陥ったローン利用者が、返済の苦しみを軽減する方法が債務整理です。債務整理には、主に、①任意整理、②個人再生(民事再生)、③自己破産の3つの方法があります。

任意整理

任意整理とは、裁判によらずに、お金の貸し借りの当事者が交渉して、あらためて借金の金額と返済の方法を取り決める方法です。通常は債務者となるローン利用者は弁護士や司法書士などの専門家に代理を依頼して、専門家とローン会社との間で交渉が行われます。

交渉では、主に借入残高の減額や返済方法の変更が話し合われ、互いの合意が成立すれば契約内容が変更されます。

あくまで当事者間の話し合いですので、一方が有利な条件での合意は難しく、借入残高の大幅な減額や返済期間の延長は認めてもらえないことが多いといわれます。

また、任意整理は個別のローン会社だけでなく、すべての債権者との合意が条件となることにも注意が必要です。

個人再生(民事再生)

個人再生は、裁判所に申立てることで、住宅ローン以外の借入残高を減額できる制度です。借入残高にもよりますが減額幅は最大で10分の1程度と大幅な減額が可能です。

ただし、個人再生実行後も「継続的な収入があること」「原則3年以内で返済できる」ことが条件となります。住宅などの財産すべてを失うこともなく、最低限の衣食住を確保しながら返済する方法です。

なお、個人再生が成立すると、個人信用情報機関に事故情報としての履歴が残り、7年程度の期間は新規の借入れはできません。

自己破産

借金が返済できないとき、財産のすべてを失うことを破産といいます。破産はお金を貸している側(債権者)が申立てるのが一般的ですが、自己破産はお金を借りている本人が破産の申立てを行います。

自己破産が認められると、ほとんどすべての債務(借金)を支払う必要がなくなります。カードローンの残債なども返済しなくてよくなります。

他方、わずかな財産を残して(20万円以下の預貯金など)、すべての財産を手放さなければなりません。

そのほかにも、個人信用情報機関に自己破産の記録が7年間残され、当然ながら新規の借入れはできなくなります。また、国が発行する「官報」に自己破産者の氏名住所が記載されるため、自己破産の事実が公開されることになります。

多重債務者にとって有利にみえる自己破産ですが、ギャンブル等の浪費が多重債務の原因であったり、本当はあるはずの財産を隠し持っていたりすると、自己破産は認められません。自己破産の方法は、多重債務者にとって最終手段であると考えるべきでしょう。