住宅ローンの審査では仕事状況や家族構成などをチェックする「人物審査」、購入物件が担保としてどのくらい相応しいかという「物件審査」があります。これらを総合的に判断されるので「収入があれば大丈夫」とは言えません。そのため、住宅ローンの利用を考えているならば、事前に知っておくべきポイントはたくさんあります。
ここでは、「人物審査」で見られる住宅ローン審査に関わる勤続年数や雇用形態など仕事面で不利となるケースについて、状況別にお話していきます。

目次
正社員?公務員は有利?返済能力が見られる審査
住宅ローンは、これから毎月のように長期間返済していくものなので、本人の支払い能力がどうかという審査が行われます。基本的に「安定性」という部分に重点が置かれますので、正社員や公務員は有利となっている傾向にあります。
大企業や官公庁勤めは審査が通りやすい?

正社員という形であっても、勤務する会社の規模によっては状況がかなり違います。給料面でも、今後の将来性についても規模が大きな会社に正規雇用で「正社員」として雇用されているケースは審査が通りやすい傾向にあります。
また、官公庁が勤務先という方も「安定性」という面では審査に通過しやすいイメージがありますよね。公務員は、昔から住宅ローン審査に通過しやすいと言われています。
ただ、注意したいのが雇用形態です。
官公庁や大企業に勤めている=正社員とは一概に言えません。そのため、提出された関係書類をもとに雇用形態を厳しくチェックされます。
雇用形態のチェック
正社員や公務員など、毎月のように決まった収入を得ることができ、かつ、勤務先も安定しているケースは住宅ローンの審査も通りやすくなります。確かに、住宅ローンという借金の特性上、返済は長期に亘るため、「安定性」は非常に重要な部分と考えられるでしょう。
一般的に住宅ローンの審査では収入や雇用形態の確認をする場合には、前年度の源泉徴収票、健康保険証で確認されます。
源泉徴収票での確認項目

源泉徴収票では、税込年収、勤務先、社会保険、扶養人数、転職などのチェックが行われます。
源泉徴収票のチェックポイント
- 税込年収
- 勤務先
- 社会保険料
- 扶養人数
- 転職
基本的に正社員として勤務している人は、社会保険の金額が表示されています。社会保険料の欄が空欄であれば、正社員ではなく非正規雇用であると判断されます。
また、偽造されやすい書類なの本物かどうかも厳しくチェックされます。
健康保険証での確認項目
保険種別 | |
---|---|
国民健康保険 | 自営業や農業に従事する方が加入 |
組合健保 | 大企業独自の組合で構成 |
協会けんぽ | 中小企業が加入 |
共済保険 | 公務員、学校職員が加入 |
健康保険は、自営業や農業に従事する人が加入する「国民健康保険」、大企業独自の組合で構成される「組合健保」、中小企業が加入する「協会けんぽ」、公務員、学校職員が加入する「共済保険」の4種に分類されます。国民健康保険以外の検証は勤務先から手配されることになります。
勤務先支給の保険証のチェックポイント
勤務先から渡される保険証では、氏名、性別、生年月日の確認はもちろんのこと、資格取得年月日と勤務先名称などを確認されます。
特に資格取得年月日から確認できる勤続年数と住宅ローン申込書の勤続年数が一致しているかどうかを確認されます。
勤務先だけで審査されない
官公庁あるいは学校に勤務しているだけでは「公務員として」審査されません。審査では保険証でチェックされるので正規雇用の「共済保険」でなく「協会けんぽ」であれば、非正規雇用であることは明白です。
給料の支給形態の確認

雇用形態には正社員だけでなく、派遣社員、臨時社員、パート、アルバイトなどあらゆる形があり、それによって給与形態も異なります。
以下の通り給与形態はいろいろありますが、住宅ローンの審査では十分な返済能力があるかを確認するものなので、どちらかというと正社員=月給が有利であることはお分かりになると思います。では時給ではどうなのかは「正社員以外の方の住宅ローン」のセクションで説明します。
「月給制」は毎月決まった額の給料
給料の支給形態は、一般的な多くの企業では「月給制」という形がとられることがほとんどです。一か月の給料の額が決まっています。正社員の場合、有給休暇があれば休暇があっても毎月の収入に変化はありません。残業をした場合には、それに加算されて収入となります。
「日給月給」は出勤した分が給与となる
基本的に月の基本となる額は決まっています。ただ、月給制と違うのが欠勤や遅刻の際には、その分がマイナスとなることです。
働いた分だけ支給される「日給制」「時間給」
パートやアルバイトなど、働いた時間の分だけ支給される形態です。
成績によって給料が左右される「歩合給」
業務成績によって給料のアップダウンがあるのが歩合給の人です。営業系のお仕事の方に多い給与形態です。
歩合給の仕事
歩合給の給与は、主に保険会社や不動産会社の営業社員、訪問販売の営業などに多く見られます。頑張れば頑張っただけ給料に反映する仕事ですが、成績が落ち込んでしまうと給料が少なくなってしまいます。
住宅ローンでは月給制が理想とされていますが、歩合給の場合は不利なのでしょうか?
固定給部分が少ない
歩合給の給料の場合、一般的には「固定給+歩合給」という給与体系で、業績が不十分であったとしても最低保証が支給されるケースが多いでしょう。
しかし、そもそも固定給の部分は安く設定されていることがほとんどです。つまり、営業成績をあげなければ、毎月の生活に支障が出ることもあります。
業績が良く、毎月のように歩合部分が多い場合にはいいでしょうが、中には成績が思うように上がらず固定給部分の収入しかないこともあり、毎月の収入の安定性は低いと判断されるかもしれません。
過去の収入
住宅ローンの審査では、過去にさかのぼって「平均的にはどのくらいの収入になるか」というチェックが行われます。一般的には過去数年分の源泉徴収票で年収の推移、給料明細書において過去数か月分の推移を確認されます。
金融機関が審査の理想とするのは、毎月安定している月給制ではありますが、数年分の給料で安定している傾向にある場合には、歩合給であっても審査に通過することもあります。
仮に、最近営業成績が不振で給料が最低ラインしかもらっていない…という場合には、営業成績を理由にこの先同じ職場で勤務できないケースについても考えられます。
このように歩合給の給料の場合、ケースバイケースですので「歩合給=住宅ローンが難しい」とは一概に言えません。
正社員以外の方の住宅ローン
現在では非正規雇用問題は社会的な問題です。珍しい働き方ではありませんし、正社員の方と同様にかなり多くの非正規雇用の方が職場で活躍しています。
しかし、返済が長期になる住宅ローンでは、「将来返済できるか」という面で金融機関からは厳しい判断をされるのが非正規雇用で働いている方たちです。
では、契約社員や派遣社員という形で雇用されている人は、初めから住宅ローンが難しいのでしょうか。
契約社員・派遣社員ってどう違う?
雇用契約先 | 勤務年数 | |
---|---|---|
契約社員 | 勤務先 | 契約更新で長期勤務も可能 |
派遣社員 | 派遣会社(勤務先とは違う) | 3年以下の契約期間の職種があり、長期勤務が難しい |
契約社員や派遣社員という働き方は、近年では耳にすることが多くなっています。
これら二つの違いで大きいのは、勤務先の会社と直接雇用契約を結んでいるかいないかということです。契約社員は「勤務先と直接雇用契約」を結びますが、派遣社員は「派遣会社との雇用契約」です。
派遣社員として働く場合、勤務先と派遣会社との契約が満了するとそこで勤務は終了となってしまいます。
契約社員の場合は契約更新されていけば、同じ会社に長期間勤めることが可能です。一方、派遣社員の場合は、契約満了により職場が変わってしまうため、住宅ローンでも少し厳しい判断をされます。
背景によって一概には言えない
一括りに非正規雇用と言っても、自己資金が十分にあり、誰もが知るような大企業に勤めている場合には、審査も通る可能性があります。また、勤続年数もプラスポイントになります。せめて3年以上は同じ会社に勤務していることが理想です。
本人の勤続年数、自己資金の準備など、総合的な審査となるので金融機関ごとの判断になります。非正規雇用の場合には、出来るだけ多くの自己資金の準備をしておくのが可能性を高めるポイントです。
また、住宅ローン以外の借金も審査で不利になることがあります。住宅ローンを利用する可能性が近い未来にある場合は、ローンを組んでいろいろと購入するのは避けた方が無難でしょう。
非正規雇用の住宅ローンのポイント
- 勤続3年以上
- 頭金は多めに用意
- 他のローン(借金)は控える
勤続年数が短い場合は

安定した収入がキーポイントである住宅ローンですが、勤続年数も審査の際にチェックされます。
社会人として働いている「職歴が長い」ということではなく、「同じ会社に何年勤めている」という点が確認されます。金融機関によっては審査基準が異なりますが、「1~3年以上の勤続」と定められていることが多いようです。
最近では「転職」は珍しいことではありません。新卒以外でも中途採用で会社に入社することも多く見受けられます。
では、住宅ローンでは転職の何が問題視されるのでしょうか。
「どうして転職したのか?」という理由
転職と一言で言いますが、その「理由」については十人十色。
- 人間関係で居づらくなった
- 会社の倒産によって仕方なく
- リストラの対象になった
- 仕事内容が自分に合っていなかった
このように仕方がない状況で転職するという方もいるかもしれません。
逆に次のような前向きな転職もあるでしょう。
- 収入アップのため
- 資格を取りキャリアを活かすため
- 同じ業界への転職で経験を活かすことができる
- 転職先からのオファーによる(ヘッドハンティング)
このように、転職と言っても収入面に繋がるステップアップ的な転職であれば、勤続年数が短い場合でも考慮されることが多いです。
資格がある人は検討される可能性も

前述しましたが、転職先からヘッドハンティングのように誘いを受けることもあります。特に、同じ業界から誘いを受けた場合には、同条件あるいはそれ以上の収入が約束されていることもあるものです。そのため、住宅ローンの審査でもそれほどハンデになることはないでしょう。
特に国家資格を持つ人の転職は、転職の際には転職活動にも困ることがなく、比較的早めに新しい就職ができますし、即戦力として活躍できるチャンスが広がります。
医師、公認会計士、弁護士、電気工事士、保育士、薬剤師など、資格がなければ勤まらない仕事も多くありますので、「実力がある人」の転職と見なされ、たとえ勤続年数が短くても住宅ローンの審査でも十分に検討されます。
転職を繰り返した場合
何度も転職を繰り返すパターンで、勤続年数が短い場合だと金融機関から難色を示されることがあるでしょう。特に、異業種への転職が多いならなおさらです。
基本的には、新卒あるいは中途採用問わず、給料は本人の経験を考慮された額となるものです。仮に異業種に転職した場合には、一年生からのスタートですし、給料的にも低く設定されることが多いでしょう。
一般的には、同じ会社に長く勤めているうちに「昇給」で賃金がアップするものですし、会社での役職もあがっていくもの。仮に「前職で給料が良く、地位が高かった」と言っても、職場が違えばそれが評価されないこともあります。
そのため、転職により、勤続年数が短い場合には住宅ローンの審査で厳しく見られてしまうことがあるのです。ただし、転職先の規模が大きい場合には検討される可能性もあります。
転職と短期間の勤続年数は不利ではありますが、状況によってはOKなこともあり、総合的な判断となるケースが一般的です。
マイホーム購入では転職は計画的に
このように、転職により勤続年数が短いケースだと「融資がNG」または「希望の融資額が得られなかった」等のことが多くあります。
住宅ローンの審査で「勤続年数」がネックになります。転職をして1年にも満たない場合では、住宅ローンを申し込みしても、審査に通らないことがほとんどでしょう。「マイホーム」への夢も閉ざされてしまうかもしれません。
まとめ
住宅ローンの審査は、仕事や収入に関して審査される項目が多くあります。金融機関の立場に立ってみると、お金を確実に返してもらわなければならないので、十分な収入と安定性は審査基準の大きなポイントです。
また、転職後に勤続年数が短い場合には住宅審査が通らない大きな要因となります。家族のライフプランを長期的に考え、転職は慎重に計画的に行いましょう。近い将来にマイホーム購入計画がある場合は、収入面だけでなく雇用形態や勤続年数も審査の項目にあることを忘れないようにしましょう。
住宅ローン審査でチェックされる職業のチェックポイント
- 安定した収入
- 雇用形態
- 勤続年数