遺言書

『相続』について詳しく考えたこと、ありますか?

人が亡くなると、必ずなにかが残されます。残された家族は、亡くなった方が残してくれた物を引き継ぐことになります。

それぞれの思い出に応じた物を引き継ぎ、形見として大切にしていく…というのが相続の理想ですが、残念ながら下記のようなことが起こり現実はもっと厳しい状況となります。

遺産相続の現実

  • 残された物の分配方法を巡って争いが起こる
  • 残された家族が負(借金)の財産に困惑する

「自分が死んだ後、子ども達が遺産を巡っても揉めるでは…」と、自分の死後に不安を感じている方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、相続で揉めたり損をしないように、相続で気を付けるべきことについてまとめました。相続についての法知識、相続に関する書類の書き方とテンプレート、遺言書を書くときに気を付けるべきことについてご紹介します。

 

行政書士が直伝

当記事は現役の行政書士の方に書いて頂きました。すぐに使えるテンプレート(ダウンロード可)もありますのでご活用ください。

相続についての法知識

法知識

まずは、相続についての基本的な法律のお話しから入っていきましょう。

相続については民法第5編(第882条から第1044条まで)に定められており、こと細かくルールが決まっています。

相続とは

相続とは、『人が亡くなったときに、その人が所有していた財産や借金などの権利義務を誰かが受け継ぐこと』をいいます。

『亡くなった人』のことを被相続人、『権利義務を受け継ぐ人』のことを相続人または受遺者といいます。

誰が『権利義務を受け継ぐ人』になるの?

誰が『相続人』になるのかは民法第886条から第895条に定められており、これを『法定相続人』といいます。基本的には、この法定相続人が相続をすることになります。

しかし、「家族とは不仲だから、法定相続人には相続させたくない」「お世話になった他の人に財産を残したい」という場合もありますよね。

このような場合は、遺言で法定相続人以外の人に財産を残すこともできます。遺言によって財産を残され、『権利義務を受け継ぐ人』になった人のことを『受遺者(じゅいしゃ)』といいます。

法定相続人と受遺者について、順番にご説明します。

法定相続人について

家系図

法定相続人になるのは、次の4人です。※内縁関係の人や事実婚の人は、現行の民法上、法定相続人になれません。

法定相続人になる対象者
常に相続人 配偶者(亡くなった人の夫や妻)
第1順位 直系卑属(亡くなった人の子や孫など)
第2順位 直系尊属(亡くなった人の父母や祖父母など)
第3順位 亡くなった人の兄弟姉妹

配偶者は、どんな場合でも必ず法定相続人になります。しかし、それ以外の3人には順位があるので、注意が必要です。

第2順位の直系尊属は第1位の直系卑属がいない場合にのみ、第3順位の兄弟姉妹は第1順位と第2順位がいない場合にのみ、法定相続人になれます。

また、子や孫・父母や祖父母が両方いる場合には、亡くなった人に年が近い方が法定相続人となります。

分かりやすくサザエさんで例えると…

たとえば、有名なサザエさん一家で考えてみましょう。

波平さんが亡くなった場合、法定相続人は、舟さん(配偶者)とサザエさん・カツオくん・ワカメちゃん(直系卑属)の4人です。マスオさんは波平さんの娘婿であって、直系卑属ではないため、法定相続人にはなれません。

またタラちゃんは波平さんの孫ですが、子であるサザエさんが生きているので、法定相続人にはなれません。タラちゃんは、波平さんが亡くなった時にサザエさんがすでに死亡している場合にのみ、法定相続人になります。さらに波平さんには兄がいますが、第1順位であるサザエさん達がいるので、兄も法定相続人にはなれません。

サザエさんが亡くなった場合、法定相続人はマスオさん(配偶者)とタラちゃん(直系卑属)です。第1順位であるタラちゃんがいるため、第2順位の波平さん・舟さん(直系尊属)と第3順位のカツオくん・ワカメちゃん(兄弟姉妹)は、法定相続人になれません。

受遺者について

受遺者は、遺言によって誰でもなることができます。

たとえばサザエさん一家なら、波平さんがノリスケおじさんに財産を残すと遺言すれば、ノリスケおじさんが受遺者になります。

誰がどのくらい相続するの?

3つ

続いて、法定相続人と受遺者の中で、誰がどのくらい相続するのかについてご説明します。
それぞれの相続分は、次の3つのルールで決まります。

相続分を決める3つのルール
第1ルール 被相続人が残した遺言に従って決める
第2ルール 民法の定め(法定相続分)や話し合いによって決める
第3ルール 遺留分を計算する


まずは第1ルールが優先され、遺言がない場合や遺言に従いたくない場合に第2ルール以降が適用されます(最高裁判決、平成7年7月5日)。

つまり出来る限り亡くなった方の意思を尊重して遺産を分配し、その意思がない場合や意思に従えない場合にのみ、法律に則って決めようということです。

1ルールずつ、詳しくみていきましょう。

 

RULE1
第1ルール:被相続人が残した遺言に従って決める

自分が築いた財産を誰にどのくらい残したいのかは、自由に決めることができます。これを、『遺言自由の原則』といいます。たとえば、『○○さんに全財産を残します、法定相続人にはなにも残しません』という遺言も、法的に有効です。

しかし、遺言に従うかどうかは法定相続人と受遺者の自由です。従えば不都合がある場合や従いたくない場合は、全員の同意があれば、遺言に背いて相続分を自由に決めることができます。

 

RULE2
第2ルール:民法の定め(法定相続分)や話し合いによって決める

遺言がない場合や遺言に書いていない財産がある場合、あるいは遺言に従わないと全員で同意した場合は、民法の定めに従って決めるか、話し合いで決めることになります。

まずは民法の定めについてご説明します。

民法に定めてある相続分のことを『法定相続分』といいます(民法第900条)。

法定相続分

配偶者と直系卑属が相続人 配偶者1/2・直系卑属(2人以上のときは全員で)1/2
配偶者と直系尊属が相続人 配偶者2/3・直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人 配偶者3/4・兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

サザエさん一家でたとえると、波平さんが亡くなった場合、舟さんの法定相続分は財産の1/2、サザエさん・カツオくん・ワカメちゃんの法定相続分は3人で1/2、1人あたり1/6ずつになります。

このように、民法は明確な数字で法定相続分を決めてくれているので、公平で分かりやすくとても便利です。しかし、必ずしもこの法定相続分で分けなければいけないわけではありません。

相続分は、相続人間の話し合いで自由に決めることができます。たとえば、舟さんとサザエさん達の全員が同意したなら、舟さんが全財産を相続することも可能です。これから学費のかかるカツオくんとワカメちゃんが多めに相続することもできます。

 

RULE3
第3ルール:遺留分を計算する

さきほど『○○さんに全財産を残します、という遺言も法的に有効』とお話ししましたが、これだとちょっと困ってしまう法定相続人もいるかもしれませんよね。

もしかしたら、遺産をあてにしてローンを組んでいたかもしれません。ちょっとした心のすれ違いがあっただけで、被相続人の介護を献身的にしていたかもしれません。

いくら遺言に書いてある故人の意思とはいえ、残された家族がなにも相続できないのは少しかわいそうです。

そこで民法は、直系卑属と直系尊属に、『遺留分』という『最低限もらうことができる相続分』を権利として与えています(民法第1028条)。※兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分は権利なので、実際に財産をもらうかどうかはそれぞれの判断に委ねられています。しかし、遺言によっても、遺留分を取り上げることはできません。

遺留分
配偶者または直系卑属(子や孫など)のみが相続人 被相続人の財産の1/2
直系尊属(父母や祖父母など)のみが相続人 被相続人の財産の1/3

わかりやすくサザエさんで例えてみると…

今回も、サザエさん一家で考えてみましょう。

波平さんが亡くなり、現金1,200万円を家族に残したとします。同時に、「カツオには一切相続させない!男なら自力で財産を築きなさい」という遺言も残したとしましょう。

この場合、波平さんの愛のムチをうけ、カツオくんは「ぼくがんばるよ!自分で財産を築くよ」と一切相続しないこともできます。しかし、遺留分をもらうこともできます。

今回の法定相続人とそれぞれの法定相続分は、舟さん(1/2)とサザエさん達(1人1/6ずつ)なので、配偶者または直系卑属のみが相続人の場合にあたります。

波平さんの全財産は1,200万円ですから、その1/2の600万円が遺留分です。これにカツオくんの法定相続分1/6をかけた100万円を、カツオくんは遺留分として最低限相続できます。

負の遺産も絶対に相続しなきゃダメ??

相続が始まり、調べてみたら誰も知らなかった借金が見つかることがあります。

住宅ローンのように大きな金額の借金は周囲の人も気づきやすいですが、カードローンやフリーローンなどは家族でも借金の状態を把握していなことがあります。「借金の方が貯金よりも多い」なんてケースも結構多いです。

借金も財産と同様に、相続人が受け継ぐことになります。故人が返さないまま亡くなってしまった以上、相続人には返済すべき法的義務と道義的責任があります。

もちろん借りたお金は返さなくてはいけませんが、借金なんて誰も相続したくないですよね。しかも自分が借りたわけではないお金を返したい人なんていません。

そこで、民法は限定承認(第922条)や相続放棄(第939条)という制度を定めています。

限定承認と相続放棄

限定承認とは、『相続によって得た財産の限度で、被相続人の借金などを支払う制度』です。

たとえば100万円の貯金と300万円の借金を限定相続した場合、100万円の貯金のみを借金の返済として支払えば、借金の残り200万円を返済しなくてもよくなります。

相続放棄とは、貯金も借金も、どちらも相続することなく捨てることができます。つまり、相続のすべてを放棄する制度』です。

限定承認と相続放棄をするには、相続の開始から3ヶ月以内に、裁判所に申述することが必要です。申述は管轄の家庭裁判所に、所定の申述書と被相続人・申述人の戸籍謄本などを提出して行います。費用として収入印紙代(800円)と連絡用の郵便切手代が必要です。

所定の相続放棄の申述書は 裁判所公式サイト 相続の放棄の申述書よりよりダウンロードが可能です。

相続放棄申述書の見本
相続放棄申述書の見本

相続についての法知識のまとめ

少しややこしいお話しでしたが、相続についての法律をご理解いただけたでしょうか?

実は他にも細かな法律がたくさんあるのですが、ここまでお話しした内容を理解していれば、基本的な相続には対応できます。

特に下記3点は、知らずに損をしてしまいやすい部分です。いざというときに備えて、覚えておいてくださいね。

相続の法的知識のポイント

  • 遺言には別に従わなくてもいい
  • 遺留分という権利がある
  • 限定承認や相続放棄もできる

 

のこされた方が作る『遺産分割協議書』

葬儀

遺言や法定相続人・受遺者間の話し合いで相続分が決まったら、『遺産分割協議書』という書類を作ることになります。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、『誰が』『なにを』『どの割合で受け継ぐのか』を明記した、法定相続人・受遺者間の契約書のことです。

必ずしも作らなくてもよいものですが、家の登記名義人の変更や銀行口座の凍結解除などの手続きで提出が必要なので、早めに作っておいたほうが便利です。法定相続分以外の分け方をした場合には、相続税申告の際にも提出を求められます。

あとあとの混乱とトラブルを避けるためにも、作成を強くおすすめします。

遺産分割協議書のポイント

  • 法定相続分通りの分け方をした場合は、法定相続分をもとに自動的に課税されるので、協議書がなくても脱税にはなりません。
  • 銀行口座の凍結解除に遺産分割協議書が必要がどうかは、銀行によって異なります。窓口でご確認ください。

遺産分割協議の作成手順

遺産分割協議書は特に法知識がなくても作ることができる簡単な書類ですが、手順が多く、少し面倒です。1手順ずつご説明するので、これに従って作ってみてください。

遺産分割協議の作成手順一覧
手順1 遺言書を探す
手順2 遺言書を開ける
手順3 法定相続人と受遺者を特定
手順4 相続財産を特定
手順5 相続分を決める
手順6 今後新しい財産が見つかったらどうするのかを決める
手順7 祭祀主宰者を決める
手順8 費用の負担を決める
手順9 遺産分割協議書を作る準備する
手順10 いよいよ遺産分割協議書を書く
手順11 遺産分割協議書を印刷・コピーする
手順12 割印と契印を押す

 

手順1
遺言書を探しましょう

誰にどの財産を残したいのか、故人の意思を知る必要があります。まずは遺言書を探しましょう。

あとあと「ねつ造だ!」などと揉めないために、できれば相続人全員で、遺言書を保管していそうな場所を探してください。金庫や自室の引き出しなどに保管している方が多いですが、意外と冷蔵庫に保管している方もいます。

遺言書が封印してある場合は、まだ開けてはいけません

封印してある遺言書は、家庭裁判所に提出して、法定相続人立ち合いのもとで開封してもらわなくてはいけないのです。封印したまま、手順2に進んでください。

 

手順2
遺言書を開けましょう

遺言書が自筆だった場合は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、『検認』という手続きを請求しましょう。

検認とは、『相続人全員に遺言の存在とその内容を知らせるとともに、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続き』のことです。

この検印がされていない自筆の遺言書は、登記名義人変更手続きや銀行口座凍結解除手続きの際に証拠にならず、効力を発揮できません。

遺言書が封印してある場合は、検印のついでに開封してもらえます。

検印の申し立ては、管轄の家庭裁判所に、所定の申立述書と遺言書・相続人全員と被相続人の戸籍謄本などを提出して行います。費用として収入印紙代(800円)と連絡用の郵便切手代、遺言執行用の収入印紙代が必要です。

必要書類は裁判所公式サイトの遺言書の検認の申立書よりダウンロード可能です。

遺言書の申立書見本
遺言書の申立書見本

 

手順3
法定相続人と受遺者を特定しましょう

民法と遺言書とに従って、法定相続人と受遺者を特定しましょう。そして全員で話し合い、遺産分割協議をする日時と場所を決めます。

遺産分割協議書には、法定相続人と受遺者の氏名・住所・本籍・生年月日を住民票通りに記載する必要があるので、当日に住民票を持ってきて欲しいと伝えておきましょう。

 

手順4
相続財産を特定しましょう

遺産協議の日までに、亡くなった方にどんな財産があるか、借金はあるのかなど、相続するすべての財産を特定しましょう。

【相続財産の例】

  • 預貯金:銀行支店名・口座番号を特定しておく
  • 現金
  • 株式などの有価証券
  • 保険金など
  • 建物や土地(不動産):登記簿謄本を取得しておく
  • 借りている建物や土地:賃貸借契約書を探しておく

※登記簿謄本は法務局で誰でも取得可能です。費用は不動産1件につき1,000円です。

 

手順5
相続分を決めましょう
分ける

遺産分割協議をして、法定相続人と受遺者それぞれがなにをどのくらい相続するのか、財産の分け方を決めましょう。

受遺者は、基本的には遺言に書いている通りの財産を受け継ぐことになります。しかし、遺言に「受遺者には財産の1/4」というようにざっくりとしか書かれていない場合には、どの1/4を受け継ぐのか、法定相続人と話し合わなくてはいけません。

財産の分け方には、次の3つがあります。

財産の分け方

現物分割 財産A・B・Cのうち、Aは母に、Bは長男に、Cは受遺者にというように分配する方法
換価分割 財産を売却して、その売却代金を全員で分けて分配する方法
代償分割 財産のすべてを1人が全部相続するかわりに、他の人に金銭を支払って分配する方法

財産の分け方やそれぞれの取り分は、法定相続人と受遺者の話し合いで自由に決めることができます。

決めるときには、『誰が』『なにを』『どの割合で受け継ぐのか』の3つを明確に決めるようにしてください。たとえば、「預貯金10万円を、兄・姉・弟の3人で均等に」ではなく、「兄は3万3333円、姉は3万3334円、弟は3万3333円」という具合に、具体的に決めましょう。

分配方法が決まらなかった場合

遺産分割協議がまとまらず、分配方法が決まらなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。家庭裁判所に間に入ってもらって話し合うことができるので、ケンカになってしまった場合などにおすすめです。

ただ、調停では法定相続分と遺言を基準にすることになるため、遺産分割協議がまとまらないときは法定相続分で分けるのが無難です。

 

手順6
今後新しい財産が見つかったらどうするのかを決めましょう

遺産分割後に、新たに財産や借金が見つかった場合にどのように分けるのか、あらかじめ決めておきましょう。誰か1人の総取りでもいいですし、その時は改めて協議すると決めてもいいです。

 

手順7
祭祀主宰者を決めましょう

家系図などの系譜を保管し、仏壇・位牌・神棚などの祭具をお祀りし、墓石や墓地などの墳墓を管理維持する祭祀主宰者を決めておきましょう。

最近では薄れつつあるとはいえ、日本では伝統的に、子孫は先祖代々のお墓を守って供養する役目を負っています。大切なことですし負担も大きい役割なので、きちんと話し合って決めておくと、あとあと安心です。

祭祀主宰者は、相続財産には含まれません。つまり、兄弟で1/2ずつ相続する場合に、兄が祭祀主宰者になったからといって相続財産が少なくなったり多くなったりしません。

 

手順8
費用の負担を決めましょう

相続には、遺産分割協議書の作成費用や検印費用など、意外とお金がかかります。相続にかかった費用を誰が負担するのか、負担の割合などを決めておきましょう。

 

手順9
遺産分割協議書を作る準備をしましょう
万年筆

次のものを用意してください。

  • 用紙:大きさや色は自由ですが、A4白紙が多いです。
  • 印刷の場合はパソコン・ワープロ・プリンターなど:インクの色は黒か青が一般的です。
  • 黒か青のボールペン・万年筆など、消えないもの。こすると消えるペンや鉛筆はNGです。
  • 相続人全員の実印
  • 被相続人と相続人全員の住民票や印鑑証明書など(正確な住所を記載するため)

※収入印紙は不要
 

手順10
いよいよ遺産分割協議書を書きましょう

遺産分割協議書を書いていきましょう。ここまで細かく準備してきたので、サラサラ書けると思います。遺産分割協議書に書くべき内容は、次の7項目です。

遺産分割協議書に書くべき項目

  1. 被相続人の氏名・本籍・最後の住所・生年月日・死亡年月日
  2. 遺産分割協議書の内容について、相続人の全員が同意したこと
  3. 相続人・受遺者ごとに相続する財産や借金など
  4. 費用の負担について
  5. 今後新しい財産が見つかったらどうするのか
  6. 祭祀主宰者について
  7. 相続人全員の自筆署名と実印

特に決まった形式や文言はありません。ですます口調でもなんでも、好きなように書いてください。

大切なのは「誰が読んでも同じ意味に読めるように書く」ということです。たとえば相続財産について「3丁目の角のあの土地」ではなく、登記簿通りの正確な住所を記載して、誰が読んでもどの土地なのかがわかるように書いておきましょう。

その他、遺産分割協議書を書く時に注意してほしいことについては、【家族間や友人との借金】行政書士が教える借用書の作り方を参考になさってください。

遺産協議書のテンプレート(ダウンロード用)

また、下記よりダウンロードできる【遺産協議書のテンプレート】もご活用ください。

 

手順11
遺産分割協議書を印刷・コピーしましょう

遺産分割協議書は、法定相続人と受遺者の人数分を作成して、各自1通ずつ所持しましょう。税務署提出用や法務局提出用にも、余分に作成する場合もあります。

 

手順12
割印と契印を押しましょう
契印

遺産分割協議書が2枚以上になった場合は、『契印(けいいん)』というハンコを押さなくてはいけません。契印とは、2枚以上の契約書のつながりが真正であることを証明するために押すハンコのことです。

遺産分割協議書を開いて、1枚目と2枚目の両方にまたがるように、そのつなぎ目に押印します。

また、すべての遺産分割協議書が同一のものであることを証明するために、『割印(わりいん)』も押しましょう。すべての遺産分割協議書をずらして重ねて置き、全部に少しずつまたがるように押印します。

どちらも押すハンコは、遺産分割協議書に押した実印です。


以上12手順で遺産分割協議書は完成です。これがあれば、あとあと揉めたりラブルになる心配が減り、ゆっくりと故人を思い出しながら冥福を祈ることができます。

 

残る家族が揉めないために書く『遺言書』

遺言書

これまで残された側に立って相続のお話しをしてきましたが、最後に残していく側に立ったお話しをしておきましょう。

自分の死後、子どもや兄弟が相続をめぐって揉めたら…と考えたことがある方も、結構いらっしゃると思います。

私は家族が争うほどの財産は残せませんが、それでも「私が急に死んだら、このへそくりは誰かに気付いてもらえるのかな…」と、家族が相続財産に気付かないのではないのかという不安があります。

死後のトラブルを防ぎたい方や相続財産を家族に知らせたい方は、『遺言書』を書いておきましょう。

遺言書とは

遺言書とは、『自分の死後にどのようにしてほしいかの指示を残せる最後の手紙』です。遺言書には相続に関すること以外でも、なんでも自由に書くことができます。
 
たとえば、お葬式についての希望やペットについてお願いしたいことなどを書いてもOKです。
 
遺言書に相続人や相続分を指定して明記しておけば、相続人同士のトラブルを防ぎ、自分の財産を最後まで自由に扱うことができます。

遺言書の書き方

遺言書は法律上3種類ありますが、今回は最も簡単で、あなたひとりで書ける『自筆証書遺言書(じひつしょうしょゆいごんしょ)』についてご説明します。

遺言書を書く手順一覧
手順1 遺言書に書きたいことを決める
手順2 遺言書を書く準備
手順3 遺言書を書く
手順4 日付を書く
手順5 署名と押印
手順6 最終チェック
手順7 封筒に入れて封印

 

手順1
遺言書に書きたいことを決めましょう

まずはどんなことを遺言書に書きたいのか、内容を決めましょう。次の7項目を順番に考えていけば、だいたいあなたの希望を網羅した遺言書が書けると思います。

  1. 自分の財産や借金はどのくらいあるのか(一覧に書きだすとわかりやすいです)
  2. 自分の相続人は誰なのかを考える
  3. 受遺者はどうするか
  4. 誰になにを残したいか
  5. お葬式や戒名について希望はあるか
  6. 祭祀主宰者は誰になって欲しいか
  7. その他、お供え物やペットのことなどで希望はあるか
  8. 遺言執行人は誰にするか:遺言を実行してくれる人を選んでおくと便利です

 

手順2
遺言書を書く準備をしましょう
遺言書の準備

次のものを用意してください。

遺言書を書くとき必要なもの
用紙 大きさや色は自由ですが、A4白紙が多いです。
筆記具 黒か青のボールペン・万年筆など、消えないもの。こすると消えるペンや鉛筆はダメです。
自己の財産の詳細 口座番号や登記簿謄本などを用意する

※収入印紙は不要


 

手順3
遺言書を書きましょう

手順1で決めた内容を、遺言書に自筆で書いていきましょう。遺言書に決まった文言はありませんが、遺産分割協議書と同様に「誰が読んでも同じ意味に読めるように書く」ことが大切です。

たとえば「○○にあの車を使わせる」ではなく、「○○に、ナンバープレート□□のトヨタのヴィッツを相続させる」というように、誰が読んでもどの車を誰にどうしたいのかがわかるように書いておきましょう。「あの車」ではどの車かわからないですし、「使わせる」では所有権を譲りたいのか貸してあげたいのか不明確です。

 

手順4
日付を書きましょう

自筆証書遺言書は、書いた日付が書かれていないと無効になってしまいます。忘れないように、日付を書きましょう。

「平成○年○月吉日」ではなく、「平成○年○月○日」「西暦○○年○月○日」というように、正確な日付を書きましょう。

 

手順5
署名と押印をしましょう

自筆証書遺言書は、署名と押印がないと無効になってしまいます。必ず署名と押印をしましょう。押すハンコはなんでもいいですが、できれば実印にしてください。

遺言書のテンプレート(ダウンロード用)

下記のリンクより【遺言書のテンプレート】がダウンロードできます。ご活用ください。

 

手順6
最終チェック

自筆証書遺言書は、次の3点が守られていないと無効になってしまいます。次の3点を最後にもう一度確認しておきましょう。

  • 全部自筆で書きましたか?
  • 正確な日付を書きましたか?
  • 署名と押印はしてありますか?

 

手順7
封筒に入れて封印をする
封筒

遺言書の保管の形式に決まりはありませんが、封筒に入れてのりづけし、封印をしておくのが一般的です。

封筒には、表に『遺言書』、裏に『署名と押印』をしておくことが多いです。

 

まとめ

相続は、故人の残してくれた物を残された者が受け継ぐことです。ただ、財産価値の高い物が残された場合は、相続人間でも取り分をめぐるトラブルになることもよくあります。また、なにもわからないまま相続したら、実は法定相続分よりずいぶん少ない取り分となっていて、損をしてしまうことも多いです。

相続の基本的な法知識を身に着けておけば、トラブルになっても法律に則った公平な対応ができますし、うっかり損をすることもなくなります。

遺産の分配が決まったら、遺産分割協議書を作っておきましょう。各種手続きがスムーズになりますし、あとあとのトラブルを防ぐことができます。

自分の死後に「家族が相続で揉めるのでは…」と心配な方は、遺言書を書いておけば安心です。