マイホーム購入の際には、多くの方は「新築物件」を候補にします。しかし、最近では中古物件を購入時の候補に挙げ、予算的な問題を考えつつマイホーム選びをしていく方も増えてきています。

ただし、中古物件は知らないことで後から問題になるトラブルや重要事項が目に見えないことも多いため、注意が必要です。

中古住宅

中古物件の魅力

中古住宅

新築物件購入と比較した時に、中古物件の大きな魅力は「低予算で購入できる」ということが第一に挙げられます。

マイホームを購入する場合には、多額の費用がかかることは避けられません。「マイホーム購入のため」と月々の収入をやり繰りして貯金をしている方も多いでしょうが、資金を全額貯めてから購入するという人は少ないでしょう。「頭金」を貯めて残りの部分を住宅ローンで支払う方が大半です。

頭金に充てる金額はそれぞれの貯金額により異なりますが、全額住宅ローンを利用するよりも、利子部分を抑えられたり、支払い年数が短くなったりします。いずれにしても、住宅購入には「購入資金」という面で大きく頭を悩ませるので、借り入れ金額が少しでも少なくて済む中古物件は魅力です。

リフォーム・リノベーション

中古物件は、安く購入した上で、必要な部分をリフォームして住むこともできます。リフォームに費用を費やしても、新築物件を購入するよりもリーズナブルなことが多いです。中には、家全体をリノベーションして、新築のような価値を生み出してオリジナリティ溢れる空間に大変身させるケースもあります。

また、「リフォーム済中古物件」として、売主がリフォームをしたものを売り出すこともあり、インターネットや広告チラシでその新しい様子が分かれば、中古であっても特に抵抗が感じられないでしょう。

ただ、中古物件はパッと見たイメージだけでは背景にあるものが分からず、実はいくつかの問題が潜んでいるケースも少なくないのです。

 

未登記部分がある中古物件購入

登記

築年数が経った中古住宅でよく見られるのは、増築や改築をしていることです。新築として住宅を建てても、各家庭のライフスタイルの変化により、増築や改築をして住宅に手を加えることは多いものです。ここで注意したいのが、増築をして面積が増えたのに登記をしていないことです。

登記とは?

そもそも「登記」とは何なのでしょうか。

土地や建物といった不動産は、その所在と所有者、面積といった情報を一連として国で管理を行っています。「この土地は○○さんの土地です」「この建物は○○さんの所有です」「この建物の面積は○○平方メートル(㎡)です」という証明をするために、建物を新築したり、住宅を売買して所有者が変更されたり、住宅ローンを利用する時に担保として設定したりするときは「不動産登記」を行わなければなりません。

不動産登記が必要な時

  • 新築
  • 所有者変更
  • 住宅ローン利用時の担保設定

増築をした場合の登記

基本的に、増築等の工事には、確認申請が必要です。しかし、建築基準法では10平方メートル(㎡)以下の増築の場合には申請が必要ありません。そのため、築年数の古い中古物件などでは、不動産登記もしていないということが結構あります

建築基準法に違反している訳ではありませんので、増築部分の面積については「未登記」のままになっているケースもあるのです。つまり、登記上の面積と現況の面積に相違がある物件となっているのです。住んでいる分にはいいですが、この「未登記増築部分」が売買の際に問題になってきます。

未登記部分があると住宅ローンは?

住宅ローンを組むには、購入する物件を担保として評価し、途中で払えなくなった場合には、担保である不動産を売却して返済費用にあてます。どんな建物でも担保として相応しいと判断される訳ではありません。

基本的に住宅ローンで「担保物件」として設定できるのは、登記がしてある場合だけとなっているので、上記のように未登記のままで現況の面積と登記面積が合わないような場合には、注意が必要です。

では、未登記部分がある中古物件を知らずに購入してしまうことがあるのでしょうか。

一般的には、不動産業者は売買する物件を扱う場合に、登記面積だけでなく実際の面積に相違がないか確認するものです。そこで、現況の面積が大きいなど相違が見られたら、売主に確認します。そして「未登記増築部分である」と分かれば、その旨を重要事項として買主に説明する義務があります

チェック漏れも

すべての不動産会社がしっかりチェックしているかというと、そうは言いきれません。現地の間取りをしっかりチェックして図面を作成する段階で登記面積との違いに気づくといいですが、そのチェックを怠るようなアバウトな不動産業者もあります。すると、買主は気づかないまま購入契約を進めてしまうことにもなるのです。

そういったリスクも考えると、購入したいと考えた時に現地と登記簿との確認は重要だということが分かります。

東京法務局 インターネットを利用して登記事項を確認するサービスhttp://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/netriyou.html

未登記増築部分があったら?

住宅ローンの利用をしたい場合には、未登記の増築部分を売買前に売主にきちんと登記してもらいましょう。こうすることで「登記済の増築部分」となるので、住宅ローンの担保として審査を受けることができるでしょう。

注意したい増築

ただし注意したい点があります。10平方メートル(㎡)以下の場合建築確認申請が不要なので、少しずつの増築を繰り返している物件もあります。

また、全体的な面積の増加で建ぺい率や容積率をオーバーし、結果として「法違反」の建物となる場合、住宅ローンの担保として設定できません

既存不適格物件

物件の資料を見ていると、「既存不適格物件」という記載を目にすることがあるかもしれません。実は、結構このような物件は多くあります。

既存不適格物件とは、現在の建築基準法で定められている建ぺい率や容積率に適合していない物件のことを指します。「つまり、違反建築物件なのか?」と思われがちですが、内容的には全く異なります。

違反建築物件と既存不適格物件の違い

違反建築物件は、「道路に接道していない」「建築確認申請をしないで大がかりな増築をした」など自らの意思で法律違反をしている物件です。

一方、既存不適格物件は古い建築物に多く見られ、建てた当初は建築基準法をしっかりと守っています。しかし、年数が経過していく中、法律が改正されたことに伴い、「現在の法律に適合していない」という物件なのです。

改修の必要は?

現在見られる既存不適格物件では、現行の法律の建ぺい率や容積率よりオーバーしている物件であるケースが多くあります。違反建築物件とは違うため、オーバーしていたとしても購入後に減築(建物の面積を小さく改築すること)をする必要はありません。面積が大きいままで住むことができます。

ただし、現在の建物を壊して新築する建て替えの場合には、現在の法律に定められている建ぺい率や容積率で建築する必要があるため、面積が小さくなってしまうことになります。それを理解した上で購入する必要があります。

住宅ローンの利用は?

問題なのは、住宅ローンを利用して購入する場合には難しくなることです。住宅ローンの審査では、現在の法律と照らし合わせて考えられますし、今後売却する場合に売りづらい物件と判断され、金融機関では難色を示すケースが多いようです。

違反建築物件と既存不適格物件は意味合いが異なるものの、住宅ローンの利用が難しくなるのは同じです。こういった物件は、購入前に事前に理解を示して融資が受けられるか確認することが重要です。

 

要注意!「競売物件」購入

競売

競売物件は、多くの方がご存知のように、裁判所により差し押さえられた不動産の売却です。何となく分かってはいるけれど、どこか「他人事」のような気がして詳細については把握していないという方が多いのではないでしょうか。

差し押さえられた物件

何らかの理由により住宅ローンを途中で支払うことが難しくなってしまうケースもあります。この時、住宅ローンの支払いを滞納して、そのまま放置して一定の期間が過ぎると、債権者から競売の申立てがされ、最終的に競売が開始されます。

競売物件となってしまうと、一般的な相場価格よりもかなり安めで価格が評価されます。そのため、購入側にしてみれば、相場よりも安く購入できるのが利点であると考えられます。ただし、一般的な購入方法ではないので、「安い」ということよりも「大変」なことの方が多く、注意すべきこともあります

競売物件の難点

一般的な中古住宅購入の場合、購入候補にあがった物件は不動産会社の人に同行してもらい内部を確認できます。実際に内見することで「買いたい!」と購入意欲が沸くことも多いはずです。

しかし、競売物件の購入では内部を見ることはできません。そのかわり、裁判所の執行官の調査に基づく、「写真」や「間取り図」「調査報告書」は見ることが可能です。

写真と言っても現状の家屋内を撮影しているため、人が住んでいる場合には、荷物が散乱していたり、掃除がされていなかったりと雑然としていることも多いです。

また、写真も住居内すべてを細かく撮影している訳ではありませんので、少ない写真でしか内部の確認ができません。

そして、不動産会社が仲介に入ってくれる訳ではありませんから、落札後に問題が生じるリスクを頭に入れておかなければなりません。

競売物件の住宅ローン

競売の場合、落札してから代金を納付する必要があります。一括で入金できる現金を持っている場合はいいでしょうが、住宅ローンの利用をしたい場合には注意が必要です。ほとんどの金融機関では競売物件の融資は難しいのが現状です。

購入後にトラブルや後悔がありがちな競売物件は、知識がないまま購入を考えるのはかなりのリスクを伴います。

 

事故物件

事故物件

一般的に「立地が悪い」「築年数が古い」という中古物件は敬遠されがちですが、その他に「事故物件」というものもあります。

訳あり物件

あまり考えたくないことですが、家の中で自殺、他殺、孤独死(誰にも気づかれずに長い期間放置されていた)などの背景があるものを「事故物件」と呼びます。「聞かなければ分からない」ものの、聞いてしまうと気になるという方が多いでしょう。

ただし、一般的によくあるように「家族と一緒に住んでいて家の中で病死した」という場合などは、これに含まれません。

事故物件のように訳ありの不動産は、イメージ的なこともあり多くの方が敬遠するでしょう。こうした事実は売買契約の時に重要事項として伝えるべきとされています。

この事実を隠して取引が行われると損害賠償にまで発展しかねないので、不動産会社はこうした事実を告知します。相場に比べて格安だと思った時には、こうした事故物件である可能性が大きいです。

心理的瑕疵とは

このように目に見えない問題が隠されている不動産を「心理的瑕疵物件(しんりてきかしぶっけん)」と言います。

心理的ダメージがあるため、かなり安値で取引されますが「全く気にならない」という方にとっては、かなりお得物件となります。その事故の内容にもよりますが、通常の相場の半額程度までも価格が下げられていて、激安価格となっていることさえあります。

そのため、物件情報を収集している際に、極端に安い物件があると「何かあるのでは?」と思ってしまうことでしょう。多くの場合、物件情報に「告知事項あり」「心理的瑕疵あり」と記載されています。

  • 告知事項あり
  • 心理的瑕疵あり

周辺施設の告知

心理的瑕疵は建物そのものだけに留まらず、周辺までも対象となることもあります。その物件の近くに、暴力団事務所、宗教施設、火葬場、刑務所、産廃処理場などがあっても「心理的瑕疵がある物件」として、告知する義務が不動産会社にはあります。

  • 暴力団事務所
  • 宗教施設
  • 火葬場
  • 刑務所
  • 産廃処理場

仮に知らずに購入を検討したとしても、現地周辺を調べていくと状況が分かるでしょう。

実地調査も大事

建物の敷地内、および近隣で重大な事件が起こった場合などは、「目に見えないこと」は、確認しなければ分かりにくいことなので、不動産会社に確認するだけでなく、近隣の方々に聞いてみるのもいいでしょう。

住宅ローンへの影響

このような心理的瑕疵への評価は個人の考え方によって異なります。気にならないのであれば、安く購入できるので、お買い得です。しかし、住宅ローンを利用したいのであれば注意したいところです。内容によっては借り入れ金額に響いたり、審査が通過しなかったりということさえあります。

まとめ

新築物件よりも安くてお得感がある中古物件ですが、調査をしていくと思わぬ落とし穴があるケースも多いです。

登記、建築基準法、違反建築、事故物件など聞き慣れないキーワードが出てくることも多いので、知識を持ちつつ検討していくようにしましょう。

また、建物そのものだけでなく、周辺環境や目に見に見えない部分にまで目を向けて、不動産業者任せにせずに自ら調査していくことも大切です。